「スクールセクハラ」言葉が軽い?「先生に胸を触られた」と千葉の小6女児が提訴

20年前から使われていた言葉が、「軽すぎる」と議論を呼んでいます。
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千葉県内の公立小学校で、小学6年の女子児童とその両親が、30代の男性教師から胸などを触られ学校に行けなくなったとして、教師や自治体などに慰謝料や損害賠償を求めて提訴した。この件を「スクールセクハラ」という言葉を使って報じたメディアに対し、「言葉が軽すぎるのでは」と指摘する声が多数上がっている。

朝日新聞などによると、女子児童は5年生だった2017年9月ごろから、校内で男性教師に脇やあごをくすぐられるようになったという。2018年2月には、1人で女子トイレを掃除していたところ、複数回にわたって服の中に手を入れられ、胸を触られたと訴えた。女子児童の両親らが記者会見した。

女子児童は眠れなくなったり学校に行けなくなったりしたが、現在は母親に付き添われて登校し、保健室で勉強しているという。男性教師は胸を触ったことは否定。あごや肩、脇を触ったことは認めたが、「励ますつもりだった」と説明しているという。

1月31日朝の日テレ情報番組「スッキリ」が、この件を「スクールセクハラ」とタイトルをつけて報じると、SNSでは「虫唾が走る表現」「性的虐待だ」「強制わいせつを軽く言い換えるのはやめた方がいい」など、言葉の選び方を疑問視する声が広がった。

20年以上前から使われていた「スクールセクハラ」、なぜ今批判?

スクールセクハラとは、学校内で行われるセクハラを指す。

特定NPO法人「スクール・セクシュアル・ハラスメント防止全国ネットワーク」の公式サイトによると、団体が本格的に活動を始めたのは1998年。「スクールセクハラは人権侵害行為であり、犯罪です」と定義している。朝日新聞でも、1993年には「スクールセクハラ」と言う言葉を使って無料相談会の開催を報道。「スクールセクハラ」は20年前から使われている言葉なのだ。

なぜ今、スクールセクハラを「軽い言葉」と感じるのだろうか。

2017年後半から世界中で大きなうねりとなった「#metoo」ムーブメント以来、日本でも「セクハラ」という言葉が頻繁にニュースや日常会話に登場するようになった。セクハラという言葉の認知や理解が高まり、「胸を触るようなセクハラは犯罪」という共通認識が社会全体で共有され始める中、子どもに対する「セクハラ」により厳しい目を持つようになったのかもしれない。

エッセイストの小島慶子さんは「すごい変化だなと思う」と驚く。

「これまでなら『指導』という言葉で隠蔽され黙認され、諦められてきた行為に対して、スクールセクハラという言葉は、人々の意識に訴えるネーミングで問題を可視化してきた。第一段階として、意味はあったと思います。

今回、軽すぎる、という世論が出てきたことはフェーズが変わったということ。ハラスメントが可視化され、矮小化されることに抵抗している。ここ数年、児童虐待への問題意識や、ブラック校則など学校システムへの疑問が高まったことも影響しているのでしょう。社会全体の感度、リテラシーが高まった象徴的な現象だと思います。」

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