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2018年09月22日 10時04分 JST | 更新 2018年09月22日 10時04分 JST

「めくる異文化交流」日本で暮らすアフリカ人青年の葛藤をコミカルに描いた漫画が話題に

この作品を生み出したのが、流暢な関西弁を操る星野ルネさんだ。

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日本育ちのアフリカ人青年の体験をコミカルに描いた漫画『アフリカ少年が日本で育った結果』が今、Twitter上で話題を呼んでいる。

 この作品を生み出したのが、ある時は身長180cmの体をスーツに包んでビジネス街を闊歩し、またある時は謎のアフリカンカラーのTシャツ姿で漫画を執筆。さらには、流暢な関西弁まで操ってしまう星野ルネさんだ。カメルーン生まれで、4歳の時に母親が日本人と再婚したことを機に来日。兵庫県姫路市で暮らし始めた。

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 「日本に来たばっかりの頃はフランス語と部族の言葉をちょっとだけしか喋れなかった。でも、同じ白いキャンパスに同じクレヨンを持てば言葉は一切いらないんで、みんなとコミュニケーションが取れた。初めて日本の人たちと触れ合えた瞬間。だから絵を描くことが好きになった」。

 今年3月、作品をツイッター上に投稿したところ、「日本とカメルーンの文化が出会うことで起こる化学反応が面白い」「作者の洞察力と関西人要素がいい感じに効いてて無茶苦茶笑える」「自分が持ってる先入観に何度も気づかされた」と瞬く間に話題となり、フォロワー数は5か月で4万人を突破した。投稿にも工夫が光る。「だいたい朝方、5時から7時に投稿している」。Twitterへのアクセスが増える通勤・通学の時間帯を狙って毎朝投稿することで読者の習慣化を狙う。また、スクロールしなくても読めるよう、話は1ページ完結だ。

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 投稿から3か月後には出版の話も舞い込み、先月には単行本化された。編集を担当した毎日新聞出版株式会社の久保田章子さんは、「兄弟が外国人と結婚していて、甥っ子、姪っ子がハーフ。ルネさんの体験ってすごく参考になると思ったし、同じような境遇の子たちにも読んで貰いたいなと」と話す。無名の作家としては異例の注文数、紀伊国屋書店では棚の一番目立つところに置かれる破格の扱いだ。さらに、アマゾンの社会学カテゴリーではなんとランキング1位を獲得した。

■「葛藤とか悩み、違和感を楽しみながら分かってもらえる」

 今も1日1本のペースで作品を投稿しているが、ネタ切れの心配は当分ないという。「タレント活動もしているので、仕事用に面白い話をまとめてあった。それが数百本分溜まっている。なかなかテレビ出る機会もなかったので、それを漫画で発信していこうかなと思って。書いたことに対してリアクションがあるので、リアクションを経て、これも言いたいというふうに毎日思いつく」。

 「日本人が持つステレオタイプなアフリカ人像」をギャグを交えて伝えることで多くの人々を惹きつけていることについて、「日本って他の国と比べて、ハゲてるとか色が黒いとか、見た目をいじるギャグが多い気がする。僕は冗談だとわかるが、海外から来たアフリカ人は受け入れられないと思う。そういう感覚を知っていて欲しいし、それを伝えていくのが自分のできること」と話す。

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 「身体能力神話」と題したエピソードでは、運動会の短距離走で"黒人は足が速いから勝って当たり前"という無言の期待を寄せられ、3着という結果に驚く周囲の様子を描いた。「子どもの頃から黒人って勝って当たり前と思われている。実際、幼稚園から小学校3年くらいまでは1番だったし、いつの間にか自分もその神話を信じていた。でも、小学4年生くらいの時に3着になってしまった。周りは"え?ルネが負けた?"みたいになって。漫画には描いてないが、いろんな感情が込み上げてきて大号泣した」。

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 また、親しくなって間もない友人と車に乗った際に、遠くにある標識を読むよう言われたエピソードも描いた。視力は右が0.8、左が0.6のルネさんが読めないことを伝えると、友人は「アフリカの人って視力10.0くらいあるんじゃないの?」と驚いた様子を見せる。

 「僕は日本育ちだから日本の文化の事をよく知ってるし、悪意がないってことも分かるから、どういじられても優しく返せる。けど、ずっとアフリカや他の国で育った黒人がこういう質問をされると、差別されてるとか、嫌味で言われていると感じると思う。日本には僕以外にもアフリカ少年が沢山いると思う。ヨーロッパ少年も南米少年もおるやろし、アジア少年もおるやろし、北欧少年も。みんなアイデンティティ問題で悩んでいると思うので、僕の漫画がちょっとヒントになるかもしれない。日本人にも、僕らが抱えている葛藤や悩み、違和感を楽しみながら分かってもらえる。お互いがこれを読むとお互い半歩ずつ近付けて、日本社会のこれからの未来の役に立てるんじゃないか」。

■「半分ずつ、お互いがちょっとずつ譲っていくような社会になれば」

 社会学者で大正大学准教授の田中俊之氏によると、「ステレオタイプは誰もが持っている。社会のパターンを習得していく中で備わる。ステレオタイプに優劣の考えが加わると『偏見』が生まれ『差別』につながる可能性がある」とのことだ。

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 ルネさんと仲の良いタレントのパックンは「アメリカ人はみんな陽気だと思われているが、実際に陽気(笑)。でもそれだけじゃなくて、銃の問題など、いろいろな面で理解を深めれば、"外国人って怖くないんだ。案外人間同士として付き合えるものなんだな"となるはず。アフリカ人に対するハードルはアメリカ人よりも高いから、ルネさんは本当に大事な存在だと思う」と話す。また、タレントの宮澤エマは「自分が持っている常識みたいなものを覆された時に、自分が否定されたと考えるのではなく、"そういう人もいる。そういう考え方もある"と受け止められたらいい」と語っていた。

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 50人に1人は、在留外国人になっている日本。ルネさんは「外国人の方が増えてきて、急速に国際化しようみたいな動きがあるけど、それはちょっと違うと思っている。日本人には外国人に対して大目に見て欲しいと思うし、逆に日本に来る外国人には日本の文化を学んでから来て欲しいと思っている。半分ずつ、お互いがちょっとずつ譲っていくような社会になればいいんじゃないか」と語った。(AbemaTV/『AbemaPrime』より)

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