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2018年12月19日 09時29分 JST | 更新 2018年12月19日 10時36分 JST

「ラグビーにヒエラルキーはない」組織委の本田祐嗣氏が、『ワールドカップ2019』前に知ってほしいこと

ルールに詳しくない人も楽しめるという、とっておきの観戦方法は?

本田祐嗣氏
Ryo Nagata
本田祐嗣氏

いよいよ2019年に開催が迫ったラグビーワールドカップの日本大会。世界3大スポーツといわれる世界最高峰のイベントが日本にやってきます。

そんな大舞台を裏で支えるのが、組織委員会の本田祐嗣レガシー部長です。

ラグビーは、選手が自分の出身国でなくても、条件を満たせば代表チームでプレイできるという、多様性に配慮した代表資格制度を採用しています。

そのような背景から本田さんは、「ラグビーにはダイバーシティを感じると言われる。ヒエラルキーもない」と語ります。

ワールドカップに向けた組織委の取り組みを伺う中で、本田さんはラグビーのルールに詳しくない人も楽しめるという、とっておきの観戦方法も教えてくれました。

【プロフィール】

Ryo Nagata
本田祐嗣氏

本田 祐嗣:ラグビーワールドカップ2019組織委員会、JRFU連携・レガシー局レガシー部長

橋の設計技術者、その後リスク管理のコンサルタントとして活動していた中、2012年にラグビーワールドカップに関わり始める。開催準備のマスタースケジュールづくりなどに取り組んだ後、2016年秋から大会のレガシープランの構想に加わる。

W杯における運営と普及のバランス

Ryo Nagata
本田祐嗣氏(中央)

前回のラグビーW杯イングランド大会が終わってから、毎年海外の強豪国が日本に来て、日本代表と試合をしています。その時の観客動員数が、2016年6月の対スコットランド戦は3万4000人ほどでしたが、11月にあった対ニュージーランド戦では4万3000人ほどまで伸びていて、日本代表戦過去最高の観客動員数でした。

今回12箇所の会場でW杯は開催されるのですが、これはこれまでの日本ではなかったことです。そもそも他の競技でも、日本各地12か所という会場の数は、なかなか見ない数字かなと思います。

ラグビーでは、毎回W杯は10箇所以上の会場を使用しますが、もっとも経済的なスタジアムの使用数は8箇所ほどだそうです。それにも関わらず多くの場所を使用するのは、なるべく広くラグビーを知ってほしい、触れてほしいという思いからなんです。

前のイングランドW杯でも、会場は13箇所使用しています。この国はラグビーが盛んな地域とそうでない地域がはっきりしているので、盛んではない地域を意識的に会場として選択したそうです。大会運営視点と競技普及視点、この2つのバランスを考えるのがとても難しいところではありますね。

ラグビーにヒエラルキーはない

Ryo Nagata
本田祐嗣氏

ラグビーの日本代表にはさまざまな国籍の選手がいますが、これは世界基準としてOKだと定められています。

今も、イングランドでは元々トンガとかサモア出身の代表選手がいますし、ニュージーランドでもオーストラリアでも同様です。これらの国は移民してきて、結果としてそうなっているという背景もある。

そういうところから、「ラグビーにはダイバーシティを感じる」という声をいただくことがあります。それは昔のクラブの歴史に理由があって、各地域にクラブがあり、そこに来た人で「全員ウェルカム!みんなでラグビーやろう!」という感じでやっていたそうです。

今でもその文化は残っていて、ラグビーファンはラグビーの話ができればそれでOK!仲間!みたいな感じがあります。そこにラグビーが強いとか、弱いとかはまったく関係ない。代表選手でも、一般愛好者でもそこにヒエラルキーは生まれていないんです。

ただ、日本のラグビーの組織として、国際的な部分ではまだまだかなという印象です。日本が国際的なコンペティションに参加しているのは、世界大会だけなんです。その中で一番上のレイヤーが、W杯。

じゃあ、常日頃そういうところに関わっているかというと、そうではありません。ヨーロッパでは、6カ国が集まり、毎年大会をやっていますし、ニュージーランド、オーストラリア、南アフリカ、アルゼンチンの対抗戦が毎年あります。そういうところに日本は組み込まれていないので、強豪国との試合経験も少ないのが現状です。

でも、6月と11月に国際試合をする時期があり、クラブから選手が召集されます。ラグビーW杯2019日本開催の手前の時期なので、マッチメイクをしてもらえる。それで、今たくさんの強豪国が日本に来ています。

しかし、このW杯が終わった後に、そういうコンペティションに日本が含まれないと、現在の試合数を維持できなくなってしまうので、国際化という意味では歴史のある国からどんどん離されてしまいますね。

地域と一緒にW杯を盛り上げる

Ryo Nagata
本田祐嗣氏

私は、会社員を辞めて、個人での活動を経てから知人の紹介で、ラグビーワールドカップ2019組織委員会に入りました。当時はまだ5人しかいない組織でしたが、現在は250人まで大きくなっていて、その過程はとても刺激的なものでした。

