「前澤さん、調子に乗りすぎ?」世間の疑問に、ZOZO田端信太郎さんが出した答えとは

「調子に乗りすぎなんじゃないの?って、社員も半分くらいは思ってるんですよ」
田端信太郎さん(左)、前澤友作さん
田端信太郎さん(左)、前澤友作さん
HuffPost Japan

民間人初の「月周回旅行者」になることを発表し、世間から注目を集める前澤友作さん。彼が率いる「ZOZOTOWN」運営会社は10月1日、「スタートトゥデイ」から「ZOZO」に社名変更した。

同日、日経新聞に「拝啓、前澤社長」という書き出しで始まる広告が掲載された。約1000人の社員による前澤氏へのメッセージで、社長のチェックなしで掲載されたという。

ZOZO提供

「調子に乗りすぎなんじゃないの?って、社員も半分くらいは思ってるんですよ」。ZOZOのコミュニケーションデザイン室 室長を務める田端信太郎さんはそう話す。

田端さんは、上級執行役員としてLINEの広告事業を6年にわたり牽引してきたが、今年3月にZOZOに転職。Twitterのフォロワー数は17万人を超え、7月には自身のビジネス論について説いた自著『ブランド人になれ! 会社の奴隷解放宣言』を上梓した。

話題に事欠かない前澤さんを、田端さんはどう見ているのか?

採寸専用のボディスーツ「ZOZOSUIT」と田端信太郎さん
採寸専用のボディスーツ「ZOZOSUIT」と田端信太郎さん
Yuriko Izutani / HuffPost Japan

ーーなぜ「社名変更」の広告を、「社員から前澤社長へのメッセージ」にしたのでしょうか?

ここ最近、前澤の個人的な活動がすごく目立っていますよね。バスキアの絵画を落札したり、月に行くことを発表したり、ストラディヴァリウスをコレクションに追加したり。

その印象が強くなって社長ばかりが目立っているけれど、実際はZOZOという会社があり、そこには約1000人の社員がいて、ビジネスが動いているわけです。

そして、そのビジネスは我々だけで完結しているわけでもない。お客さんがいますし、配達員の方や物流倉庫の「ZOZOBASE」で働いている人の中には派遣社員の方もいる。

社長が目立つことは全然悪いことじゃない。ただ、外から見た時に、その実態が置き去りになっているというか、会社と社長個人が完全に一体化しているように見えてしまっている。いわゆる「ワンマン社長」のように見えていると思うんです。

Yuriko Izutani / HuffPost Japan

それは否定してもしょうがないし、確かにそういう一面はあるかもしれない。

彼の強烈な個性や才能があってこそ、この会社ができているのはまぎれもない事実ですよね。創業者であり、筆頭株主でもあり、今も代表取締役なので、「ワンマン」という表現はある意味では間違ってないと思います。

ただ、だからといって前澤とZOZOという会社がイコールではないんですよ。

世間のイメージとの落差を、どうしたら世の中に伝えられるか。

そう考えたときに、「社員から前澤社長へ」メッセージを伝えるかたちの広告にするのがしっくりきたわけです。内輪ネタにならないように、言葉一つひとつの表現にはすごく気を配りました。

HuffPost Japan

ーー世の中が抱いている前澤さんへのイメージと現実のギャップを埋める、という感覚に近いですか?

ギャップを埋めるためでもあるし、世の中が前澤に対して「調子に乗りすぎなんじゃないの?」とか、「本人のポケットマネーだから別に好きに使えばいいんだけど、お金使いすぎなんじゃないの?」みたいなね。みんなきっとそう思ってるじゃないですか。

Yuriko Izutani / HuffPost Japan

それと同じ思いを、社員も半分くらいは持っているんですよ。怒っているというか、呆れている一面も少しありますし...。(笑)

