経団連の中西宏明会長は10月9日、就職活動の時期を決める「就活ルール」を廃止すると正式に発表した。
今の大学2年生である2021春入社以降の学生の就職・採用から、60年以上続いてきた「ルール」がなくなることになる。就活のルールはこれまで、どのような変遷を辿ってきたのか。その歴史を振り返る。
就活ルールとは
就活ルールは、経団連が企業の採用活動に関して定めるルール。
会社説明会や面接の解禁日や、内定を通知できる時期を示しているが、あくまでも企業が自主的に守るルールで、守らなくても罰則はない。経団連が「採用選考に関する指針」として公表し、加盟する約1600の企業に対して遵守するよう求めている。
就職活動の開始が早まることで、学生の学業に集中できなくなるのを防ぐことなどを目的としている。
ルール化の始まりは「就職協定」
就職活動に関するルール化の始まりは、1953年に制定された「就職協定」と言われている。就職活動が学業に支障が出るのを防ぐため、国や企業、学校などが協議し、学生推薦(内定)開始時期を「卒業年次の10月1日以降」と申し合わせたという。
ところが、優秀な学生に協定日よりも前に内定を出す「青田買い」が横行し、協定破りする企業が続出。協定は形骸化していき、1997年に廃止された。
就活ルール、変遷に次ぐ変遷
経団連は同じ1997年、就職協定に代わるガイドラインとして、「倫理憲章」を定めた。具体的な日程として、「正式な内定は卒業年次の10月1日以降」と明記したが、その後改定が繰り返された。
アエラによると、「就活ルール」は次のように変遷を辿った。
倫理憲章に「卒業年度になる4月1日以前の選考は行わない」と盛り込まれ、2005年春卒業予定の学生から、広報活動開始は「3年生時の10月」、選考解禁日が「4年生時の4月1日」となった。
その後、2013年春卒業予定の学生から、広報活動の開始が「3年時の12月1日」に後ろ倒しにされた。
倫理憲章は2013年、現在の採用選考指針に改定。2016年春卒予定者から、広報活動の開始は「3年生時の3月1日」、選考の解禁日が「4年生時の8月」にそれぞれ後ろ倒しにされた。
一方、2017年春〜2020年春卒業予定の学生については、選考開始が「4年生時の6月1日」に前倒しになった。
今回の「就活ルール」の廃止決定により、2021年春卒業予定の学生から指針は策定されず、60年以上続いた就職・採用活動の「目安」がいったんなくなることになる。