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2018年02月28日 10時35分 JST | 更新 2018年02月28日 10時35分 JST

イヴァンカ補佐官を送ったアメリカ、韓国に"因縁の男"を送った北朝鮮、両国の思惑は?

「北朝鮮としてはかなり苦しいし、アメリカも苦しい。両方とも身動きが取れない状態が当面続くのではないか」

Lucy Nicholson / Reuters
Pyeongchang 2018 Winter Olympics - Closing ceremony - Pyeongchang Olympic Stadium - Pyeongchang, South Korea - February 25, 2018 - Ivanka Trump, U.S. President Donald Trump's daughter and senior White House adviser, and Kim Yong Chol of the North Korea delegation attend the closing ceremony. REUTERS/Lucy Nicholson

 オリンピック後の米朝関係に焦点が移った朝鮮半島情勢。平昌五輪の閉会式に出席するため韓国を訪問したイバンカ大統領補佐官は文在寅大統領との会談後、「朝鮮半島の非核化を実現するために最大限の圧力をかけることを改めて確認した」と述べ、韓国との連携による北朝鮮への圧力強化を強調した。

 開会式で金与正氏と同席したペンス副大統領は22日、「金正恩の妹は地球上で最も過激で抑圧的な政権を中枢で支えている」とアメリカ保守派のイベント「CPAC(保守政治活動会議)」で述べ、斬って捨てた。同じ集会でトランプ大統領は「北朝鮮に対し、これまでで最も重い制裁を科した」と述べ、北朝鮮への燃料遮断を狙い、27の企業や28隻の船舶などを対象に取引を制限する独自制裁を発表。トランプ大統領は「これ(最大級の制裁)がうまくいけば、建設的な何かが起こるかもしれない」と述べている。

 トランプ政権はこれまでにも北朝鮮が核・ミサイル実験を中断すれば対話に応じる考えを示唆しているが、この最大級の制裁で情勢は変わるのだろうか。それとも再び、軍事的緊張が高まるのだろうか。

 今回、イバンカ補佐官にはNSC(国家安全保障会議)の北朝鮮担当部長であるフッカー補佐官が同行していた。フッカー補佐官は北朝鮮に拘束されたアメリカ人の釈放交渉のため2014年に訪朝したこともある、オバマ政権時代から北朝鮮担当を務めるベテランだ。

 26日放送のAbemaTV『AbemaPrime』に出演した早稲田大学招聘研究員の渡瀬裕哉氏は「ペンス副大統領も言っていたが、アメリカに言わせればオリンピック全体が北朝鮮のプロパガンダのようになっていたので、それに対抗するという意味合いがある。アメリカ人というのは、やられたらやり返すというマッチョ思考の人たち。だから北朝鮮がオリンピックを利用してくるなら、こちらも目立つイバンカさんを出して、メッセージを送るということ。南北融和のムードに対しても、"そういう勝手なことは許さないよ。アメリカが話題をさらい返すんだ"というメッセージを送っている」と説明する。

 一方、イヴァンカ補佐官と並んで閉会式のスタンドに出席した金英哲労働党副委員長は哨戒艦撃沈、延坪島砲撃の他にも2013年の韓国への大規模サイバーテロ、「ソニー・ピクチャーズ」ハッキング、2015年の軍事境界線での地雷爆発への関与が疑われている人物だ。そのため韓国では抗議集会が行われるなど、激しい反発の声が広がっているが、韓国統一省の白泰鉉報道官は23日、「国民の皆様も大局的かつ未来志向的な次元から理解されるようにお願いする」と述べている。

 東京国際大学の伊豆見元教授によると、金英哲氏は90年代から南北問題に関わってきたエキスパートで"エース級"の人物だといい、金与正氏の"ほほ笑み外交"から一転、"テロを主導した強硬派による外交"に転換したというのは、あくまでも韓国側による一面的な見方だと指摘した。

 金英哲氏は閉会式の前に行われた韓国の文在寅大統領との会談で、「アメリカと対話する十分な用意がある」という考えを示した。これに対し、ホワイトハウスは声明で「対話の結果が非核化でなければならない」と強調している。

 渡瀬氏は「米朝の接触があったかどうかは分からないが、トランプ大統領が新たな制裁を発表しながら、こういう人選をしてきているということは、殴りつつも話し合う用意はあるというメッセージだ」と推測。金英哲氏派遣の理由については「北朝鮮としても、かなり真面目に対応せざるを得ない状況になっていると思う。今までのようなナメた対応をしているととんでもないことになるぞという焦燥感がある」との見方を示した。

 文大統領と金英哲氏の会談後、ホワイトハウスは声明で「朝鮮半島の完全な非核化を求める。北朝鮮の『対話の用意はある』というメッセージが非核化の道につながる最初のステップであるかを見極めている」としている。これについて渡瀬氏は「制裁をかけて北朝鮮が音を上げるまで待つ、強力に封じ込めるということと、背後で支援している中国に協力してほしいというメッセージも存在していると思うので、まだまだ外交的な話が続く」との見方を示す。

 しかし、それでも効果がなかった場合について、トランプ大統領は「効果がなければ第2段階に入らねばならないだろう。それは手荒な対応になる。世界にとってとても不幸なものになるかもしれない」と警告している。

 「この演説でのトランプ大統領の話はほとんど選挙についてだった。これは北朝鮮へのメッセージであると同時に、国内に対し、自分は一歩も引かないというメッセージを出したということ。北朝鮮以外にも敵対している国がいくつかあるが、それらを封じ込めて屈服させることができれば、トランプ大統領の得点はすごく上がる。経済政策については支持率が不支持よりも高いが、外交政策については圧倒的に不支持が高い。選挙を考えると、外交政策で点数を稼がないといけないというのはある」(渡瀬氏)。

 来月9日から始まる平昌パラリンピックが閉会した後には米韓合同軍事演習、故・金日成主席の誕生日といった日程が続く。

 「過去に米韓合同軍事演習が止まったことがあるが、それは北朝鮮との対話の機運が出ていた時だった。その意味で、韓国がどちら側(アメリカか北朝鮮か)なのか。万が一、演習が止まるのであれば、それは対話をするという話だろう。しかし、最終的には核が残り、パキスタンのような形で封じ込める形になる可能性がかなり高いと思う。北朝鮮としてはかなり苦しいし、アメリカも苦しい。両方とも身動きが取れない状態が当面続くのではないか」。(AbemaTV/『AbemaPrime』より)

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