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2017年12月20日 15時05分 JST | 更新 2017年12月20日 15時06分 JST

ホラー漫画のグロシーンを黒塗り処理!表現の自主規制問題に江川達也氏「徐々に慣らしていくことも必要」

「編集側からストップをかけられる風潮はある」

 20日発売予定だった秋田書店のホラー漫画「殺戮モルフ」第2巻の一部シーンが、出版社の自主規制により無断で黒塗りされたことに対し、原作者の外薗昌也氏がTwitterで問題提起、大きな話題となった。外薗氏によると、問題とされたのは「女子高生の死体で作った祭壇」を描いた部分だという。

 外薗氏は12日、「グロシーンを真っ黒に塗り潰されての発売となりました 真っ黒でなにがなんだかさっぱりわかりません 前代未聞です」とツイート。ネット上では「グロって分かっている漫画に必要な処置か?」「戦後すぐの教科書かよ」など、出版社側の対応に疑問を呈した。

 ハフポスト日本版などの報道によると、雑誌掲載時には不特定多数の人が読むため網をかけて黒くする処置を施しことに外薗氏も同意していたが、単行本化される際には黒塗りを取り除く約束も交わしていたという。外薗氏が声を上げたことで、出版社側が謝罪。印刷段階にあった単行本の発売を取り消し、黒塗りを外したものを改めて販売することを条件に和解したという。編集者はその際、「倫理委員会から再三警告があり、有害指定されないよう慎重になり過ぎて真っ黒にした」と外薗氏に説明したという。

■現役ホラー漫画家「編集側からストップをかけられる風潮はある」

 18日放送のAbemaTV『AbemaPrime』に出演した漫画家の江川達也氏は「僕も昔、エロ表現で訂正させられた経験がある。勝手にやられたことではなかったが揉めた。週刊少年ジャンプの『まじかる☆タルるートくん』で、全部ボツにされ、締め切りがあと1日しかない中、全く違う、エロくも何ともない漫画を描いた。青年誌に比べるとやんわりした表現だったが、ちょうどマイナーな漫画誌に警察が入って捕まったという事件があった時で、出版界全体が自主規制に入った」と振り返る。

 講談社の瀬尾傑氏は「漫画を含めた著作物を出版社が作者に無断で改編したり、修正したりすることはない。販売ができなければ出版社や著者にとって死活問題。そこで過剰に対応する出版社が出てきているのでは」と話す。

 元都知事で作家の猪瀬直樹氏は「本来、印刷の前に話合いが出来てないといけない。著者の合意がないのに黒塗りになって出たということは、出版社が著者を下に見ているのでは」と指摘。江川氏も「外薗さんのようなベテラン漫画家に、このような失礼な行為は普通考えられない。漫画家のことをバカにしている編集者か、そもそも何も知らなかい編集者だったか」と話した。

 「ネット上にはエロ・グロなものが山のようにあり、小学生でも幼稚園児も見られる状態なのに、漫画だけに規制が入っていくと、事なかれ主義の作品ばかりになり、業界が廃れる可能性がある」。

 昨今の規制の流れを危惧しているホラー漫画家の一人が、弓咲ミサキックス氏だ。「いわゆるグロを書いてほしい」と依頼すると、約2分後、腕や脚がもげ、白目をむいた少女の死体を描いてくれた。

 「少年漫画だったら別だろうが、多分、死体そのものでは規制にならないのではないか。ただ、この子が生きている設定で腕、脚をチェーンソーやノコギリで切り裂いていくシーンや、叫び声などが描かれると規制の対象になってくるかもしれない。また、似た犯罪がある場合、クレームが来るのを恐れる編集側からストップをかけられる風潮はある」。

■猪瀬氏「"ゾーン規制"で対応すべきだ」江川氏「語り合える親子関係を」

 そもそも憲法21条では「集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する」と定められている。その一方、各自治体には「有害図書」を指定できる条例がある。そうした図書が青少年に悪影響を及ぼすということは「既に社会共通の認識」であり、憲法21条が保障する表現の自由に反するものではない、とする最高裁判決もある。

 東京都では著しく性的感情を刺激したり、残虐性を助長、自殺・犯罪を誘発したりする恐れがある図書類などに対し都知事が「不健全な図書」に指定することができ、青少年への販売や貸出などができなくなる。販売の際にも、青少年に見えないよう、カバーをかけて陳列することが義務付けられる。今年、すでに20冊の漫画などが東京都で指定されている。

 猪瀬氏は「大人から見たら何てことないものでも、子どもには大変な恐怖を与えることがある。しかし、少しずつ刺激に慣れ、小学校高学年、中学生...と成長していくものだ。言論・表現の自由とは関係なく、自分の子どもに見せられるかどうかで、ちょっと手の届かないところに置いていく。それが大人の責任であり、社会の仕組みだ。東京都がやったのも、子供の手が届かないところに置くという"ゾーン規制"で、その対象もせいぜい年間20冊ほど。漫画家や編集者はどうすれば売れるか考えて提案する色々な企画を提案する。そうじゃなくて、エロとグロはある程度数字が取れるからと安易に流れる人たちもいる。ちゃんと努力しろよっていう部分もある」。

 今回の問題について街の人からは「表現の自由が奪われて、漫画的な自由な描き方ができなくなってしまうのでは」(20代男性)、「(息子の部屋からこういう本が出てきたら)ちょっとヤバイかなと思う。そういうものに興味があるのかなと心配になってしまう」(40代女性)といった声が聞かれた。

 過激な表現が犯罪を助長する恐れがあるという指摘について江川氏は「犯罪をする人としない人の間には大きな川が流れていると思っている。その差は自分のやることに自覚的なのか無自覚なのか。(過激な)作品は、ある人たちにとっては犯罪を助長するものになるかもしれないが、ある人たちにとってはそういうエネルギーを溜め込まないようにさせる"犯罪抑止"にもなっている。全部見せた上で、現実と妄想の区別を分けるような教育をすることが大事だと思う」と話す。

 その上で「僕は性教育的効果を考えて『タルるートくん』に少しずつエロも描いた。当時読者だった人が健全な30代、40代の人になって、感謝されることもある。今、ネットでググるといきなり性器が出てきてドン引きしてしまう人が多い。その前に漫画などで徐々に慣らしていくことも必要だ。(今回の作品については)嫌な人は見ない。子どもが見つけて喜んで読んでいたとしたら、それに対して"どう面白いの?"って語り合える親子関係を築いていったほうがいいと思う」とコメントしていた。(AbemaTV/『AbemaPrime』より)

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(2017年12月20日AbemaTIMESより転載)