馬毛島ってどんな島? 防衛省が約160億円で買収して、在日米軍の訓練地へ

20億円が政界に流れたという「馬毛島事件」の舞台。普天間基地の移設候補地に名前が挙がったことも。

防衛省が鹿児島県の馬毛島(まげしま)を買収することになった。島の大半を所有する開発会社から約160億円で買収する契約を結ぶことで大筋合意したと、NHKニュースなどが1月9日に報じた。

馬毛島は現在、在日米軍の空母艦載機訓練の移転候補地となっている。政府は引き渡しを受けたあと、自衛隊とアメリカ軍が共同で使用できる施設を整備する方針だという。

西之表市の「馬毛島活用計画」より
西之表市の「馬毛島活用計画」より
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■20億円が政界に?馬毛島事件とは

馬毛島は、種子島の西方12キロにある約8平方キロの小さな島。種子島に市役所を置く西之表市に所属。最高地点は71メートルと平坦な土地だ。マゲシカと呼ばれる野生のシカが生息している。

西之表市の「馬毛島活用計画」によると、戦前はトビウオ漁の漁師の漁業基地に使われるくらいだったが、戦後は入植が進んだ。最盛期の1959年には113世帯528人が住んでいた。小・中学校もあったという。平和相互銀行の関連会社「馬毛島開発」がレジャー基地にするために、ほぼ全島を買収して、1980年4月に無人島になった。

しかし、レジャー基地計画はオイルショックで挫折。代わって石油備蓄基地や、核燃料廃棄物処理場、防衛庁の超地平線レーダー基地として名前が挙がったが、いずれも実現しなかった。

超地平線レーダー基地をめぐっては、朝日新聞1987年4月28日朝刊によると、元右翼の男性が、「平和相互銀行から20億円の工作資金を受け取り、政界工作として十余人の国会議員に配った」と東京地検特捜部に供述した。国会で問題になるなど、「馬毛島事件」と呼ばれた。

■普天間基地の代替え地の候補になったことも

平和相互銀行が吸収合併で消滅した後、島を所有する馬毛島開発は、1995年に東京の立石建設の子会社となった。島の中心部に巨大な滑走路を建設し、社名も「タストン・エアポート」と改名した。

2000年ごろには日本版スペースシャトル(HOPE)の着陸場、2009〜2010年の鳩山政権では普天間基地の移設候補地として名前が挙がったが、やはり実現しなかった。

その後、米軍厚木基地から岩国基地への空母艦載機部隊の移駐に伴い、小笠原諸島の硫黄島で実施されている空母艦載機の発着訓練の代替地として、2011年の日米の合意文書に馬毛島が明記された

NHKニュースによると、防衛省は、土地の価格を約45億円と鑑定し、タストン・エアポート側が買い取り額として求めた数百億円と大きな開きがあった。しかし、訓練施設の移転を早期に実現する必要があると判断し、鑑定額に100億円以上上積みし、約160億円で買収することで地権者と大筋で合意したという。

参考記事:コトバンク「馬毛島」、朝日新聞1987年4月28日朝刊、2007年02月18日朝刊

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