「元カレトースト」が思い出させる、元カレのこと

韓国のSNSで話題だった"元カレトースト"と、"元カレ"の思い出と。
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ハフポスト韓国版エディターのキム・ヒョニュさんが、新婚生活について綴ったブログです。「元カレトースト」で思い出す"元カレ"との日々。長時間労働ですれ違うカップルの様子は、日本の私たちが見ても共感できるのではないでしょうか?翻訳してご紹介します。

去年、「元カレトースト」という言葉がSNS上で話題になった。現代小説のタイトルのようなこの単語にまつわるストーリーは、元カレは忘れたが、元カレが作ってくれたトーストが忘れられなかった女性があるコミュニティサイトに投稿した文章から始まった。

投稿者は、元カレに未練はなかったが、元カレが作った「トースト」には未練がたっぷりあったのだ。元カレに連絡をしてレシピを聞き、そのレシピを共有した。投稿後、「元カレに連絡して聞くとは、いったいどれほど美味しいトーストか」と話題になった。

私の個人的な、「元カレトースト」にまつわるエピソードを紹介したい。10日前、夫は突然会社から休暇をもらった。その休暇はなんと、翌日からだった。

幸い、ハフポストはグローバルデジタルメディアだ。比較的、休暇を存分に使うことができる。数日くらいは夫と休暇を合わせることができた(ワークライフバランスの面では、韓国最高峰だね。現在ビデオエディターを採用中なので、興味のある方はぜひご応募くださいませ)。

それでも、夫は数日間1人で過ごすことになってしまい、彼は慶尚道(キョンサンド)の実家に突然帰ってしまった。

「以前、あなたも1日実家に行くと言って、3日間戻ってこなかったじゃない。あの時、僕がどんなに心細くて寂しかったか感じてみて」というメッセージを残したまま...。

そんなわけで、私は2泊3日の間1人となり、久々に1人で夕食をとることになった。その渦中、ふと家にクリームチーズとジャムがあるのを思い出した。それと、近所にある美味しいパン屋の食パンも。夕食のメニューは「元カレトースト」に決めた。

夫のいない晩ごはん。元カレトーストを食べると、私は過去、一番愛した元カレを思い出した。私の人生にとてつもない影響を及ぼしたが、「完璧な恋愛はない」と教えてくれたあの人。

Close up of blueberry jam on bread
Christine Schneider via Getty Images
Close up of blueberry jam on bread

元カレトーストはだいたいこんなビジュアルで、私は元カレと...某企業マーケティング部でインターンをしている時に出会った。

経営学部生だった私は当時、会計情報原理も理解できないほどのポンコツ学生だった。初の社会人経験はひどく苦しかった。まさにMad Clown「Coffee Copy girl」(※)のようで、化粧で顔を覆い、職場の優しい花になる毎日を過ごした。

(※)ソウル住まいの女子大生が、整形をしてやっと内定をもらった会社で、書類のコピーとコーヒーを淹れることに終始する様子を歌った曲。

「女はスカートをはくべき」「お前が可愛くして出勤してこそ、俺たちも会社に通いがいがある」といった言葉にも、ただ笑って「はい」と言うしかなかった。

マーケティングの業務は、想像を超えるほどハードだった。

マーケティングといえば、とっても素敵なキャリアウーマン、現代的な女性、創意力まじヤバい人。そんな想像の翼を広げていたが、現実ではスカートを履きながら、1日中キレイに座って、ニコニコしながらExcelをタイピングしていた。二重に苦しむ毎日だ。

元カレはこんな大変な時、魔法のようにぴょんと現れた。

はじめは顔がとてもタイプだったので会っていたが、会えば会うほど素敵な人だった。好きで、うまくやれる仕事をしてほしい、と応援してくれた。彼の言葉は私に勇気を与え、インターン先を辞めてエディターを目指すように導いてくれた。

私の進路に多大な影響を及ぼした彼は、私の人生を助けに来た救世主だった。

しかし、完璧な恋愛はなかった。彼は忙しかった。"悪い男"より、もっと気苦労させるくらいの、"忙しい男"だ。

深夜1、2時に帰宅する日も頻繁で、週末も突然会社に呼ばれることが度々あった。

恋愛初期にはいくら忙しくても、30分でも顔を合わせようと夜遅くでも駆けつけた彼だったが、時間が経つほど、次第にそんなことは減ってきた。

Instagramで、CYWORLD(※)時代にだけ通用するようなエモい「病みポスト」を見ながら、嗚咽する夜が増えた。

(※)CYWORLD:1999年に設立されたベンチャー企業。主要サービス「ミニホムピ」は、自身のページに様々な投稿をする、韓国版mixiのような存在だ。

CYWORLD

女が別れを告げる8つの状況...★

3.理解しようとした。毎回私は理解した。ところで知ってる?理解がつづいたら愛がなくなったよ... #愛 #映え #文章 #良い文 #相互フォロー

一体、いつまでソフトウェア開発者みたいなこの男を理解しなければならないのか。どうして韓国は52時間勤務制ではないのか?私たち、どんな民族ですか...。OECD平均より1年に33日さらに働く民族...うっうっ...。

そのような破壊的で不穏な考えに陥り、涙に顔を埋めたりした。

結局、私たちはそんな問題に勝てず...。

彼が熱心に働いて稼いだお金で、結婚したのだ。

\❤👰💍突然のハッピー!💍👰❤/

結婚して一緒に暮らすようになると、彼の忙しさは大して問題ではなくなった。深夜1時だろうが2時だろうが、朝、目が覚めたら私のそばに彼がいるから。

さらに、結婚してすぐに「週52時間勤務制」が導入され、夫の退勤も少し早まった。私たちは恋愛の時よりも、あまり忙しくなく、より幸せな生活を営むようになったのだ。

休暇は10日前に知らせてきたが、開発者のように暮らしていた昔に比べると著しい進歩だ。

それでも、こんな風に家に夫がいない夜は、夜が明けても仕事をしているほど忙しかった「元カレ」(つまり、現・夫のこと)との、あの時代を思い出す。

だからみなさん、今日は早く退勤して、元カレトーストをどうぞ。元カレトーストのレシピはこちら。

1.食パンを焼いて

2.そこにクリームチーズを塗って

3.ブルーベリージャムを塗って

4.電子レンジで10秒温める

ハフポスト韓国版から翻訳・編集しました。