映画「ボヘミアン・ラプソディ」で主演したラミ・マレックらが最も好きなクイーンの曲とは?

メンバーを演じた3人がハフポストなどのインタビューに応じた

イギリスのロックバンド、クイーンの結成から最盛期を再現する映画「ボヘミアン・ラプソディ」(11月9日、全国で公開)で、主人公のフレディ・マーキュリーさんを演じたラミ・マレックさん(37)ら出演者3人が、ハフポストなどの合同インタビューに応じた。

マレックさんはアメリカの俳優で、「ミスター・ロボット」や「ナイトミュージアム」でも好演したことで知られる。

ほかにインタビューに応じたのは、クイーンのギター担当するブライアン・メイさんを演じたグウィリム・リーさん(34)と、ベース担当のジョン・ディーコンさん役をこなしたジョー・マッゼロさん(35)。

インタビューは11月8日、記者会見のあとに東京都内のホテルであった。

記者会見後、会場に手を振るマレックさん(中央)、リーさん(右)、マッゼロさん=11月8日、東京
記者会見後、会場に手を振るマレックさん(中央)、リーさん(右)、マッゼロさん=11月8日、東京
Kazuhiro Sekine

やり取りの全文は以下のとおり(敬称略)。

――「ボヘミアン・ラプソディ」のミュージックビデオがたった4時間でできたという実話に大変驚きました。皆さんが今回、一番驚かれた実話は何ですか。

マッゼロ 一番は「アンダー・プレッシャー」の曲のときの、ジョン・ディーコンのベースラインですね。最初思いついたんですけど、すぐにランチに行ってしまったんですね。そしたらすっかり忘れてしまって。

ほかのメンバーが「ジョン、どんなすごいベースラインだったんだ?」って聞いても、ジョンは思い出せなくて。そしたら、ロジャー・テイラーが「何言ってるんだ、こうじゃないか」って弾いてくれて。「あ、そうだった」って思い出したエピソードがあったようです。

あれだけすごいベーシストでも割と簡単に忘れちゃうんだと思って面白かったです。

マレック 1つに決められないなあ(笑)。フレディ・マーキュリーがお風呂に浸かっているときに思いついて、その場でギターを弾いて作り上げた曲があるんです。それが「Crazy Little Thing Called Love(愛という名の欲望)」です。

実際にそのシーンは撮影されたんですが、映画は2時間15分に収めなければいけないというこで、使われませんでした。それでも私にとっては一番、記憶に残りましたね。

リー 2番目は?

マレック 2番目に印象深いのは、私も真偽のほどはわかりませんけど、いや、100%本当の話ですが(笑)、ダイアナ妃を男の子に変装させてゲイバーに連れ込んだ。

リー 4時間で「ボヘミアン・ラプソディ」のミュージックビデオができたなんて、私は知りませんでした。むしろあなたの方がよくご存知でしょう。

それはおそらく、テレビの音楽番組「トップ・オブ・ザ・ポップス」でできなかったので、じゃあ、自分たちでやろうと急きょ作ったからではないでしょうか。

私にとって驚いたのは、ブライアン・メイが天文物理学のPh.D(博士号)の課程をやっていたのに、途中でクイーンの活動を始めたことですね。2008年にPh.Dを取得しているんですが、そのときの彼の論文が「黄道帯に散らばる塵の視線速度の調査」。1972年から休学していて、今まで一番長いギャップイヤー(休学)ではないでしょうか。

まあ、このエピソードを紹介したのは、宇宙空間に散らばる塵のことを日本語でなんと言うのか知りたかったからなんですけどね(笑)。

――映画ではマイノリティーや多様性の問題、家族とはなにかなど、いくつか重要なテーマが内在されていて、今にも通じるものだと思います。フレディはあの時代に生きて幸せだったと思いますか。

マレック 短く答えます。この場で「彼は幸せだったのか」と議論しても話は尽きないと思うけど、私が思うに、彼は時に孤独を感じ、深い愛を探し求め、疎外感を味わっていたと思います。

自分の名前が変わったり、移民だったり、自分が何者なのかというアイデンティティーに苦しんだことでしょう。

自分の夢を達成しようとして、文化的規範の違いにも悩んだでしょう。イラン系インド人で、しかも家庭はソロアスター教を熱心に信奉し、異性愛しか認められないという状況。同性愛に対するスティグマ(烙印)が強く、孤独で不幸だったと思います。

でも、彼はそうした状況をむしろ原動力にして、自身の野望や欲望の達成に向かっていったと思います。

観衆も小規模から大規模に、そして最終的にはものすごい集客を実現できるようになって、そうした進化の過程で、彼は孤独を感じない方法を見つけたのだと思います。

私は彼は最終的には幸福を見つけたと思う。それは、バンドのほかのメンバーや、元恋人のメアリー・オースティン、ジム・ハットン、あるいは多数のファンとの関係においてそうだったのだと思います。

フレディー・マーキュリー(左、ラミ・マレックさん)と、交際していたメアリー・オースティン(ルーシー・ボイントンさん)=「ボヘミアン・ラプソディ」より
フレディー・マーキュリー(左、ラミ・マレックさん)と、交際していたメアリー・オースティン(ルーシー・ボイントンさん)=「ボヘミアン・ラプソディ」より
© 2018 Twentieth Century Fox

