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2018年02月22日 10時56分 JST | 更新 2018年02月22日 10時56分 JST

性暴力で妊娠、自ら中絶を試み死亡するロヒンギャ女性も…ミャンマー人の差別意識、SNSで醸成?

これまでに約65万人が隣国バングラデシュに避難している。

仏教徒の多いミャンマーで、バングラデシュからの不法移民とされ、長く差別と迫害を受けてきたイスラム系少数派のロヒンギャ。去年8月からはロヒンギャの武装勢力とミャンマー治安部隊との間で衝突が続き、事態が深刻化。国連の推定では、これまでに約65万人が隣国バングラデシュに避難している。

現地の難民キャンプで支援を行ってきた「国境なき医師団」が捉えた映像には、感染症の蔓延など、深刻な健康状態にある様子や、体中に傷を負った幼い子どもたちの姿があった。「女性はレイプされ、乳房を切り落とされている人や、首を切り落とされている人が散乱していた」と話す男性、首筋に刃物で切られた跡のような生々しい傷のある女性や「家に入った直後、私が抱っこしている子どもを強引に取り上げ、私の目の前で投げ殺した。そして私たちはレイプされた」と涙ながらに語る女性の様子もあった。

■「非常に悲惨なストーリーも数多く聞かされた」

今月15日まで現地調査を行っていた東京外国語大学講師の日下部尚徳氏は、最新の状況について「長期スパンで見ればタイ、インドネシアなどが難民キャンプを作って受け入れてきた実態がある。現在インドに4万人、パキスタンにも20万人、インド国境にも数千人いるという話もあるが、2016年以降はほとんどがミャンマーからバングラデシュに移動した。バングラデシュのキャンプは軍が治安を維持し、国境なき医師団をはじめとしたNGOや国連機関が大規模な支援を実施しているので、以前に比べると安定している印象だ」と話す。

しかし、難民キャンプの環境は劣悪だ。

「トイレ、井戸、テントなどは我々の感覚からすれば劣悪。短期間で排水設備を作るのは難しく、雨が降っただけでトイレが溢れ、汚水が垂れ流しにされている。家族全員を殺害された人や、銃で撃たれて歩けない人にもお会いし、非常に悲惨なストーリーも数多く聞かされた。ミャンマーには戻りたくないという声を多く聞く一方で、自分たちを受け入れてくれたバングラデシュ、命を守ってくれたバングラデシュ軍に対する感謝の声も聞かれた」と話す。

■SNSで誤った認識が拡散

ミャンマーの人口は5141万人で、仏教徒が9割、ビルマ族が7割だ。このうちイスラム教徒のロヒンギャは人口100万人から130万人と推定され、主に海に面した西側のラカイン州で暮らしてきた。もともとバングラデシュなどに住んでいたイスラム教徒が移り住んできたのが始まりで、「ロヒンギャ」と名乗り始めたのは旧ビルマがイギリスから独立した1950年前後と言われている。ミャンマー政府はロヒンギャに国籍を認めず、移動の自由を制限している。

ロイター通信は9日、ミャンマーの仏教徒や治安部隊が10人のロヒンギャを虐殺したとする証言や写真を報じた。こうしたロヒンギャの被害件数について、国境なき医師団は去年8月から1か月で少なくとも6700人が殺害されたとしているが、一方のミャンマー政府は約400人程度だと主張した。国際的な非難を受けながら、なぜミャンマーでは民間人や軍がこれほどまでにロヒンギャの迫害を続けるのだろうか。

「論理的なものではない。顔立ちがインド系のベンガル人であることで、ミャンマー人からすればバングラデシュの人だという意識がある。また、イスラム教徒であるということも原因だ。"イスラム教徒はたくさん子どもを産むから、いつか国を乗っ取るんじゃないか""仏教徒と結婚して無理やり改宗させる"といったことを、偉いお坊さんまでがSNSで発信している。そういうものが伝播することで誤った差別意識が生まれているように感じる。ロヒンギャを支援している日本のNGOのFacebookにも、"なぜ支援するんだ"という内容の書き込みもあった。そのため、ミャンマー軍も"このくらいのことをやっても、むしろ国民からは歓迎される"という意識があるのだろう。実際、Twitter上には"よくやった"という意見も出ている」。

