THE NORTH FACEが挑む「リテールラボ」の中身 デジタル能力の高い店舗

「ここは、将来、顧客によりよいサービスを提供できる新店舗をオープンできるように、テストを行って学習するための場だ」
the north face williamsburg
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DIGIDAY

アウトドアブランドのザ・ノース・フェイス(The North Face)は、世界各地に何千という小売店を出している(サードパーティの小売業者やストア、アウトレットを含む)。だが、いまそのなかのひとつが大きな注目を集めている。

2018年11月16日、ブルックリンのウィリアムズバーグにオープンした同ブランドの最新ストアがそれだ。同店は、あらゆる面で「モダン・フィジカル・リテール(現代的な実店舗)」といえる初のストアなのだ。ザ・ノース・フェイスでDTC部門のバイスプレジデントを務めるマーク・パーカー氏によれば、同店は「キュレートされ、パーソナライズされており、高い流動性も持っている。つまり、今月と翌月では、まるで違って見えるストアだ」という。

店内の商品は周辺地域から来る顧客の関心を反映するようにローカライズされている。ザ・ノース・フェイスは今後、ヒートマップ技術を活用し、顧客の滞在時間を判断材料として、どのようなインスタレーションやコレクションがもっともウケているのかをさらに見極めていくつもりだ。

デジタル能力の高い店舗

彼らの目的は必ずしも顧客の回転率を上げることではない。その証拠に、店内の家具やハードウェアはどれも、ストアをイベントスペースに簡単に作り変えられるよう、移動可能になっている。ただし、初の試みとして、レジは設置されない。顧客は店内のどこにいようと、店員のモバイルPOSシステムで精算を済ますことができる。また、インストアと近所のオンラインの顧客に向けて、即日配送サービスも行われている。

「ここは、将来、顧客によりよいサービスを提供できる新店舗をオープンできるように、テストを行って学習するための場だ」と、パーカー氏は語る。「我々はこの店を一種の『リテールラボ』と見なしている。どうすれば顧客の変化に適応できるのかについて考えるときに、この店がきっと役に立ってくれるはずだ」。

ザ・ノース・フェイスはいま、この店舗で新しいタイプの小売をテストしている。同社は実店舗でのショッピング体験を向上させたいと考えているが、その一方で、信頼性に欠ける人目を引くためだけのスクリーンをはじめとする顧客対応技術に頼ることなく、それを実現したいとも考えている。パーカー氏によれば、空間をすっきり見せるため店内にスクリーンを設置していないものの、モバイルPOSや、「バイ・オンライン、ピックアップ・イン・ストア(BOPUIS:オンラインで買って、店で受け取る)」といったオンライン/オフライン・ケイパビリティーのおかげで、同店はすでに高いデジタル能力を誇っているという。

ナイキ、ビルケンシュトックも

ナイキ(Nike)をはじめとするブランドも同様だ。ナイキは11月上旬、「Nike+」アプリを介してテクノロジーと密接に結びついた6階建ての新店舗をマンハッタンにオープンした。「Nike+」アプリは、店舗でのショッピングを高速化すると同時に、Nike+の会員数増加の原動力にもなりえるツールだ。ドイツのサンダルブランド、ビルケンシュトック(Birkenstock)はアメリカ第1号となる単独店を9月にオープン。同店には、ザ・ノース・フェイスと同じようなモバイルPOSが装備されている。これらが示唆することは明白だ。卸売りを主軸とするブランドが直販に目を向けるときには、店舗の改善(またはオープン)が優先順位リストの上位に入るということだ。

「顧客は常にデパートやアウトレットストアで商品を購入する。あるいはオンラインから出発して、スポーツ用品店に辿り着く。我々がここでやろうとしているのは、カスタマージャーニーの全体像をつかむことだ。顧客がザ・ノース・フェイスのどこに触れようと、その体験をブランドのDNAに取り込めるように」と、パーカー氏はいう。ザ・ノース・フェイスは直販とサードパーティ販売を区分けしていないが、直近四半期のDTCの売上は13%増加したと発表している。「この店がめざしているのは、ブランドの試金石として所有・運営される体験に対する我々の見方に沿わせながら、この経験を次のレベルに持っていくことだ」。

Written by Hilary Milnes(原文 / 訳:ガリレオ)

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