ロリータ趣味の女性は「生産性」が低いのか。モデルの青木美沙子さんが出会い系アプリを使って考えたこと

ロリータは「男性ウケが最強に悪いファッション」と言われるが...

2018年も残りあと2日となった。この1年間、政治家による失言や問題発言が相次いだ。中でも杉田水脈・衆院議員(自民党)が雑誌への寄稿文の中で、同性のカップルを念頭に「生産性がない」と主張したことは、社会で大きな反発を呼んだ。

子どもを持つかどうかで人の価値を決めようとする杉田氏の差別的な見方は、性的少数者だけでなく、子どもがいない人たちも深く傷つけた。ロリータモデルの青木美沙子さん(35)もその一人だ。

青木美沙子さん
青木美沙子さん
HuffPost Japan

ロリータとは近代西洋の女性が着ていたようなフリルやレースが付いた服に似ている日本発のファッションスタイルで、世界でも一部の女性たちに大人気だ。

一方で、ロリータ服は「男性ウケが最強に悪いファッション」(青木さん)とされる。青木さん自身、出会い系アプリで知り合った男性からことごとく「ドン引き」されたという。

結婚できない、子どもができない女性たちは生産性がないのか。釈然としない青木さんに思いを聞いた。

――出会い系アプリを使った感想などを、ウェブメディア「現代ビジネス」に書いていますね。いきさつなどを詳しく聞かせてください。

ロリータファッションって、まあ男性ウケがよくないんですね。AV(アダルトビデオ)の影響なんでしょうか、ロリータって言うと、男性はロリコン(=ロリータ・コンプレックス、幼少女への性愛)を想像してしまうんでしょう。

そうした偏見による差別が多くて、ロリータ好きの女性たちは、恋人からロリータをやめろと言われたり、恋愛ができなかったりなどの悩みを持っています。

私も35歳です。まだ子どもを産めるという、すごく微妙な年齢です。そこで、自分も含め、ロリータを続けながら恋愛や結婚はできるのか、アプリを使って試してみたくなったんです。

アプリを使ったのは、効率よく出会うのに一番都合がいいと思ったからです。これまでも相席居酒屋とか婚活パーティーとかも利用したことがありますが、ファッションが人目につくなどして、かえって出会いにくい。

それに、30代で結婚していない女性が集まったときに話題になることといえば恋愛でしょ。ちょうど友人3、4人に本気でアプリを使っている人がいたのでそれにならってみました。

アプリを登録した当初は、プロフィール欄に堂々とロリータファッションを愛好していることを書いたんです。そしたらまったく反応がない。仕方がないので、ロリータは隠し、もう一つの職業である看護師について書いたところ、かなりの反応がありました(笑)。

十数人の男性と実際に会いました。ロリータ服を来ていったんです。そしたら、皆さん「ドン引き」状態でした。反応としては、「お菓子の国から来たの?」「そんな服、どこで買うの?」「普通の服のほうがいいよ」「それじゃあ、モテないでしょ」「服買いに行く?」「コスプレ?」とか。

はっきり言って全否定です。悔しい思いをしました。ああ、これが現実なんだなって悟りました。根強い偏見というものを改めて見せつけられました。

その意味ではロリータファッションの魅力を発信しようとしている私自身、責任は感じました。知名度が低いのかな、と。普及活動として海外に行くことが多いのですが、外国の方が偏見がないように思いますね。日本はやっぱり、人と違うことしたら色眼鏡で見られるという感じです。

ちなみに、相手の男性たちの服装と言えば、六本木のおしゃれなレストランに行くというのに、Tシャツに短パン、あるいはパーカーとか、ウェストポーチを身に着けているとか、でしたけどね(笑)。

スマートフォンを片手にインタビューに応じる青木さん
スマートフォンを片手にインタビューに応じる青木さん
Kazuhiro Sekine

――恋愛や結婚を考えて、ロリータをやめようとは思わなかったのですか。

思いません。男性に何と言われようとも。私にとってロリータは戦闘服なんです。別の自分に変えてくれます。

私、コンプレックスの塊だったんです。足は太いし、スタイルはよくなかったし。アトピーもあって肌がきれいではなかった。全てにおいて自信がなくて。「キラキラ」した人と地味な自分とをいつも比べていました。

それが高校生の時、初めてロリータを着て自分ががらりと変わりました。原宿でスカウトされて、読者モデルとして着たんですが、体のコンプレックスを隠せたことで自信が持てるようになり、積極的にもなりました。

子どものころ、リカちゃん人形が好きだったんですが、ロリータはリアル着せ替え人形のような感じです。大人になってもお姫様になる願望をかなえてくれる気がして、ときめきもありました。

小さい頃から看護師にあこがれていて、ロリータモデルとどっちを取るか悩んだんですが、どっちもあきらめ切れず。結局、自分は両方で生きて行こうと思いました。

そんないきさつがあって、私がロリータをあきらめるなんてあり得ないんです。男性は世間体を気にするなってつくづく思いました。例えば、「両親に挨拶するのにロリータの格好では許してもらえない」とか言うんですよ。女性は恋愛や結婚のためには趣味すら捨てなきゃいけないんでしょうか。

インタビューに応じる青木さん
インタビューに応じる青木さん
Kazuhiro Sekine

――杉田議員が寄稿文で「生産性」について主張した考えをどう受け止めましたか。

あの主張は何も性的少数者だけに関わるものではないと思いますね。もっと多くの人に関わってくると思います。性的少数者の場合、最近では支援者も増え、理解も広がっています。だからこそ、擁護する意見も目立ちました。

ところが、そうした支援がなく、悩んでいる人もいるんです。私たちのようなロリータの女性がそうです。男性との恋愛や結婚を望んでいるのに、それがかなわない。産めるのに産めないという状況です。

そもそも女性は人生の中で色んなターニングポイントがあります。結婚や出産、子育て。その都度、自分の時間や夢、自己実現の機会が減っていくような気がします。何かを犠牲にしなければならないとなると踏ん切りがつかなんです。ロリータをあきらめるのは怖いです。

仕事もそうです。ずっとやって来たことがこの年になって、ようやく世間から認められて。今やめられない、今やめたら男性に追い抜かれるとか。だから、女性にとって結婚や出産のタイミングは難しい。出産はリミットもありますから、なお難しい。社会は動いてるけど、自分の時間は止まってしまうようで怖いんです。

私にとってロリータは仕事でもあります。今はだいたい週1回は海外へ行っていて、中国ではまさに今、ロリータブームです。やめられません。

確かに出産はしてませんが、私だってちゃんと納税してますし、確定申告もしています。海外に向けて日本の代表的なポップカルチャーであるロリータを発信しています。生産性、高いと思いますよ(笑)。子どもの有無だけを生産性の判断にするのは差別だと思います。

とはいえ、出産や子育ての楽しみもわかります。そうした道を選んだ人も尊敬します。ただ、私が言いたいのは、人それぞれ色んな事情を抱えて、頑張って生きているということを認める社会であってほしいのです。

現代ビジネスのコラムで、子育て中の同級生とランチした時、同級生はお店にベビーカーを預け、私はロリータの仕事で中国に行くためのスーツケースを預けたことを書きました。2つは仲良く並んでいるように置かれていました。そのとき、私の頭には「生産性」の話がよぎり、こう思ったんです。

スーツケースとベビーカー。私と同級生は違う道を進んでいるけども、どちらも尊く、そこに生産性の差別はない、と。

青木さん
青木さん
Kazuhiro Sekine

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