新しい家族のかたち「拡張家族」。 働き方の次は、家族観を見直していこう。

「普通の家族」という固定観念からの脱却を。

2018年は本当に沢山の挑戦をさせて頂いた激動の年でしたが、間違いなく私自身の人生の中で今年を最も総括するキーワードは「家族」でした。

今日は12月30日。今この記事を見てくれている皆さんの中には実家への帰路の途中の方もいるかもしれません。きっと一年の中で最も家族について思いを馳せる時だからこそ、皆さんと一緒に「家族」について考えたい。

一方で、もし今この瞬間、「家族」という社会的枠組みや常識に縛られ、辛い思いをしている人がいるとするなら、本来は大切であるはずのものが、そう思えなくなっている人がいるとするなら、このCiftでの生活が、少しでもそれを解き放つ力になれたらいいな。そう思っています。

60人のクリエイターが「ともに暮らし、ともに働く」意識で繋がる拡張家族

Anju Ishiyama
Anju Ishiyama

2017年に立ち上げたCiftには0歳から60代まで、約60人のクリエイターが一緒に家族をしています。立ち上げ当初38人だった家族は一年で約2倍になりました。ミュージシャン、作家、料理人、お坊さん、LGBT活動家、政治家、美容師、画家、VC、弁護士、パーマカルチャーデザイナー、ソーシャルヒッピー、みんなの肩書きの数を足すと合計100を越えます。

家族という形で一緒に生活するという側面と、Ciftは法人組織でもあり、メンバーのスキルをシェアしながら仕事を一緒にとったり、Cift内でも生活の中で仕事が日々生まれています。そしてCiftは共同組合でもある。一人一人が組合費を払い、家族会議の中で組合費を食費や家賃や、誰かが困ったときの救済費まで何に使うかを決めています。

拠点は最初に始まった渋谷キャストだけでなく、今年の夏、新たに一棟借りした11LDKの渋谷松濤ハウスや、鎌倉の稲村ガ崎にも全国で3つの拠点ができました。また複数の拠点を持ち旅をしながら働くメンバーも沢山おり、それぞれが持つ家を合わせるとその数100以上。メンバーが持つ家だったらどこでも泊まって良い、全国拡張家族拠点マップもシェアしています。

Anju Ishiyama
Anju Ishiyama

全国どこに行っても「ただいま」と言える場所がある。何か困ったらあらゆる職種のプロがいるので60人のスキルを借りればほとんどのことが解決する。何より自分が泣きたい時、辛くてどうしようもない時、自分のことのように泣いたり、時間を惜しまず手を差し伸べてくれる、つながりのある生活に確かな安心を感じます。

血の繋がらない家族が家族になっていく。

今年の秋にはコミュニティの中で新しい命が生まれました。生まれる瞬間まで家族のみんなが付き添い、生まれてからは毎日の食事や赤ちゃんのお世話まで、それぞれが思い思いにできることで支え合いながら生活をしています。代わりばんこに抱っこをし、沐浴をし、一緒にごはんを食べる。ベビーベッドもみんなで木材のペンキ塗りから作る。

また子育てだけでなく、あるきっかけでメンバーの親の介護ケアのヘルプが必要になり、できる人が変わりばんこにご飯を作ってタッパーを親御さんのお家まで届けたりする期間もありました。毎日の朝ごはんは、作れる人がつくり、鍵の空いた部屋のドアを勝手に開きながら「朝ごはんだよー!」と起こしたり、起こされたりが日課になっています。

Anju Ishiyama
Anju Ishiyama

子どもたちも、1人っ子の子どもたちが兄弟のようになっていく姿も愛おしいし、0才から60才までいる60人が、年齢や性、あらゆるレイヤーを超えて、自らを閉じずに、開き続け、贈り合い、頼り合い、日に日に強くなっていく絆が、「この先何があっても大丈夫。」と心から安心を感じられるかけがえのない場所になっていく。

