ゾゾスーツはどうなるの? ZOZO田端信太郎さんが語った、IT企業が直面する「ものづくり」の難しさ。

メーカーって「鈍臭い」と思っていたけど…。

ファッション通販サイト「ZOZOTOWN」が大きな"壁"に直面している。

最先端のテクノロジーを使って、一人ひとりの体のサイズを採寸する「ゾゾスーツ」をもとに作るビジネススーツは、発送の遅れやサイズの不具合などのトラブルが相次いだ。さらにゾゾスーツは「将来的に廃止」されると発表され、消費者のあいだで"がっかり感"が広がった。

プライベートブランド「ZOZO」を立ち上げ、「洋服の通販サイト」から「自分たちで服もつくる企業」へと生まれ変わろうとしているZOZO。どのような課題と向き合っているのか。コミュニケーションデザイン室長の田端信太郎さんは11月5日、ハフポスト日本版のネット番組「ハフトーク」に出演。「"ものづくり"の難しさを痛感している」と心情を語った。

ZOZOのコミュニケーションデザイン室長の田端信太郎さん
ZOZOのコミュニケーションデザイン室長の田端信太郎さん
Jun Tsuboike/HuffPost Japan

ネットの文化と、ものづくりの文化の違いを感じる日々

「人が服に合わせる時代から、服が人に合わせる時代へ」。そんなコンセプトを打ち出しているZOZOのプライベートブランド。背が低いことがコンプレックスだったという前澤社長自身の体験をベースに、S・M・Lという既存のサイズ展開ではない「全く新しいタイプの服」を作ろうとしたという。

手足が短いことで服選びに悩んできた、ある20代の男性会社員は「自分にぴったりとした服が初めて着られる。アイデアに共感した」と話す。

ところが、2018年1月に配り始めた「初代ゾゾスーツ」は、大量生産に失敗。4月には現在の水玉模様の「2代目」を発表し、7月から精度の高い採寸が必要なアイテムとしてビジネススーツの受注を始めたが、サイズが合わない不具合が一部で発覚した。

田端室長は「(プライベートブランドの服づくりに関して)モノを仕入れて何かを作るとなると、かなり短くても数ヵ月の時間軸になります。例えばデニムだって、結構な規模で仕入れるとなると、糸レベルの原料から手配することになり、相当な時間がかかる」と話す。

「ネット企業というのは、ABテストだ何だといって、PDCAを早く回すのが良いサービス作りになるという文化。実物在庫があってサプライチェーンがあるビジネスから見たら、出たとこ勝負で危ういことこの上ない(ネット企業の)ベータ版カルチャーの感覚と、ものづくりの感覚は全然違うと思います」

田端室長自身はこれまで、リクルート、ライブドア、LINEなどとメディア企業を転々としてきたが、いわゆる製造業に携わった経験はない。

「これまでのキャリアの中で、コンビニのプライベートブランドや、自動車メーカーと話をしてきて、メーカーって鈍臭いなと思っていた部分がありました。彼らは、今ぐらい(11月)で来年の春ぐらいのことを話しているじゃないですか。半年以上先となると、どんな世の中になってるかわからないのになぁと思っていたんです。それこそ意識高いビジネスパーソン風に言うと『利益率も低いのに、鈍臭い、頭が固い、時代遅れ』という感じ。でも、今こうして実際にものづくりに携わってみると、それだけ時間がかかってしまう必然性があるんだと痛感しています」

発表会では新商品のビジネススーツを着た男性たちがズラリと並んだ。女性用スーツは今後の展開になるという。
発表会では新商品のビジネススーツを着た男性たちがズラリと並んだ。女性用スーツは今後の展開になるという。

有言実行の「実行」の部分にウェイトを高めたい。

ゾゾスーツは、2019年3月までに600万〜1千万枚が配られる予定だったが、300万枚に縮小することも決めた。田端室長は「日本人の体型データは(十分に)貯まった」と理由を明かす。

ゆくゆくは、ゾゾスーツを着なくても、これまでZOZOが集めた採寸データをもとにしながら、身長、体重、年代、性別などを入力すれば適切なサイズが提案される「新技術」を活用するという。

生産・配送が遅れるビジネススーツについて田端室長は「年内にはお届けできるように鋭意対応しています」と陳謝。消費者が感じる"期待はずれ感"に対しては、「有言実行の『実行』の部分にウェイトを高めていかないと、『あの会社、何やってんの』と言われても仕方ない」と危機感をにじませる。

プライベートブランドは「やめない」。ECに起源を持つZOZOだからこそ作れる服を。

ZOZOは2007年に上場後、10期連続で増収増益を達成し、2017年8月には時価総額が、大手百貨店などを上回る1兆円を突破。「ネット通販には向いていない」とされた洋服の通販を成功させた同社はネットの革命児でもある。支払いを延長できる「ツケ払い」や「送料無料」などの新サービスを次々と発表し、前澤社長が、アメリカの著名起業家のイーロン・マスク氏が展開する月旅行への参画も決めるなど常に話題を呼んできた。

「話題づくり」や「服の売り方」がうまかった企業から、ものづくりも行う「ファッション企業」と変われるのか。

ZOZO幹部の一人として、また、ビジネスパーソンの一人として、ものづくりの難しさを痛感している田端室長だが、「ゾゾがプライベートブランドをやめるということはない」と強調する。

「受注しながらも待たせてしまっているお客さんがいるのに、こんなことを言うのは恐縮ですが、ものづくり企業としてはまだ一年目。今後もネット時代だからこその洋服の作り方を模索していきたい。

前澤も公言している通り、ZOZOがリアル店舗を出すということはまずない。その前提でEC発のサービスという出自を生かして、ネットに起源を持つゾゾだからこその服の作り方を追求するというところは、これからも変わっていかないと思います」。

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