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2018年05月24日 13時08分 JST | 更新 2018年05月24日 19時04分 JST

是枝裕和監督、『万引き家族』撮影中に“良い映画”の実感「特別な瞬間が何度もあった」

「スタッフのにこやかな顔を見ましたらちょっと実感が湧いてきました」

 日本時間20日に行われた「第71回カンヌ国際映画祭」の授賞式で、最高賞の"パルムドール"を受賞した『万引き家族』の是枝裕和監督が23日夜に日本に帰国。会見で受賞の喜びを語った。

 カンヌとニューヨークへの出張から帰ってきたという是枝監督。冒頭、「ようやくここに帰ってきて、スタッフのにこやかな顔を見ましたらちょっと実感が湧いてきました。ただ公開がまだなものですから。来月に向けて今度は宣伝活動を始めなければいけないので、緩んだ笑顔を見せている場合でもないので、気合を入れて公開へ向けて走りたいと思います」と挨拶し笑顔を見せた。

 続けて質疑応答へと移り、一問一答は以下のとおり。

――受賞から3日と少し時間が経っていますが、改めて実感を教えてください。

 「これだけの記者の方が集まっているということが一番、ああ大きな賞なんだなというのは改めて思いますし、ちょっとずつですね。(実感は)これからだと思います」

――まず家に帰ってやりたいことは?

 「ラインとメールが山のようにたまっていて、まだ『ありがとう』の返信すらできていない方たちがたくさんいます。今年はずっと撮影していて年賀状すら出せていないので、それぞれの方たちに一言でもお礼のメッセージぐらいは返したいなと思います」

――「自分はテレビの人間である」という意識を強く持たれていると思いますが、"パルムドール"を取ってその意識に変化はありましたか?

 「それは変わらないですね。(受賞は)とても嬉しいですけど、どうしても観察してしまうのはテレビディレクターの性。公式上映で拍手・スタンディングオベーションをいただいても、なんとなく『まだ拍手が欲しいのか』って思ってそうな人がいないか探しちゃう。そういう楽しめないところがあるんですよね。それが良いんだか悪いんだかわからないですけど、根っこは変わりませんしそれが僕の強みでもあれば、もしかすると弱点かもしれません。基本的には今までと同じスタンスで、映画と可能であればテレビにも関わっていこうと思っています」

――公式上映の反応は、過去のコンペ出品時と違いを感じましたか?

 「『誰も知らない』の時もとても温かい拍手を頂いたと思うんですけど、あの時は連れて行った子どもたちの蝶ネクタイを付けたりタキシード着せたりしているうちに終わってしまった感じがあって、実はあまり覚えていないんですよね。拍手の長さはそんなに本質的なことではないと思っていて、もちろん長いと宣伝に使えるのでありがたいのはもちろんですが(笑)。深夜の上映にも関わらず熱い拍手が沸き起こったこと自体は前向きに受け止めました。何より翌日からの取材で、各国の記者の方たちの言葉遣いの中に「タッチ」「ラブ」という言葉が一番多かった。まず一言感想を言って取材が始まるのが基本なんですけど、最初にそういう言葉が出てくるというのは『きちんと届いたな』『いい手ごたえだな』と実感として持ちました」

――日本人の受賞が21年ぶりで、その間に昔のテレビや映画、ドラマの良きものが失われてしまった部分がいくかあると思いますが、監督が失われたと思うものがあれば。

 「カンヌに行って思うのは、上映がフィルムじゃなくなったこと。僕はまだ撮影はフィルムにこだわって、今回もフィルムの質感というのは残っていると思う。映画の形、見られる形が確実に変わってきている。正直そのことをどう受け止めて、積極的に変化に対応しているかは僕の中ではできていない。とまどいながら、どうしたらいいだろうという状況。僕が映画に関わり始めて20年の変化を一緒に歩んできたつもりで対応しているが、それから先はこれから」

――日本でも城桧吏さんの演技が注目されていますが、監督が驚かされたことは?

