事実婚でも「パートナー」証明へ。千葉市で国内初の取り組み 「生きづらさや困難を抱えるすべての人へ」

同性のみに限ると意図せぬカミングアウトにもつながる。そうした懸念の解消にもなっているという。
画像はイメージ写真です
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takasuu via Getty Images

千葉市は1月7日、事実婚のカップルでも「パートナー」として証明書を発行する制度を設けると発表した。

同性同士だけでなく、異性間のパートナーシップ制度を設けるのは全国初。1月29日に施行する。

千葉市男女共同参画課の担当者は「制度に性別の制限を設ける必要なはい。(現行の制度に対し)性的少数者の方以外にも、生きづらさや困難を抱える人がいる」と話した。

同性婚の証明にも、別姓婚の証明にもなる

千葉市が1月29日に施行するパートナーシップ宣誓制度に使われる宣誓書の申込用紙
千葉市が1月29日に施行するパートナーシップ宣誓制度に使われる宣誓書の申込用紙
千葉市ホームページより

千葉市によると、制度ができるきっかけは、同性同士では現行の制度では結婚できないことによる生きづらさを解消しようと考え始めたことから。

だが、2018年9月に市が意見を募ったところ、あるLGBTの当事者から、異性間で事実婚をしている友人も「公的な証明がない。パートナーシップ制度も使えない」といった相談を受けたという話を聞いた。

市は「困りごとを抱えているのは自分たちだけじゃない。このような人にも対応できないか」と意見をもらったという。

意図せぬカミングアウトの恐れがない

また当事者からの意見で特に重要視したのは、意図せぬカミングアウトにつながらない制度をつくることだった。

パートナーシップ制度を同性同士に限定すると、銀行や公的な機関などで証明書を使った場合、そうした状況につながる恐れがあったという。

課の担当者は「こうした恐れがないよう、検討を重ねた。事実婚の証明でもあるので、パートナーシップ制度=同性婚、と相手に知らせることにはならない。性的少数者であると宣言する必要もない。また、どんな性別でもいいので証明書には性別欄を作っていない」と話す。

パートナーは、互いに成年で、どちらかもしくは両者が千葉市内に住所があること、法的な配偶者がいないことやほかの人とパートナーシップを形成していないことなどが条件になる。

証明があるとどんな違いが?

市のパートナーシップ宣誓制度をつかうことで、事実婚や結婚していないカップルとはどのような違いがあるのだろうか。

市は現在、この証明書で親族が要件である世帯向け市営住宅の入居申請や、市立病院での親族としての面会を認める方向で検討しているという。

どんな手続きが必要?

パートナーシップ宣言証明書をもらうには、以下の手順で手続きが必要。証明書は紙製でA4判。証明カードはキャッシュカードと同じ大きさという。

  1. 事前に電話(043-245-5060)、FAX(043-245-5539)、メールのどれかで連絡する。
  2. 調整した日時・場所に、必要書類を持参し、2人で市役所へ。
  3. 宣誓書と必要書類を市職員が確認。不備等がない場合、宣誓が完了。
  4. 「パートナーシップ宣誓証明書」または「パートナーシップ宣誓証明カード」の交付を希望する場合は、申請をする。
  5. 宣誓証明書・証明カードを受け取る。

宣誓したときに提出した書類の記載事項や確認事項に変更があったとき、パートナーシップを解消したとき、双方が市から転出したとき、一方が死亡したときは届出する必要がある。

また、宣誓の手続きは個室でも可能だ。

施行される1月29日にはパートナーシップ宣誓証明書交付式があり、参加したい場合は1月23日までに申し込む。

「多様性を考えるきっかけになればうれしい」

この制度について、課の担当者は「議論の発端は性的少数者の方が抱える困難をなくしていこうということだったが、性的少数者の方以外にもいろいろな人がいろいろな困難を抱えている。この制度が、多様性を考えるきっかけになればうれしい」と話した。

また制度については「国での考えや議論が深まり、同じような制度ができるまでは、この制度を続けていきたい」という。

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