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2019年01月11日 13時51分 JST | 更新 2019年01月11日 13時51分 JST

『新潮45』騒動で批判がタブー化!? LGBT議論の着地点を当事者、憲法学者らが激論

杉山文野氏「人に生産性があるかどうかを語ること自体がおかしい」

『新潮45』騒動で批判がタブー化!? LGBT議論の着地点を当事者、憲法学者らが激論

 「彼ら彼女らは子供を作らない。つまり『生産性』がないのです」

 波紋に波紋を呼んだ、自民党の杉田水脈衆議院議員によるLGBT差別論文。杉田議員と論文を掲載した『新潮45』を発行する新潮社には激しいバッシングが寄せられた。混乱の最中には、ゲイの弁護士"夫夫(ふうふ)"を描いたドキュメンタリー映画『愛と法』も公開。LGBTの"生産性"とはいったい何を意味するのだろうか。

 『新潮45』の事実上の廃刊によって議論には蓋がされる形となったが、この騒動はいったい何だったのか。『愛と法』に出演した南和行弁護士やトランスジェンダー活動家の杉山文野氏、憲法学が専門の麗澤大学教授の八木秀次氏、ゲイを公表し『新潮45』に論文を寄稿した元参議院議員の松浦大悟氏らが徹底討論した。

■"生産性論争"の着地点は?

 そもそも人の"生産性"とは何を意味するのか。南弁護士は「解釈をあれこれ議論するのは言葉遊びで馬鹿馬鹿しい」として杉田議員に苦言を呈する。

 「問題だと思うのは、杉田さんが確信犯で発言したということ。『新潮45』の2016年11月号で『LGBT支援なんていらない』、2017年3月号でも『多様な家族より普通の家族』と書いていて、その頃から生産性という言葉を使っている。国によって保護される人と保護されない人がいる、大切にする人と大切にされない人が属性によって決まるということを政治家が言うのは、アウトだと思う。生産性云々以前に、杉田さんに議員としての資質がないと思っている」

 杉山氏は「人に生産性があるかどうかを語ること自体がおかしい」としつつ、評価できる面もあるという。

 「生物学的に遺伝子を残すことを生産性と言うのなら、LGBT当事者でも様々な形で子どもを持つ家族は増えているし、現に多く存在している。杉田さんが何を意図していたのかはわからないが、これだけ声があがるほど傷ついた人がたくさんいたのは事実。では、どうすればよりみんなが暮らしやすくなるのか。今回の一件は一概に良いとは言えないが、議論できる土俵に上がってきたのは大きな一歩だと思う」

 一方、LGBTを巡る議論について「メディアに正面から取り上げるべきだと提案したが、いずれも逃げて言論の自由という問題にすりかえた」と指摘する八木氏。杉田議員の論文は「不用意な発言だった」とした上で自身の考えを述べる。

 「杉田さんが『男女の結婚とLGBTのカップルについて行政上の扱いを別にすべき』と言おうとしたのならおかしくはない。それは、そもそも婚姻制度が、男女が子どもを生み育てる制度として構築されているから。この制度は維持する一方で、同性カップルの契約関係は別で構想されていいだろうと思う。同性カップルは自然には子どもが設けられない訳で、それに対して国の予算はないのが実状。男女の婚姻制度と同性カップルの関係は分けて扱うべきだと思う」

 松浦氏は「『新潮45』は6千部しか出ていないので、多くの人は読んでいない。生産性という一部の言葉だけを捉えて炎上してしまった」と指摘。その言葉に怒っていた当事者は多くなかったとした上で、次のように主張した。

 「それよりも論文後半の『同性愛者は不幸な存在』という言葉。杉田議員が誤解したのは、やはり保守の人達が持つLGBTに対する理解に原因があると思う。例えば、NHKをはじめとしてLGBTを未だに福祉番組の枠で放送しているが、私たちは福祉の対象、弱者なのか。私たちは救済ではなく、フェアな社会を望んでいるんだと。LGBTはジェンダーフリー論者で、性別を壊す存在だと思われているようだが、むしろ性別がなければ困る人たちの方が多い。ゲイは男性を、レズビアンは女性を性愛の対象とみなす訳で、トランスジェンダーの方も男性あるいは女性になって社会に溶け込みたいと考えている人がほとんど。だから、性別がなくなると逆に困ってしまう。どちらの性別でもないXジェンダーという方々もいるが、それは個別に対応していくしかないと考えている」