渋谷のど真ん中であることからCiftじゃない人たちも日々出入りして朝ごはんを食べに来たり、夕飯をつくりにきてくれるひとがいたり、各地から野菜やお米を贈ってくれたり。

自分は経験していないけれど、昔に日本にあった、長屋の村社会はこんな感じだったのだろうか? と思う。

気づけば、私はずっと「家族」を探してきた。

小さい頃から多くの「つながり」の恩恵を受けて生きてきました。朝起きると知らない人が家に寝ている。世界中を旅してきた父の友人たちの、色んな国籍の人や年齢の人が家で楽器を叩きながらサンバ(ブラジル音楽)をしている。自分の家の周りにはインターホンを押せばご飯を食べさせてくれる家が沢山近所にあった。自分を本当の娘や妹のように、可愛がってくれるご近所さんや、親の友人たちなどのたくさんの繋がりの中で育ってきました。

それは12歳で両親が離婚してからも変わらなかった。寂しくなかった。むしろ、父や母の新しいパートナーが増えて、家族がもっと大きくなってとても幸せだった。でも小学校ではクラスの子から「アンジュの親って離婚してるんだよね?」と、「普通の家族」ではないことで何かから阻害されるような、その時に感じた "違和感" がきっかけで、『家族ってなんだろう?』と考えるようになりました。

Ciftのコンセプトである『意識で繋がる拡張家族』というテーマは、まさに私がずっと探してきた家族のあり方を、実験し体現し、その輪を広げていくことができる挑戦でした。

血の繋がっていない家族を持つことに向き合う生活の中で、愛くるしい感情、自分の弱さを開く勇気、他者を思い、何かしてあげたいと思う気持ちなど、「他者を自分ごとのように受け入れたい」と思う、自己の変容と、心が拡張していく変化を感じ続ける一年でした。

つまるところ、家族とは、血縁関係や社会的な枠組みではなく「感情の拡張」にあるのではないかと。

家族とは、「 問いを分かち合い、自己変容し続けること。」

「家族」というひとつにしてそのカタチに答えがないからこそ、自分を閉じずにひらきつづけて、どこまで他者を自分のことのように受け入れられるか、それぞれが、自分と向き合い自己を拡張していく先に重なりが生まれたとき、新しい家族のあり方があるのかなと。

ちなみに歴史を紐解くと、家族という概念は実は昔から血縁に基づかなかった。宗教が軸にあった時代は家族はアイデンティティに基づき、国民国家が誕生した19世紀はイデオロギーに基づき互いを家族と呼び合っていた。つまり家族とは自分が信じたい対象とそれに共感する他者との結束なのかなと思います。

「普通の家族」という固定観念からの脱却を。働き方の次は、家族観を見直していく必要がある。

家庭とは誰にとっても人生の中で最も重要なものである一方、その「家族」という社会的な固定観念が、時に人を苦しめ、自由を阻む制約になり得る存在であると思います。家族のかたちを一人一人が定義し直すことができれば、もっと社会は豊かになるのではないか。

家族という概念を拡張した先に、より平和な社会が築くことができるのではないか。満員電車で困っている子ども連れの親子を見てみないフリをすることも、"全部自分たちで解決しなきゃいけない"と疲弊してしまう共働き核家族も、孤独で命を経つという選択も、もっとみんなで手を差し伸べあいながら救うことができるのではないか、そう信じています。

↑ 日本では繋がりがないことで孤独死が年間3万人いるという現実。

引き続き、来年もこのCiftの拡張家族という生活が、沢山の気づきを与えられるといいなと思います。

1979年にノーベル平和賞を受賞したマザーテレサは言ったそうです。「今すぐ家に帰って家族を愛してください。その一歩が平和につながる。」と。

皆さんにとって、ぬくもりあるつながりを感じ、愛に溢れる年始休暇となりますように。

<お知らせ>

元日のNHKスペシャルでCiftが紹介されます。数ヶ月密着取材をしていただいていました。元日21:00からです。是非見ていただけたら嬉しいです。

Ciftについて

注目記事