 「レンズを通すとすごく色っぽい。普段は天真爛漫なむしろ幼いぐらいの男の子なんですけど、レンズを通すと色気があるというのが最初の印象。撮影中、台本は渡していないのでどういう物語かは意識していないですし、普段は現場で妹役の子とずっと遊んでいるんですけど、撮影が進んでいくと大人をよく観察していて、今回はどういうカット割りで撮るんだろうと頭の中で先読みし始めるんですよね。城くんが先に「1、2、3」とマネをするようになって。非常に周りを見ながら、それを自分の演技に生かしていくような子でした」

――監督がなぜコロッケをラーメンにひたひたするのか、城桧吏くんが聞いてみたいと言っていました。

 「美味しいですよ(笑)。やられた方がみんなハマると思う。僕らスタッフも編集中に何度かやりましたけど、これは美味しいのでぜひ試してみて下さい(笑)」

――日本映画がこれから発展していくためにどんなことが必要だと思いますか?

 「色んな課題があるので気付けば口にするようにしていますし、監督がオリジナルで企画を書いてそれを立ち上げて映画まで着地させる、そういう監督発の企画が周りを見渡しても少なくなってきたという印象がある。そこには自分が出来る範囲で積極的に関与しながら、そういう監督たちを生んでいったほうが僕自身とても刺激になるので、そういう集団を作って地道に頑張っている。まずは今年以降、何人か新しい監督たちをデビューさせようと企んでいるので、支援をきちんとやれればと思います」

――パルムドールを受賞した分析を教えていただければ。

 「自分が褒められたことを自分で喋ることになるんですけど(笑)。授賞式の後、夜中を回ったぐらいから公式ディナーがあって、そこで審査員の方たちと立ち話をすることができた。審査委員長のケイト・ブランシェットは公式で『演出と撮影と役者とすべてトータルでよかった』と話されていましたが、その時は熱く安藤サクラさんのお芝居について語っていました。女優たちはみな彼女のお芝居、泣くお芝居がとにかく凄くて、『もし今回の審査員の私たちがこれから撮る映画の中であの泣き方をしたら、安藤サクラのを真似をしたと思って下さい』と仰っていました。そのぐらい彼女の存在感が審査員の中の女優たちを虜にしたのだなと、その時の会話でよくわかりました。チャン・チェンさんは、家族全員が縁側で見えない花火を見上げているカットがとても素晴らしかったと撮影を褒めてくれました。それぞれの方たちとのやり取りが、コンペの監督と審査員というよりはシンプルに『観て心が動かされた』という感想を順繰りに聞かせてくれる、とてもいい時間でした」

――3日半ぶりぐらいにトロフィーを見てどのように思いますか?

 「本当に重いんですよね。当日は授賞式からディナーまで持ち続けて、顔の近くに上げてくれというものですから筋肉痛が治ったのが昨日ぐらい(笑)。スタッフに金庫に保管してもらって、ここで再会しました。『誰も知らない』の時も、柳楽(優弥)くんにトロフィーを渡すという記憶が蘇って、今回は自分のところに戻ってきた感じ。これ(会見)が終わったらどんなんだろうと、僕が持って帰っていいのか相談します。一晩ぐらい抱いて寝ます(笑)」

――ここに注目して観てほしいというところは?

 「今回、役者のアンサンブルがとてもうまくいったと思っている。自分なりの子どもの演出の仕方というのをこの15年ぐらいをやってきたことと、気心の知れて僕の撮りたいもの・引き出したい感情を理解して、シーンによっては演出側に回ってそういうものを引き出してくれる樹木希林さんとリリー・フランキーさんがいる。そこに新たな(安藤)サクラさんと松岡(茉優)さんとが加わって、非常にバランスの良い感じでメインの6人が集まりました。どの瞬間も皆さんのお芝居が惚れ惚れするぐらい、みんなが相手のお芝居をきちんと受けられるという状況でワンカット目から始められるという、とても監督としては恵まれた環境で撮れたというのがすごく大きかったような気がしますね。まずは役者の芝居を観ていただければと思います」

――今作の撮影が終わった後、何か手ごたえはあったんでしょうか?

 「役者さんみんな素晴らしいんですけど、先ほど話した(安藤)サクラさんの泣くシーンとかは、現場でカメラの脇で立ち会っていても『これは特別な瞬間だ』ということが何度もあったんですね。そういう色んな化学反応が現場で起きて、それはキャストだけでなくスタッフも含めてですけども、良い映画ができたのかなという実感は持っていました」

(AbamaTV/『AbemaNews』より)

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(2018年5月24日AbemaTIMESより転載)