知っていますか?「女性平和安全保障」

女性平和安全保障の理解促進を目指して米国NGOのICANが啓発アニメーションを作成しました。

紛争下や紛争後の女性や子どもに対する性暴力、ジェンダーに基づく暴力は許されるものではなく、被害者は支援を受け、加害者は処分を受けるべきであり、人道復興支援はジェンダーに配慮すべきであり、和平交渉や平和構築に女性を参画できるようにするべきである。

― こうしたことは、以前は理念として賛成する声はあっても、実践においては具体性を欠いていましたが、2000年に採択された国連安全保障理事会決議1325号(以後、1325号)、別名「女性平和安全保障」決議を境に、具体的な目標として認識されるようになりました。

しかしながら、日本国内でも、1325号や、日本版行動計画「女性平和安全保障行動計画」についてはあまり知られていません。

その原因として1325号が網羅する内容が多岐にわたっているからとも指摘されています。女性の和平および平和構築支援の意思決定への参画、ジェンダーに基づく暴力の予防、ジェンダーに基づく暴力からの保護、人道復興支援へのジェンダーの配慮、加害者処罰といった多くの問題をはらみ、全体を理解することが難しく、議論がまとまらずに取り残される課題も多いと指摘されてきました。

「平和構築への女性の参画の必要性」啓発アニメーションが公開

こうしたことから、女性平和安全保障の理解促進を目指して米国NGOのICAN(International Civil Society Action Network)が啓発アニメーションを作成しました。

そしてそのうちの一つで、AAR Japan[難民を助ける会]が作成に寄与した「Better Peace Tool(ベターピースツール)」の日本語版が公開されました。

「Better Peace Tool(ベターピースツール)」日本語版

「Better Peace Tool」(直訳で『より良い平和への手段』)は、和平交渉や平和構築へ女性を参画させていこうという1325号の参画分野の主旨を説明したものです。

「和平交渉には軍人だけでなく、平和の担い手として、とりわけ女性を招きましょう」。

こういって同アニメーションは女性の和平への参画を訴えます。

そして女性が参画する方法として以下を提案しています。

  • 女性が参加することで、和平交渉に参加する紛争当事者の正当性を高める仕組みをつくること
  • 和平に参加する代表団に対して身近な問題をジェンダーに配慮した視点から説明すること
  • 和平交渉への女性の参加枠を確保し、女性が指名されなければ空席としておくこと
  • 国際社会への提言として、国連安保理決議1325号実施のための特使を任命すること
  • 国際会議の場へ女性を参加させること
  • 経験豊富なジェンダー・アドバイザーを早い段階で任命すること
  • 和平交渉の仲介人は、女性と市民社会の専門家で顧問グループを構成して、ジェンダー・アドバイザーに助言できるようにすること
  • また、女性が持つ知識と役割について以下のように説明しています。

  • 女性は、地雷が埋まっている場所や市民への脅威など、日々の安全保障に関わることを多く知っている
  • 女性が武装した兵士である場合もある
  • 停戦監視や信頼構築、性暴力の低減に対して、女性にしかできない貢献もある
  • 女性や市民社会は、紛争の影響や紛争中の暴力について、一方のみを責めるのではなく、敵味方ともに加害者であったと捉える
  • そして最後に、紛争当事者と平和の担い手の両方がそろって紛争を終わらせ、平和を持続させることができると結んでいます。紛争に影響を受けた当事者がより多く参加することで平和構築はより効果的なものになります。

    こうした女性平和安全保障分野において、日本にいる私たちにもできることがあります。こうした問題に対して興味を持ち、自身も関係のあるものとして関連付けていくことです。

    日本の「女性平和安全保障」行動計画は2016年4月から実施が始まっていますが、初めての実施報告書「女性・平和・安全保障に関する行動計画年次報告書2015年1-12月」が外務省HPで公開されました。

    同報告書では、日本が国際協力支援の分野で女性平和安全保障についてどのような支援を行っているかを報告しています。

    女性・平和・安全保障に関する行動年次計画報告書は下記リンクからご覧いただけます。

    AARは1325NAP市民連絡会というネットワーク組織の運営委員として、こうした報告書の内容を注視しつつ、3年ごとに予定されている「女性平和安全保障行動計画」の見直しの中で、紛争影響下の女性や子どもの支援の内容についてフォローしていきます。

    AARは海外ではジェンダーに配慮した人道支援を行い、国内では引き続き、現場で行われる必要な支援が、ジェンダーに配慮した形で行われるように政策提言を行っていきます。

    【報告者】

    福井 美穂

    2015年4月より東京事務局で国際協力に関わる調査・研究を担当。大学院卒業後、AARの旧ユーゴスラビア駐在員として勤務。その後緊急人道支援に従事し、政府機関や大学勤務を経て、再びAARへ(長野県出身)

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