■性暴力で妊娠、自ら中絶を試み死亡する人も

「家族の前で繰り返しレイプされ、家に火をつけられた、というのがほとんどの人に共通するストーリーだった」

19日に国境なき医師団が京都内で開催した報告会に出席した助産師の小島毬奈氏は、空き家に入れられ、気を失うまでレイプされた人や逃げる途中に妹が撃たれたなど目を覆うような悲惨な現状を目の当たりにした女性たちの存在を報告した。

「これまでに派遣スタッフとして何度も海外に行っているが、ここまで性被害が多いのは初めてだった。多くの女性がかなり残酷な被害に遭っている」。

しかし小島氏によると、ロヒンギャには結婚前の妊娠は一族の恥だという意識があり、多くの性暴力被害者が、その事実を口にできないままでいるのだという。また、被害者には幼い子どもたちもおり、話を聞くことが精神的に追い込んでしまう可能性もあったと、対応の難しさを訴える。

「多くの方が妊娠してしまい、中絶をしたいということで病院を訪れていた。バングラデシュでは12週までの中絶であれば法的に認められているので、本人の同意のもと実施していた。国境なき医師団としては母体の命を守るという意味で24週まで行っていた。文化的背景から、ケアを求めて自主的に病院に来るということは稀で、人目につかないよう危険な自己中絶をして、自然流産や死産をしてくる方もかなりいた。私がいた約3か月間で、母体死亡も6件あった」。

■日本はミャンマー政府に25億円あまりを支援

こうした状況を受け、去年11月にはミャンマーとバングラデシュの間で避難民の帰還に向けた合意が発表された。しかし国連特別報告者の李亮喜氏は「責任を逃れることはできない。彼女は決して民主主義と人権の女神ではなかった。彼女は政治家だったし、今でも政治家だ」とアウン・サン・スー・チー国家顧問を批判している。

日下部氏は「スー・チーさんはロヒンギャ問題に前向きに取り組んできた。しかし国家顧問とはいえ、国防省など重要な省庁の権限は持っていない。警察も軍部の下にあるので、スー・チーさんがどれだけメッセージを出してもこの問題が収束することにつながらなかった。また、ロヒンギャ支援のためには選挙で勝つ必要があるが、安易に支援を表明してしまうと、大半を占める仏教徒の支持を受けられなくなる可能性がある。結果的にロヒンギャへの支援、国家への統合が遅れてしまうと意識があるのではないか」と話す。

また、先月ミャンマーを訪れ、スー・チー氏と会談を行った河野外務大臣は「避難民の帰還は分断を作り出すのではなく、融和を進めながら細心の注意を払って進めていく必要がある」とコメント。避難民の状況改善と帰還を促すため、ミャンマー政府に対し25億円余りの支援を表明した。

明星大学の藤井靖准教授は「"ロヒンギャ"と名乗らないのならば国籍を認めてもいいというミャンマーの世論もあり、経済的援助だけでは道筋が見えないのではないか」と指摘。日下部氏も「欧米諸国がミャンマー政府にかなり厳しい態度を取る中、日本が交渉のチャンネルを残したというのは、ミャンマー政府とこの問題を解決するという意思表示だったのではないかと思う。ただ、難民の帰還のための整備に資金が使われたかどうか、きちんとモニタリングをしていく必要がある」と話す。

そして難民キャンプでの子どもたちの様子について「木材を運んだりしていて、学校にも行けていない。若い人が受けられなければ、将来、ロヒンギャのコミュニティを誰が立て直していくのかが課題になってくる」と訴えた。(AbemaTV/『AbemaPrime』より)

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