絶景スポットで自撮りしようとしたカップル、転落死。なくならない「死のセルフィー」

6年間で少なくとも259人が亡くなっている。
夫妻のInstagramアカウントより
夫妻のInstagramアカウントより

インド国籍でアメリカ在住の夫妻が、観光スポットとして知られるカリフォルニア州ヨセミテ国立公園の断崖「タフト・ポイント」で転落死する事故が起きた。夫妻は旅行ブログを運営しており、自撮りを試みようとしていたとみられる。

夫妻はカリフォルニア在住のミナクシ・ムーティさん(30)とヴィシュヌ・ヴィシュワナトさん(29)で、10月25日に遺体で発見された。

ムーティさんはスリルや冒険を求める「アドレナリン・ジャンキー」を自称しており、夫婦で危険なスポットを訪れ自撮りし、その写真をブログやInstagramに公開していた。

夫妻が運営していたInstagramアカウントより。3月には、グランドキャニオンの断崖に座り込む写真を投稿。「一枚の写真に命をかける値打ちなんかありますか?」とコメントしていた。
夫妻が運営していたInstagramアカウントより。3月には、グランドキャニオンの断崖に座り込む写真を投稿。「一枚の写真に命をかける値打ちなんかありますか?」とコメントしていた。
夫妻が運営していたInstagramアカウントより。
夫妻が運営していたInstagramアカウントより。

ヴィシュワナトさんの兄弟ジシュヌさんによると、ヨセミテ国立公園を訪れた別のカップルが絶景ポイントとして有名な「タフト・ポイント」でカメラ用の三脚を発見。

公園管理当局に通報し、当局が捜査したところ、崖から約243メートル下の地点でムーティさんとヴィシュワナトさんの遺体を確認したという。2人の遺体はヘリコプターで運ばれた。

ヨセミテ国立公園の広報担当者によると、2人が死亡した状況の調査は数日かかる見込みという。

ヨセミテ国立公園のタフト・ポイント。見晴らしのいい地点だが、手すりなどは設置されていない。
ヨセミテ国立公園のタフト・ポイント。見晴らしのいい地点だが、手すりなどは設置されていない。
REDA&CO via Getty Images

近年、SNSにアップするために危険な"自撮り"に挑戦し、転落死するなどの事故が多発している。

全インド医科大学などの調査によると、2011年から2017年の約6年間で、世界で少なくとも259人が自撮りをしている最中に溺れたり落ちたりして亡くなったという。調査ではこうした事故を「死のセルフィー」(selfie death)と名付け、対策を講じるよう求めている。

調査によると、死亡者の平均年齢が約23歳と若く、男性が7割を占めている。死因に関しては、「溺死」が70人と最も多かった。

死亡の報告数はインドが最多で、ロシア、アメリカ、パキスタンと続く。

すでに、自撮り死亡事故を防ぐため、自撮り禁止の地域を決めている国や自治体もあるという。インドでは自撮りに関連した死亡事故が相次いだことから、観光庁が4月、事故が起こったエリアに「自撮り禁止ゾーン」の標識を設置して観光者を守るべきだと政府に要請した。

研究者たちは「かっこよくなりたいという願望から、若者や観光客がソーシャルメディアに投稿し、いいね!やコメントといった報酬を得ている。自撮り自体が危険なわけではなく、自撮りに伴った人間の行動が危険なのだ」と警鐘を鳴らしている。

ハフポストUK版の記事を翻訳・編集しました。

注目記事