それに対して、いい意味でツッコミを入れるというか。宇宙旅行の訓練期間がどれくらいか、とか、「そもそも大丈夫なの?」みたいなね。複雑ないろんな思いがあるんですよ。

行くこと自体は悪いとは言わない。けれど、「どうなの?大丈夫なの?」という。

あとは、世の中の経営者とか企業広報の「一般的なあり方」で言うと、必要以上に悪目立ちすると、ビジネスの大事な場面に直面した時に「本業に力を入れろ」と叩かれる可能性がある。その意味でも、「ほどほどにした方がいいんじゃないですか」と本人に伝える時ももちろんあるんです。

このようなことも社内では会話していて、それを言える人は、前澤のまわりにちゃんといるんですよ。

まずは「身内」の立場からツッコむことで、それを世の中の皆さんにわかってもらいたい、という思いもありました。

ツッコめる人をまわりに置いておける部分も含めて、前澤の魅力でもあると思います。それを伝えることも、この広告の裏のメッセージでもありました。

前澤は広告を見て「もっとやれ」ってツイートしていましたけど。前澤からしたら、「みんなもっとやっていいのに何でやらないんだ」と思っているみたいです。(笑)

ーーZOZOSUITなど、ZOZOの新しい取り組みは華々しく聞こえますが、7月から受注を開始した「ビジネススーツ」と「ドレスシャツ」については、出荷の延期や商品に対する不満の声なども上がっています。

会社として、ZOZOはまだまだ課題だらけですよ。

ビジネススーツの出荷の延期や不満の声には、本当に、誠実に向き合わないといけません。現実問題として、不満の声が上がってしまっているので。

7月から、プライベートブランドZOZOで「ビジネススーツ」と「ドレスシャツ」のセットの受注を開始した。ZOZOSUITで採寸したサイズに合わせて、完全オーダーメイドで生産する。中央が前澤氏。
7月から、プライベートブランドZOZOで「ビジネススーツ」と「ドレスシャツ」のセットの受注を開始した。ZOZOSUITで採寸したサイズに合わせて、完全オーダーメイドで生産する。中央が前澤氏。
Aya Ikuta / HuffPost Japan

ジャーナリストの本田雅一さん(※編集部注:Engadget日本版に「ZOZOSUITの計測データでZOZOの2Bスーツをオーダーしたらとんでもないものが届いた件」を掲載)には、実際に我々のスタッフがお伺いしました。

服を生産して売る会社として、満足いただけなかった時にどうするのか。

お直しにはもちろん対応しますし、一つひとつのケースに向き合って対応していきます。完璧なものが届けられていない。それを現実問題として認めた上で、どうやって誠実に向き合うか、ということだと思います。

ーービジネススーツで解決しなくてはいけない問題とは、何なのでしょうか?

ビジネススーツの場合は、大きく2つの問題が出ていますね。

まずは、ZOZOSUITでサイズを測る時に、着方や照明の当たり方でその人の実寸とズレが生じてしまい、測定誤差が出てしまう場合がある。

そもそもの採寸データに誤りがあると、いくら正確に作ろうがやっぱりズレてしまう。これが現実問題として起こってしまっています。

あとは、過去のデータの蓄積が溜まっていないことも問題の一つです。ビジネススーツは完全オーダーメイドで、ZOZOSUITの採寸データを元にしてパターンも自動生成しています。サンプル数が多ければ多いほど、採寸時点で誤差が生じたとしても自動で補正できるものが、今はどうしてもサンプルとなるデータが少ない状態です。

ZOZOSUIT配布直後は、採寸エラーが出るケースが多かった。その時に何度かアプリのアップデートをしたんですが、エラー率を下げていく方向でアプリのチューニングをしたんですね。