現在私は、特定の開催都市の地方自治体の活動に、加勢するような動きをしています。1〜2年前はすべての開催都市の自治体、その地域にあるラグビー協会に、その地域の大会までの5年間と開催後の5年間、何をやっていくか?という項目出しをしてもらいました。

それに区切りがついて、それぞれの地域主体でそれぞれの活動を進めていってもらっているのですが、特に「一緒に活動しましょうよ」となった地域に継続して一緒に活動していますね。今は2箇所、大阪と福岡になります。

各地域、地元のリードで全ての活動をしていただこうとしているので、こちらが加勢する場合は「入れさせてください」というスタンスで話をします。その時に、地元の自治体・協会にパートナーとして、我々を認知してもらうこと、そういうプロセスから入っています。

たまたま大阪と福岡というのは、ラグビー活動が多い地域です。ラグビースクールや、ラグビー部の数が多い。少子化に伴って、減少してはいますが、全国的に見て盛んな地域だと思います。

組織委員会提供
ラグビー

地域を巻き込む際、「この指とまれ」の"この指"を何にするかが大切です。福岡の場合、「アジアラグビー交流フェスタ」を開催しようと動き出し、これを10年間続けようということになりました。このアイデアは、地元の方々の発案によるものです。

なので、我々はそれをサポートしようと、地元のラグビー協会であったり、スクールであったり、指導者の方々に大会へ出場してもらうようにしました。さらに、海外から来る選手やコーチを受け入れるように動くことも支援しました。

イベントに参加する人は、所属している会社の仕事に関係があるから参加してくれる人もいますし、シンプルなファンもいらっしゃいます。そこは区別せずに、フラットに輪を広げていければなと。

それ以外にも、皆さんに自分たちの基本姿勢、やっていく施策というのを一緒に考えてもらいました。まさに、共同作業ですね。「大会が終わった後にも、一緒に活動している姿が残ること」、「ラグビーに関する事業が、行政の事業として残っていること」というのが狙いもありました。

先ほど申し上げたイベントをひとつやれば、前々から「こういう施策やりましょうね!」って言っていたことがいくつも含まれてきますし、やることがはっきりしているので、達成していくために動いていきやすいんです。

スポーツと幸せの関係性を密にしたい

Ryo Nagata
本田祐嗣氏

今年の6月に日本対イタリアの試合が神戸で開催されました。九州から神戸まで行くフェリーがあるのですが、そのフェリーに乗ってイタリア応援ツアーを開催し、イタリアからの留学生を神戸まで連れて行きました。

このような活動を、どうやればさらに良くなるのかなと考えた時、「参加している人の人数が増えて、輪が広がっていくのがいい」そんな考え方をする人もいますし、「イタリアからの留学生がこのような活動ができて、あらゆる繋がりが増えている、このストーリーをもっと世の中に発信することが大事」というような方もいると思います。

どちらにせよ、小さな幸せの積み重ねが「ラグビーW杯や日本に来てよかったな」と思ってもらえることに、繋がると考えて取り組んでいます。

一般的な家庭の人に、「幸せを感じるときってどんな時ですか?」とインタビューした時に、「週末にスポーツ観戦して、声を枯らして応援しているときかな」いう方もいらっしゃると思うんです。そのように、家族の小さな幸せと、スポーツが繋がれれば、とてもいいなと思いますし、それがいろんな人にとって、幸せとスポーツの関係性が密になる機会になったらいいなと思いますね。

今僕たちができることは、大会までの期間のことになるので、その中で少しでも、ストレートに「スタジアム来てください!」ということではない、チャンネルを作れたらいいなと思います。本当に幸せの形は様々だなと感じますので。

これまでの人生にはなかった瞬間が、きっとスタジアムにあると思うので、それを信じてもらえるような働きかけをしていきたい。それこそ、W杯ならではの体験があると思いますので、楽しめるものにしたいと思っています。

ちなみに、ラグビーを観戦するのであれば、ゴールラインと22メートルラインの間の席をオススメしています。ラグビーの醍醐味である迫力あるプレーを間近で感じることができるので、ルールをちゃんと把握していない方にとっても、十分に楽しめる席なんですよ。僕はいつもそこで観ます(笑)。

(取材・文:長田涼、編集:濵田理央)

スポーツ体験がどんどん変わり、多様化しています。運動が得意な人以外も、触れるチャンスが身近に増えています。

これからのスポーツは、だれもがもっと気軽に関わり、アスリートやサポーター、地域の一員として、それぞれの立場や方法で楽しめるようになるかもしれない。そんなスポーツの魅力や可能性を、みなさんと一緒に考えていきます。

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第1弾:「スポーツの"後世に残す価値"は競技場ではない」 FIFAコンサルタントらが語り合う

第2弾:誰かのせいにしてしまいがち。そんな社会を変えたい。Jリーグの米田惠美理事は訴える