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2018年06月07日 11時13分 JST | 更新 2018年06月07日 11時56分 JST

歌舞伎町のコインロッカーに赤ちゃん…相次ぐ一人出産・遺棄の背景にある"行政と繋がれない女性たち"

遺体が捨てられたロッカーには新宿・歌舞伎町ならではの事情もあった。

 新宿・歌舞伎町のコインロッカーから生まれたばかりの赤ちゃんの遺体が見つかるというショッキングな事件で、警察は2日、住所不定・無職の戸川万緒容疑者を死体遺棄の疑いで逮捕した。遺体にはへその緒がついたままで、首には絞められた痕があり、タオルが巻かれていた。また、発見した時点で死後1か月から3か月ほどが経っていたという。

 警察の調べに対し、戸川容疑者は「今年1月ごろ、歌舞伎町の漫画喫茶の店の中で子どもを産んだ。赤ちゃんの声が出たので、ばれてしまうと思い、殺した」「漫画喫茶に(遺体を)数日置いて、においが出ると嫌だから捨てた」と供述しているという。

 遺体が捨てられたロッカーには新宿・歌舞伎町ならではの事情もあった。現場近くで働く人は「よく家のない女の子たちが荷物を置いていた。家出したとか、そういう関係の子がよく使っていた」と話す。戸川容疑者もこの1年ほど、漫画喫茶などを転々としながら生活していたという。

 10代、20代の女性たちのレイプ被害や望まない妊娠の相談に乗り、サポートをしているNPO法人「妊娠SOS新宿」代表理事の佐藤初美氏は、戸川容疑者のような生活を送る女性は決して珍しくないと話す。

 「貧困が背景にある。夜11時〜朝11時まで、1200円くらいで滞在できるネットカフェもあるので、そこに泊まりながら性風俗で1万円、2万円と稼いで生活をつないでいく。そして少しまとまった収入があるとビジネスホテルに移り、おカネがなくなったらまたネットカフェや漫画喫茶に行く」と話す。

 児童福祉法では、若年の場合や収入が不安定な女性や精神疾患を抱えている女性、望まない妊娠をした女性を「特定妊婦」として、出産前に様々な公的支援が受けられるよう定めている。しかし、そうした情報に接する機会がないまま、戸川容疑者のような選択をしてしまう女性もいるのだ。

 佐藤氏は「親との関係がうまくいっていなかったり、虐待を受けていたりすると、行政の窓口に相談すること自体とてもハードルが高い。10代の場合、家族にも相談できないということもある。どこに相談したらいいのか、どういう制度があるのかが10代や20代の方たちになかなか伝わらない。私たちもネットカフェや漫画喫茶に案内を置かせてもらえないかと、新宿区と協議しているところだった。そうした情報が戸川容疑者に伝わっていれば、安全な場所で出産して赤ちゃんの命も助かり、この方も犯罪者にならないで済んだと思い、胸が痛む」と話す。

 出産ジャーナリストの河合蘭氏によると、1人出産には多くの危険がある。例えば、滅菌されていない器具でへその緒の切断をすると感染の危険がある。他にも出産後、胎盤がはがれた時に大量出血が起きることがあり、母体が危険な状態になる。赤ちゃんがうまく自分で呼吸ができず、呼吸困難な状態になり、危険な状態になるといったことがある。

 にもかかわらず、1人で赤ちゃんを産み、遺棄してしまうという事件は他にも起きている。

 今年3月、神奈川県川崎市では自宅アパートで出産した36歳の女が赤ちゃんをスーツケースに入れ、アパートの敷地に遺棄したとして逮捕された。女は「病院には一切行っていない。気がついたら赤ちゃんが死んでいた」と供述している。また、4月に起きた、群馬県前橋市で赤ちゃんの遺体が入った紙袋が老人保健施設の前で見つかった事件では、42歳の女が逮捕されている。女は無職で独身、公園のトイレで出産し、遺体を遺棄した後にインターネットカフェにいたところを逮捕された。「出産時に赤ちゃんは死んでいた。処理に困って供養をしてほしかった」と話したという。

 元衆議院議員の上西小百合氏は「戸川容疑者が漫画喫茶で暮らしていたということは、自分がどこの自治体に属しているかもわからなかったと思う。保険証も無く、初めから通院も諦めていたのかも知れない。それでも勇気を持って近くの役所に相談に行けばアドバイスをくれたと思う。もちろん、役所だと印鑑が要ります、こういう書類が要りますと言われて混乱することもある。そのときには佐藤さんのようなNPOがサポートしてくれるはず。家を出ざるを得ず、だからこそ社会保険にも加入できていないような女性に対して、行政やNPOの情報を周知徹底することが今後の課題になるだろう。NPOの力を積極的に借りるという行政の姿勢が必要だ」と話す。

 博報堂ブランドデザイン若者研究所の原田曜平氏は「スマホですぐにネットを検索できる分、昔よりも情報にアクセスしやすくなっていると思われがちだが、実はそういう情報リテラシーの格差も拡がっていると感じる。ネットに情報を出せばそれで良いというわけではない」と指摘。

 元総務官僚の岸博幸氏も「日本の自治体の支援は非常に手厚いが、若い人たちはそのことを知らない。また、年金定期便もそうだが、説明がすごくわかりにくい。理想論かもしれないが、アメリカでもこういう問題に対しては、行政がNPOやコミュニティと含めて力を合わせて取り組んでいる。日本はそこから程遠いのが事実。行政が頑張らないといけないと思う」と話した。

 佐藤さんのNPO「10代20代の妊娠SOS新宿」の電話番号は03-5155-2907で、毎日午後6時から午前0時まで相談を受け付けている。メールアドレスはinfo@10dai20dai-ninshin.comだ。(AbemaTV/『AbemaPrime』より)

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(2018年6月5日AbemaTIMESより転載)