デニムやTシャツだと問題ない範囲の測定誤差だとしても、ビジネススーツとなると、もっと厳密にデータを測らなくちゃいけないという部分もあります。

ーー計測アプリの方でも問題が生じているんですね。

でも、これは5年、10年先も続けていく事業なので。言い訳するつもりはまったくないんですが、満足いただけるものにできるよう、改善を繰り返していくしかない。

iPhoneも、誕生したばかりは「電話帳が引っ越せない」とか、いろいろな不具合や批判もありました。長い目で見て取り組ませていただくしかない、と思っています。

いまZOZOの商品を買ってくださる方には、すごく期待していただいていると思うんですよ。

期待値が高いからこそ、いち早く反応してくださる。語弊があるかもしれませんが、「ファン」の方だと思っています。

ファンの方だからこそ、「がっかりした」と落胆されてしまうかもしれないんですが、ネガティブな反応ととらえず、改善していくために真摯に向き合うしかないと思っています。

Yuriko Izutani / HuffPost Japan

ーー田端さんはTwitterでご自身のブランド価値を高めながら、リクルートやライブドア、LINEなど数多くの企業でキャリアを重ねてきました。田端さんから見て、前澤さんの魅力とは?

無邪気というか、天真爛漫というか、本当にピュアですよね。悪ガキがいろんな幸運と才能に恵まれてこうなっちゃった、みたいな人です。

僕は前澤と同い年で、今年43歳になります。もうそろそろ人生半分終わるおっさんなんだから、ちょっと落ち着くことを考えたらどうか、と僕でさえ思うんですけど...。(笑)前澤は生き方からして、そういう思想は持ってないですよね。

損得で動くのではなくて、世の中を驚かせたい、アッと言わせたいという「愉快犯」的な要素がありますよね。

彼にとって、会社の事業を通じて人を驚かせることと、絵画を購入したり月にアーティストを連れて行くプロジェクトを発表したりしてみんなを驚かせることは、そんなに差がないんですよ。いい意味で公私混同していますよね。

HuffPost Japan

僕は基本、小乗仏教のような思考をしているというか...。サバイブできる人がサバイブする、という考え方です。

強い言葉で言うなら「弱肉強食」の世界観。「世の中全員みんながハッピー」というのは、現実問題として難しい、と思っているわけです。

例えば、皆さんが僕の炎上を見て「けしからん」と怒ったとしても、世の中の現実としてそうじゃないか。そもそも自然界はそうじゃないですか、という思いが僕にはあるわけです。

前澤の考え方は全然違って、全員がハッピーな世の中を作るべきだと本当に思っている。ブッダが生きとし生けるもの全て救済する、と言っているようなものですよね。そこは器が大きいというか...。

よく、「前澤さんの言っている世界観と田端さんの世界観は違うんじゃないか」と言われます。違うと言えば違うけど、45度から90度くらいしか違わないんですよ。そもそも見ているものが違う、という話なんです。

「現実」を言っている僕に対して、彼は常に「理想」を言っている。その前澤の思いに「間違っている」と言う気は全くないし、一つの考え方としてそれは全然ありだと思います。

むしろ、理想としては、前澤の考えの方がいいに決まっている。それが「あるべき姿」というか、もしできるんだったらそれは素晴らしいことだよね、と思います。僕も全く同意します、みたいな心境ですよ。

ーー田端さんがLINEからZOZOに転職された時は、ネット上でも大きな話題になりました。いま、ZOZOでは具体的にどんなお仕事をされていますか?

メディア発表会の総合監修に入って、話題にするための仕掛けを考えたりもしますし、Twitterを使ったブランディングのアドバイスをしたり。いろいろしていますよ。

それこそ、はじめ前澤は「リツイート」と「引用リツイート」の違いもわかっていない状態でした。入社前から意見を求められることが何回かあったぐらいです。

ーー前澤さんは、8月に「年末までにフォロワー100万人にします」と宣言していました。これが田端さんのKPIの一つでもあるのかな、と思ったんですが...。

そうですね。いま前澤のフォロワー数は44万人なので、このままのペースだとわからないですけど...。

入社をしてすぐ、オフィシャルな人事目標というか、自分のKPIみたいなものがないと何に向かって仕事していいかよくわからないと言ったら、「俺のフォロワー100万人かな」って笑っていましたね。(笑)

Yuriko Izutani / HuffPost Japan

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