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2019年02月01日 14時14分 JST | 更新 2019年07月09日 13時26分 JST

「部下への振り返りがうまくできない…」OSTで知らない人に相談したら、リアルなフィードバックが返ってきた

初対面の相手でも盛り上がるワークショップの仕組み、“オープン・スペース・テクノロジー”とは何か

Regional Scrum Gathering Tokyo 2019でのOSTの様子

悩みを相談すると、周囲から"熱い"フィードバックをもらえるワークショップが、1月11日、エンジニア向けのイベント「Regional Scrum Gathering Tokyo(RSGT)」で行われた。

相談に乗ってくれるのは、ほぼ初対面の赤の他人。にもかかわらず、持ち込まれる相談に、周りの参加者が責任と情熱を持って一緒に考えてくれる"仕組み"があるのが特徴だ。 

ワークショップに参加したのは、約200人。

  • 社員のモチベーションを上げるには、何をすればよいか?
  • エンジニアにビジネス思考を身に着けてもらうには
  • 地方で開発の請負仕事をしているんだけど、首都圏にいる仕事の発注者との溝に悩んでいる
  • 業務委託の方にも、自社のビジネスの考え方をうまく共有したい

など、25件ほどの相談がイベントに持ち込まれた。これらの相談が、どのようにワークショップで展開されたか、その一例を紹介しよう。

HuffPost Japan
意見を模造紙に書き込んでまとめていく。

「部下への振り返りがうまくできない」と相談してみたら...

ある30代の会社経営者は、「部下への振り返りがうまくできない」という相談を持ち込んだ。良かれと思って部下にフィードバックしたのだが、うまく伝えられなかったのだという。

この相談のグループには、入れ代わり立ち代わり約20人が集まり、解決のアイデアを出し合った。自分自身も部下へのフィードバック方法に悩んでいる20代の女性や、長年部門を率いている50代の部長職の人など、年代も経験もバラバラなのだが、冒頭に参加者の自己紹介などはなく、相談の内容を聞いた参加者らは、まず自分の体験を話し始めた。

「私はフィードバックで次の3つを含めるようにしています。

・行動そのもの

・その行動による影響

・その人に期待していること

これをセットで話すことで、フィードバックの意義を伝えられるようになりました」

「1対1でのフィードバックではなく、みんなの前でフィードバックをしなくてはいけないときもありますよね。

 

例えば、他の人もやりそうなミスだったり、大きな事故に繋がりそうなミスだったりしたとき。翌日の朝礼でミスがあったとみんなに伝えるのですが、私は、ミスをした人を褒めるようにしています。『よく最初に事例を作ってくれたね』という感じです。そのうえで、どうすればミスはなくなるかを考えてもらいます」

実は、この相談のセッションは、特別な進行の型式があるわけではない。しかし、誰かが話し始めると、他の参加者からも、気付きや新たな質問、自分の持っている課題がシェアされ始める。

「ネガティブなことばかりではなく、ポジティブなコメントをすることも、フィードバックだよね」

「行動に対する期待が、フィードバック"する"側と"される"側でずれていることが、よくあります」

「フィードバックされる側にも、フィードバックしてほしいことを事前に言ってもらってもいいかも」

「入社したばかりの人とか、フィードバックに慣れていない人にフィードバックしなくてはいけない時に、何か工夫していることはありますか?」

「フィードバックに慣れてもらうために、2日に1回の頻度でやってみています。ただし1回10分とか短い時間にしてます」

「フィードバックのときに使う"言葉"の基準をすり合わせるのが難しいです。

 

例えば、『これをやってはダメ』と言いたいときに、『ダメ』の影響度が、大事故につながる『ダメ』なのか、ちょっと作業が複雑になるからというような『ダメ』なのか、同じ『ダメ』でも違いますよね。ただ単に『ダメ』というだけではダメなんですよね」

これら1つ1つの発言が付箋に書き込まれ、模造紙にまとめられていった。対話が深まり、相談のだいたいの目安とされていた30分という時間が、あっという間に経過した。

初対面の相手でも盛り上がる「OST」とは?

今回紹介したワークショップでは、「オープン・スペース・テクノロジー(OST)」と呼ばれる手法が使われた。

OSTは1985年にハリソン・オーウェン氏によって提唱されたワークショップの形式だ。何を相談するかや、進行の段取り、参加人数は特に決められておらず、参加者に任せている。個人の主体性を重視しているためなのだが、最も特徴的なのが、相談のグループへの参加者の出入りが自由だということだ。

相談を持ち込みたい人は、一緒に考えてくれる人はいないかとアピール。参加者らはそれらの相談のなかから、自分が貢献できると思ったり、興味があったりする相談のグループに加わるのだが、加わらずに他のことをしていてもいい。

また、参加してみて、自分が貢献できないと感じたり、つまらないと感じたら、途中で席を立つ自由も認められている。相談を持ち込んで参加者を招致した人は、他に行かないでと止めることはできない。

この、参加自由・出入り自由という点は、「関心があるテーマが他にないから、仕方なくこのグループに参加した」という"言い訳"ができないとも言えるだろう。自然と参加者も、熱意をもって参加するようになるのだ。

今回のRSGTのように、初対面の人が多いOSTもあるが、もちろん、社内など知っている人だけでのOSTを実施してもOK。誰かに言われて参加するのではなく、自主的に参加することが大切だ。

OSTでは最初に相談を持ち込みたい人が、自分の課題を参加者全員の前でアピールし、相談のセッションに参加してくれる人を募集する。
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壁に張り出された相談を見て、参加するグループを検討中。

RSGTの主催者によると、例年、OSTをイベントに組み込んでいるという。RSGT実行委員会メンバーが、北米の本家イベント「Global Scrum Gathering(SG)」でOSTのワークショップを経験。様々な出会いや気づきを体験できたことから、日本のイベントでも実施するようになった。世界各地で行われるSGのイベントでは、OSTは人気セッションになっているのだという。

参加者はどのように感じているのだろうか。聞いてみると、

「うちは社員が少なくて会社には相談相手がいない。仕事の関わりがない人に、ざっくばらんに相談する機会があってありがたかった」

「他の人の事例がたくさん聞けた」

「参加したテーブルは少人数だったけど、ひとりひとりの話が深く聞けた。繋がりができたので、今後もまた相談したい」

「自分の発言が、役に立つと言ってもらえた。嬉しい」

など、様々な感想が出た。

「部下への振り返り」について相談した参加者は、これまでにもフィードバックの方法に関する書籍をたくさん読んでいたというが、現場の知恵を得たかったので相談してみたのだと話してくれた。

「本を読んで理解したつもりでしたが、本には書かれていない多くの収穫がありました。例えば、振り返りの際に3つのことを取り入れる"ビヘイビア・ベースド・フィードバック"というキーワードを知ることができました。『読んだ本のあそことここに書かれていた』というバラバラの情報を、一つに整理して再構築できました。

振り返りをする相手から、フィードバックしてもらいたい内容を聞くとか、ちょっとした振り返りを積み上げていくなど、実際に使えそうなアイデアもありました。

相談前に期待していた以上の内容が得られたと思います」

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何かを誰かに相談したいと思ったときに、200人もの人に質問できる機会はなかなかないのではないか。初対面でも打ちとける。聞いている側も、思わず自分のことを話したくなる。他の会社の若者が持つ悩みを、自社の若手の悩みに置き換えて考えてみたりもできる。取材をしながら、私自身も相談セッションに夢中になっていた。またどこかのOSTに、参加してみたい。