パートナーシップの次へ。出会って25年の女性カップルが、同性婚訴訟に加わった理由

パートナーシップ制度では、平等は実現できないと訴えました。
大江千束さん(右)と小川葉子さん
Jun Tsuboike
大江千束さん(右)と小川葉子さん

「社会の中では、一般の市民と同じ扱いをしてもらえてないという現実を突きつけられた思いです」

東京都中野区に住む女性カップル、大江千束(おおえ ちづか)さんと小川葉子(おがわ ようこ)さんは、区役所に婚姻届を提出した後で、そう口にした。

大江さんと小川さんは、2019年2月に始まる同性婚訴訟の原告カップルだ。訴訟では「同性婚ができないのは、法の下の平等を定める憲法に反する」として、複数の同性カップルが国を訴える

ふたりは、中野区の「パートナーシップ宣誓制度」を使って、パートナーシップを宣誓をした、同性カップルの第1号でもある

「私たちは幸いにも、中野区でパートナーシップ宣誓をして受領書をいただきました。今後の課題は、国はどう動くのかということだと思います。この裁判を通して、国がどのような判断を下すかを見ていきたい」と大江さんは話す。

小川さんも「同性カップルには、結婚という選択肢がありません。結婚するしないを選ぶスタートラインにも立てない。それをずっと不平等だと思っていました。婚姻届を出すことによってどんな変化が訪れるか知りたい」と、力強く語った。

中野区役所に向かう大江さんと小川さん
中野区役所に向かう大江さんと小川さん

■ 窓口で感じた不平等

予想はしていたが、二人が提出した婚姻届は受理されなかった。不受理の理由は、女性同士だから。

「戸籍上おふたりは女性なので受けられないと言われ、まあそういうことなんだよねとしみじみと感じました」と小川さんは振り返る。

待っている間、二人の横では男女のカップルが婚姻届を提出していた。

「男女のカップルが提出した婚姻届は、当たり前のように受理されていました。わかってはいたことですが、まだまだ平等ではないんだなという現実を突きつけられました」と大江さんは話す。

不受理になった婚姻届。夫欄には大江さん、妻欄には小川さんの名前を書いたが、「こんな住み分けはいらないと思いました」と二人は話す。
不受理になった婚姻届。夫欄には大江さん、妻欄には小川さんの名前を書いたが、「こんな住み分けはいらないと思いました」と二人は話す。

■ 自治体から国へ。パートナーシップの次のステップ

パートナーシップ制度は、2015年に東京都渋谷区と世田谷区でスタートし、これまでに中野区を含む10あまりの自治体が導入した。

パートナーシップ制度を利用したことで良い変化があったと大江さんと小川さんは感じている。

「私たちの関係をカミングアウトしてなかった人から祝福の言葉をもらったし、セクシュアリティを伝えていない人からも『ニュース見ました、おめでとう』と言われました」と小川さんは話す。

大江さんが体調を崩して入院した時にも、パートナーシップ宣誓をしていたので小川さんが手術の同意書にサインできたという。

ただ、パートナーシップ制度には法的効力はなく、どれくらいの実効性が保たれるかも未知数だ。利用できるのもその地域に住んでいる人に限定される。そもそも異性カップルができる結婚ができないという点で、同性カップルは不平等な立場に置かれている。

原告の弁護団は「登録パートナーシップは、『黒人と白人が同じ電車に乗れるけれど、車両が違う』というような状態で、制度が違うことこそが、差別」と説明している

1993年に出会ってから、25年以上もの年月を共に過ごしてきた大江さんと小川さん。長年一緒にLGBTの啓発活動や居場所づくりなどに携わってきて、不平等な状態を変えるためには、声を上げなければいけないと実感してきた。今回、国は動かすための大きな一歩を踏み出す。

ふたりはお互いを「信頼と尊重に裏打ちされた同志」「何があっても見捨てない戦友」と呼ぶ。これから始まる訴訟を前に、他の原告や支援者と共に最後まで闘いたいという決意を大江さんは口にした。

「同性婚というのは、人権獲得運動の着地点かなと考えてきました。平等問題を考える時に、結婚が当事者にとっても当事者以外にとっても、一番わかりやすいと思います」

「中野区に住んでいないとパートナーシップ認定をもらえないということではなく、日本のどこに住んでいても、結婚という権利が平等に与えられるものにしたい」