――クイーンの楽曲の中で一番好きな曲とその理由をそれぞれ教えてください。

マッゼロ 日替わりで好きな曲は私たちの間で変わったりするのですが、それでもずっと気に入っているのは、「Somebody To Love(愛にすべてを)」ですね。

「ボヘミアン・ラプソディ」は確かに傑作なんですが、Somebody To Loveは叙事詩的な作品で、より親しみやすく、語りかけてくるような感じの曲です。もちろん、ボヘミアン・ラプソディは洗練されていて美しいのですけどね。

マレック フレディ自身、「ボヘミアン・ラプソディよりもSomebody To Loveの方がずっといい曲だ」と言っていたようです。

私もこの曲が好きですね。というのも、この曲はフレディについていろんなことを教えてくれるからです。

フレディはピアノをほかの誰とも違うスタイルで弾きますし、歌も彼の世代で最も上手ですね。彼はまた、バンドのロゴも自作しました。芸術家です。舞台衣装もデザインしています。

でも、あまり知られていないのですが、彼は何よりも物語の語り部であるし、詩人なんです。私にとっては、そうですね、まるでおとぎ話や小話を語ってくれるような人なんです。そこから感じられるのは「痛み」です。それをよく表しているのがSomebody To Loveです。

歌詞の中で、彼はこう言ってるんですね。「Can anybody find me somebody to love?」と。「誰か愛する人を探してくれないか」と言っているわけです。そんなこと、普通書けませんよ。

リー 私には子どもはいないんですが、子どもがたくさんいる人にどの子どもが好きですかと聞くような難しい質問ですね。

私の好きな曲は「Doing All Right」です。初期の曲で、(クイーンの前身の)「スマイル」のときにレコーディングしたもののあります。でも、フレディが加入後に録音したものは全然違って、フレディの声が特別だと感じました。直接比較できるのが面白いですね。

――クイーンの人間関係について。映画でもジョンが一番年下でからかわれたり、でも彼が会社の危機を救っていたりとか。いろんな人間関係があったと思うのですが、それを、あなたたちも引きずって同じような人間関係でいるのですか。それとも素顔の自分たちはちょっと違うよという感じなのでしょうか。

マッゼロ 私は違うと思っています。だって私たちは(映画のメンバーのように)けんかはしないって誓ってますから(笑)。

私たちは会った初日から仲良くなって、互いのことが好きで、仕事の重要性をわかってますので。支え合い、信頼し合うということもしますしね。ユーモアのセンスも共有していて、理解もしやすかったですし。

まあ、ふざけることはあるんですけど。実際、最も若いのはロジャー・テイラー役のベン・ハーディーで、彼が一番からかわれることがあったかな。

もしバンドとして20年この関係を続けていたら、お互い首を絞めたいと思っていたかもしれないけど、まあ、実際はそうではないので。

マレック 私が最年長、みんな言うことを聞かなきゃいけない(笑)。

リー 映画でクイーンが記者会見するシーンがあったと思うのですが、あそこでフレディは「私はバンドのリーダーじゃなくて、単なるリードボーカルだ」と。まさしくあれと同じで、ラミは謙虚なんです。リーダーは本当にラミです。

フレディを演じているわけですし、私たちにとってもレジェンドです。私たちを引っ張り、リスクを取ってくれました。

フレディー・マーキュリー(右、ラミ・マレックさん)とブライアン・メイ(グウィリム・リーさん)=「ボヘミアン・ラプソディ」より
フレディー・マーキュリー(右、ラミ・マレックさん)とブライアン・メイ(グウィリム・リーさん)=「ボヘミアン・ラプソディ」より
© 2018 Twentieth Century Fox

――音楽ファンとしてこのような映画を見た場合、どうしてもミュージシャンに見えないということがよくあり、不満が残ることがあります。でも、この映画にはそうしたことが一切ありませんでした。皆さん、音楽経験はあったのでしょうか。

リー 私は少しギターを弾きますが、リード・ギターというのはやったことがありません。

だから私にとっての最大の挑戦になったのは、単に素晴らしいギタリストを演じるということだけではなくて、独特のスタイルを持ったブライアン・メイのギターをやらなければいけないといことでした。

その音色は本当に独特で、彼の姿を見なくても、音を聞くだけで彼のギターだっていうのがわかる。それをやらなければならなかったわけです。

代わりの人もいたんですが、途中からは自分で演奏するようにして、最後はすべて自分で弾くようになりました。

マッゼロ ギターは1年ぐらい弾いていましたが、ベースは全くありませんでした。役をいただく3カ月ぐらい前から友人にベースを借りて練習を始めました。本格的には撮影の5週間ぐらい前からですね。

マレック 私は歌手ではありませんし(笑)、ピアノも弾いたことがありません。ダンサーでもありませんしね。だから学校に通って練習しました。

ボヘミアン・ラプソディと「伝説のチャンピオン」は懸命に練習しました。ボヘミアン・ラプソディはピアノを逆さまに弾くシーンがあったので、時々寝る前にベッドの枕の上にキーボードを置いて弾く練習をしたりね。

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