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2018年05月26日 14時42分 JST | 更新 2018年05月26日 14時43分 JST

“イニエスタV神戸入り”の裏に「スマホ戦略」と「DAZN」 Jリーグのビジネス改革とは?

Jリーグが乗り出した“ビジネスモデル改革”に注目が集まっている。

AbemaTIMES

J1ヴィッセル神戸は24日、スペイン代表のアンドレス・イニエスタ選手が完全移籍で加入することを発表した。さらには、元スペイン代表のフェルナンド・トーレス選手がJ1サガン鳥栖入りを決断したとも報じられている。

近年、元ドイツ代表のポドルスキ選手(ガラタサライ ヴィッセル神戸)、元ブラジル代表のジョー選手(コリンチャンス 名古屋グランパス)など海外スター選手を獲得し、盛り上がりを見せるJリーグ。そんな中、Jリーグが乗り出した"ビジネスモデル改革"に注目が集まっている。

「今の子どもたちは簡単にメッシ選手のプレーをストリーミングで見られる時代になってしまった。じゃあJリーグはどうあるべきかというと、同じスマホの中で比べられてしまう時代の中で、プレーの質を絶対に上げていかなければいけない」

こう話すのはスポーツマーケティングラボラトリーの石井宏司執行役員。スマホ視聴にいかに対応していくかが、これからのサッカービジネスのカギだという。

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海外の試合を誰もがスマホで視聴できる今、Jリーグと各チームが総力をあげて視聴者のニーズに答えていかなくてはならない。改革を迫られる中、ヨーロッパのある企業がJリーグに興味を示した。それが、スポーツのライブストリーミングに力を入れる「DAZN(ダゾーン)」。JリーグはDAZNを運営するパフォームグループと放映権について10年間で2100億円という大型契約を締結した。

こうした破格の契約の裏には、リクルート出身でJリーグ5代目チェアマンの村井満氏の存在がある。クラブ運営の経験はないが、ビジネスのプロとしてJリーグの改革を始めた。

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「村井氏というビジネスリーダーをチェアマンに据えて、たとえばデジタルとかアジア戦略といった会社・組織をJリーグの中にたくさん作りあげて、それぞれが戦略を持って戦えるような状態にしていった」(石井氏)

1993年に創設された当時、Jリーグの試合は地上波のゴールデンタイムに中継され、時には視聴率30%を越える一大コンテンツだった。日本に空前のサッカーブームを巻き起こし栄華を極めたJリーグ人気だが、次第に陰りが見え始め、2014年に村井氏がチェアマンに就任した時には来場者も頭打ちに。さらに「ファンの高齢化」という問題も抱えていた。

Jリーグデジタルの出井(でい)宏明代表取締役社長は、当時の危機感をこう振り返る。

「来場数が増えない中で、平均年齢がどんどん上がっていく。つまり、新しいお客さんがなかなか取り込めていないというのが課題感としては大きかった」

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若者を再びJリーグに呼び込みたい。そこで、テレビ中心だったメディア戦略をスマホなどのデジタル戦略へと切り替えたという。

「20代・30代中心に、何かあったら彼らが一番使うメディアに我々の情報を入れたい。Facebook、Twitter、Instagram、LINE、YouTubeといった形でメディアの幅を広げて、さまざま活用してきた。表現方法としては、テキストより動画の方が身近に感じてもらえる。DAZN様との契約によって一番大きく変わったのが、著作権がJリーグの方でやらせていただけるようになったこと。活用の自由度がすごく上がった」(出井社長)

それが最も表れたのが、漫画『キャプテン翼』の名シーンをプロの選手が実演する、いわゆる「実際にやってみた」系動画。中には視聴回数が900万回を超えるものも。そんなデジタル戦略の影響もあってか、2017年の年間総入場者数は過去最多の1078万人に増加。年々上がり続けていた観客の平均年齢もほぼ横ばいとなり、2017年のJ1の観客平均年齢は、調査が実施された2004年以降、初めて前年より若くなった。

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「もともと狙っていた新しいお客様が入ってきている兆しが感じられたのが、何よりも大きいかなと思います」(出井社長)

改革に効果が出始めたJリーグ。今年で25周年を迎え、この先はどのような戦略を考えているのか。出井社長は「週末どういう過ごし方をするのか。その中の1つとしてスポーツ観戦があって、Jリーグが選ばれる時もあれば毎週見ない人もいると考えた時に、今やっている取り組みをもっともっと広げて、それこそJリーグだけじゃなくて、他のスポーツ競技、団体も含めて一緒に何かアプローチできるようになるといいなと思っている」と語った。

スポーツ中継ストリーミングの今後について、スポーツマーケティングラボラトリーの石井氏は「これからはインターネットの巨大"プレイヤー"(Facebook、Googleなど)が参入し生き残っていく」と予想するが、作家・スポーツライターの小林信也氏は「テレビは日本という枠の中で放送されているが、デジタル・スマホはボーダーレス。ここ(スマホ)に世界があるから同じ土俵で勝負しなきゃいけないのは大きな違い」と話す。

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また今回のイニエスタ選手の移籍に関して、年俸30億円以上で複数年ともされる契約が話題となっているが、小林氏は「チームの運営でみればペイするのは難しい」としつつ、「楽天の世界戦略というところでいえば、一瞬で元を取るかのようなメリットがある。世界的なビジネスシーンにおいて、三木谷さんのステータス・信用度が大きく上がることは間違いない」と評価した。

一方で、自身が中学硬式野球チームの監督を務めた経験から日本プロ野球の戦略に言及。「DAZNが11球団と契約したが、12球団が一丸となっていないためにJ1の2100億円よりも安い契約金になっている。12球団が世界戦略として段違いのビジネスに出来るチャンスを自ら失っているということ。野球にコミッショナーはいるがビジネス的ではない。日本は遅れている」と嘆いた。

(AbemaTV/『けやきヒルズ』より)

▶︎放送済み『けやきヒルズ』の映像は期間限定で無料視聴が可能。

(2018年5月25日 AbemaTIMES「"イニエスタV神戸入り"の裏に『スマホ戦略』と『DAZN』 Jリーグの改革とは?」より転載)