 松浦氏の主張を受けて南弁護士は「NHKを中心に福祉の対象として扱っている、という言い方も誤解を生む。ああいう番組の取り組みというのは、『世の中に大体こういう人が生きている』という幻想的な平均値に対して、本当は色んな人がいるんだというもの。NHKの肩を持つ訳ではないが、国の制度から漏れている人がいる、そういうところを気づくようにしましょうということ」と意見。

 八木氏は「『新潮45』の休刊でこの問題に触るのはタブーになってしまった。LGBTの人たちにも多様な考え方がある中で、アクティビストと言われる人たちの主張だけが取り上げられる。しかし、あとのごく一般な人たちは身構えて、違和感も覚えていると思う。それは健全な関係ではなく、LGBTの当事者が何を望んでいて、社会はどう受け止めるのかの議論を整理すべき」とした。

■LGBTの当事者に必要なのは理解?支援?

 ここまでの議論を受けて、慶応大学特任准教授などを務めるプロデューサーの若新雄純氏は"支援"という言葉に注目。「"LGBTを支援"のように使われがちだが、当事者は『助けてくれ』よりも『分かってくれ』というメッセージの方が大きいのでは。今は支援対象者のような文脈になっている」と疑問を投げかける。

 これに対し杉山氏は「よく『じゃあどうLGBTを支援すればいいのか』という話になる。持って生まれた違いに問題があるのか、違いを受け入れられない社会に課題があるのかを考えると、後者だと思う。僕もセクシュアリティという部分で切り取ればマイノリティかもしれないけど、他の部分で切り取ればマジョリティに属しているものもある。なので、LGBTだけのことをわかってほしいというよりも、本当に多様な人たちがみんなで暮らしやすい社会とは何なのかを提案するひとつの切り口と考えている」と訴えた。

 では、どうすればその理解は進むのか。漫画家の江川達也氏は「保護をすればするほど、マイノリティは逆に弱くなってしまう。そうではなく、LGBTの人たちが普通に強く生きていける社会を作るべきで、政治や予算は関係ない。文化の問題だと思う。僕からすればLGBTはマイノリティではなくマジョリティな印象で、もっと性的にマイナーな人は山ほどいる。その文化の中で、漫画を描いて納得させるといったようなものを育成していくことが一番大事だと思う」との考えを述べる。

 臨床心理士で明星大学准教授の藤井靖氏は「性同一性障害は医学的な診断名だがその他はそうではないように、物事は法律がないと進まない部分もあると思う。例えば、発達障害は法律ができてから教育現場で空気感が生まれたり、価値観的には受け入れられないけれど環境を作っていこう、活躍できるようなフィールドを整えていこうというような流れになった。やはり法整備は必要だと思う」との見方を示した。

 一方、杉山氏は「文化も制度も法律も全部大事」だとして、「性同一性障害は2018年にWHOの精神疾患分類から正式に外れ、グローバルではもう障害ではないという位置付けになっている。日本でも遅かれ早かれ障害という言葉は使わなくなるだろう。ただ、性同一性障害特例法や渋谷区の同性パートナーシップ条例のように行政が制度として取り組みを始めることで、"そういう人たちがいる"という前提になることが大事だと思っている。LGBTは法的に何も触れられていなく、存在がまだ認められていない。そうなると文化も制度も教育も何もスタートできない」と主張。理解を広めるには教育が必要だとし、「LGBTについて知る機会が大人になるまでない。一部のバラエティー番組やお笑い番組で扱われる人と、本当に辛く苦しんでいる人々というように二極化していて、普通に生活している人がなかなか表に出てきにくい。特別な人というイメージがついてしまうが、教室の中にも職員室の中にも当事者の人はいる。そういったことが教育現場で伝えられていかないと、当事者の子が傷つくだけでなく周りの子たちを加害者にしてしまう」と訴えた。

(AbemaTV/『平成最後の年越しカウントダウン~今年のニュースは今年のうちに!生討論SP』より)

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(2019年01月11日 09時00分「Abema TIMES」より転載)