戦場カメラマン「渡部陽一さん、戦場取材の掟」はフェイク。本人が否定

安田純平さんの帰国ニュースで、「掟」の文言が話題に上がっていました
戦場カメラマンの渡部陽一さん
戦場カメラマンの渡部陽一さん
時事通信社

2015年に消息不明になり、シリアで武装勢力に拘束されていたフリージャーナリストの安田純平さん(44)が10月25日、日本に帰国した。

安田さんの安否についてニュースが駆け巡ったことで、戦場カメラマンの渡部陽一さん(46)が語ったとされる「戦場取材の掟」がTwitterなどで話題を呼んだ。

これが書かれたツイートは10月25日20時現在、2万3000回以上リツイートされている。

特に、その掟で注目されていたのは「捕まるやつはその時点でジャーナリスト失格」という項目。

Twitterでは一般ユーザーから「これこそ本物だ」「至言」「やはり超一流のジャーナリスト」といった礼賛の声のほか、この文言をもとに安田さんについて「ジャーナリスト失格だ」というツイートが盛り上がっていた。

「戦場取材の掟」はフェイク

ところが、渡部さん本人は「これはフェイクだ」と明言した。

渡部さんと所属事務所は「捕まったらジャーナリスト失格、という話をしたことはありません。この『戦場取材の掟』というのはフェイクです」と、ハフポストの取材に答えた。

戦場カメラマンの渡部陽一さん
戦場カメラマンの渡部陽一さん
時事通信社

渡部さんの信念は「戦場取材は生きて帰ること」。

過去には、ラジオ出演した際に、日本人ジャーナリストの後藤健二さんが2015年に武装勢力に拘束されて殺害されたとみられる映像が流れたことを受け、「自己責任論」について問われた。

渡部さんは、紛争地域で取材するときは「危機管理が8割を占め、2割がカメラの腕」とし、「どの仕事でも、目標に向かって結果を手にするために手段を選ばない、というわけではない。危機管理を最優先し、引く勇気をもって欲張らない取材をする」と語っていた。

しかし、こうした信念は、今回出回っている「掟」とは異なるものだと、渡部さんは指摘した。

ネット上で出回っていた「戦場取材の掟」とは?

ネット上では、渡部さんが過去に語ったとして「渡部陽一さん、戦場取材の掟」というタイトルで次の8ヶ条が出回っていた。

1:最前線行く時は世界最強の軍隊の自走砲部隊と行動する

2:ゲリラが蔓延る地域には近づかない

3:戦場が流動的なところには行かない

4:国外の難民キャンプとかを中心に取材する

5:護衛がいても危ない所には近づかない

6:国境地域から一歩も紛争国の中には基本的に入らない

7:捕まるやつはその時点でジャーナリスト失格

8:ボディガードはその地域最強の奴を大金で雇う

渡部さんはこの文言について、話したことはないとして「捕まるやつはその時点でジャーナリスト失格、などとは考えていないし、安田さんをジャーナリスト失格などと言っているわけでもありません」と答えている。

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