「何かを突き詰め、職人になれる可能性を見せたい」車いすラグビー池透暢が、100円ノートにメモを取り続ける理由とは

世界選手権の優勝やアメリカリーグへの挑戦を報告しました。
世界選手権の金メダルを掲げる池透暢選手
世界選手権の金メダルを掲げる池透暢選手
Rio Hamada / Huffpost Japan

車いすラグビーの日本代表・池透暢(のぶゆき)選手が10月24日、東京都内で報道陣向けに、世界選手権の優勝報告や自身のアメリカリーグ挑戦への抱負を語った。

その中で、書き溜めているというラグビーノートの存在を明かした。

池透暢さん
池透暢さん
Rio Hamada / Huffpost Japan

池選手は大学生だった19歳の時、乗っていた車が交通事故にあった。左足を切断し、左腕の先が動かなくなった。同乗していた3人の友人を亡くした。

当初は車いすバスケをしていたが、2012年にラグビーに転向。競技を始めたばかりの時は、ミーティングで分からない単語ばかりだったという。

「(自分より競技歴の長い先輩たちに)早く追いついて、追い越したかった。足りないところは、聞き逃しは少しもしたくない。10を聞いたら、それを15、20できる方法はないかと考えていました」

そんな思いから、必死にノートを取り続けた。100円ショップで買ったという小さなメモノートは、端っこが折れて、汚れも目立っているという。

「自分が通ってきた道がちゃんと見返せるよう、競技を初めて6年間、ラグビーノートはいつも持ってます」

そんな努力が認められてか、2014年からは日本代表のキャプテンを務めている。

「新しく入った選手がいたら、自分がやってきたからこそ後輩に伝えられる。後輩に正しいことを正しく伝えたくて、(ノートを)書いています」

進行役から「ノートをみなさんに見せてもらえるのか」と促された池選手は、「見せないです」ときっぱりと断り、会場には笑いがこぼれた。

車いすラグビー日本代表はここ数年、着実に成果をあげている。2016年のリオデジャネイロパラリンピックでは銅メダル、2018年8月の世界選手権で念願の金メダルに輝いた。

宿敵オーストラリアとの決勝では、1点リードで残り数秒、同点を狙う縦パスに池選手が捨て身のディフェンスで防ぎ切った。

世界選手権決勝を振り返る池選手(左)
世界選手権決勝を振り返る池選手(左)
Rio Hamada / Huffpost Japan

日本勢初の金メダルの瞬間を、次のように振り返る。

「今までオーストラリアやアメリカに対しても、ラスト10秒でゴールを決められて延長戦に持ち込まれるなど、悔しい思いを何度もしてきました。やっと世界一が届きそうな今だからこそ、記憶にないぐらい飛びつきにいったような感情でした」

池選手は38歳で、アメリカリーグに移籍する。新たな挑戦について「障害があっても、何かを突き詰めて、職人のようなことができるんだという可能性や、見ている人がすごいなと思わせたいです」と抱負を語る。

2020年東京パラリンピックでは、世界から追われる立場となり、メダルの期待も寄せられている。

「プレッシャーになるけど最大のチャンス。金メダルをとった自信と責任、全てを背負って達成するのが真のチャンピオンだと思います」

取材に応じる池透暢選手
取材に応じる池透暢選手
Rio Hamada / Huffpost Japan

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