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2018年06月02日 16時40分 JST | 更新 2018年06月02日 16時42分 JST

シュールなイラストで32万人のフォロワーを魅了 Pantoviscoさんの正体に迫る(インタビュー)

『カオス絵日記』はどうやって生まれた?

"インスタ発"のクリエイターPantovisco「伝える使命も背負っているんです、勝手に」 『カオス絵日記』"先生"の正体にも言及!

You Ishii

 Instagramが公式に発表している「Instagram Statistics」によると、Instagramのデイリーユーザー数は世界に5億人、マンスリーユーザーは8億人と公表されている。さらに、ストーリーズのデイリーユーザーはそのうち3億人と、その勢いは留まることを知らない。

 そのInstagramをきっかけに、今注目を集めている人がいる。クリエイターのPantovisco(パントビスコ)さんだ。

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Pantoviscoさんは、絵日記を通じて先生や校長とのシュールなやりとりが繰り広げられる『カオス絵日記』をはじめ、『乙女に捧げるレクイエム』『ヘチタケシリーズ』『LINEシリーズ』など、表現手法を問わず、日常での気づきを面白おかしく"くだらなく"具現化。作品総数は6000点を超えており、Instagramのフォロワーは32万フォロワーを超えている。

(C) Pantovisco 2018
PantoviscoさんのInstagram

 今回はそんなユーモアなセンスでファンを増やし続けているクリエイター・Pantoviscoさんにインタビューを敢行。Instagramで作品を投稿することになった経緯を聞いた。

「もっと全世界の人が見られるように...」先輩の言葉で開けた世界

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――Pantoviscoさんは、ご自身のInstagramやTwitterに毎日イラストを投稿されていますよね。SNSに投稿しようと思ったきっかけはあったのでしょうか。

Pantovisco:よくある理由ですが、もともと趣味で絵を描くのが好きだったんです。きっかけは最初、自分のFacebookを通じて、描いたイラストを友人限定で投稿したのが始まりでした。

――まずはInstagramではなく、Facebookからだったんですね。

Pantovisco:とはいえ、今よりも若い人がFacebookを盛んに使っていた頃ですよね。今は以前ほどFacebookをやっている若い人を見かけないような気がしています。

――FacebookからInstagramに移行した経緯は?

Pantovisco:ちょうど有名人がInstagramをやり始めた時期に、僕も気になって。実際にInstagramを見てみたんです。そのときは、まだ一般的にはそこまでInstagramが浸透していない時期だった。でも、イラストをアップしたら、けっこう反応があって。

――FacebookからInstagramに投稿場所を変えてみてところ、反応に違いが出た。

Pantovisco:全く反応は違いましたね。Facebookは友人限定にしていたこともあり、200人程度にしか自分の作品を公開していなかったんです。共有ができていたのは僕のリアル友達だけ(笑)。ただ、Facebookの友人の中に、画家の先輩がいて。その先輩が「もったいないよ。もっと全世界の人が見られるようにしてみたら?」って言ってくれたんです。

それでInstagramで公開してみたら、毎日少しずつフォロワーさんが増えてきて......という展開でした。

――Instagramのサービスが出た頃は、イラストを投稿する人ってあまりいませんでしたよね。

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Pantovisco:初期のInstagramは、フィルターを使っておしゃれな風景を投稿する人が多かったじゃないですか。今も風景を投稿する人は多いですが、僕もInstagramを使い始めたのは、割と初期だったので、イラストをアップする人はかなり少なかった。

そんな中、僕がInstagramでイラストをアップすることに対して、最初は「Pantoviscoさんって変わってますね」みたいな反応だったんです。「インスタって写真を投稿する場所なのにイラストを載せちゃうんですね」みたいな。

――確かに、写真ばかりの場所でイラストがあるとかなり目立ちますよね。

Pantovisco:そうなんです。今ではもう、たくさんのイラストレーターさんがさまざまなテイストの作品をInstagramに投稿していて、1つのカテゴリーになっていますが、当時はInstagramにあまりイラストレーターさんがいなかった。物珍しさもあったかもしれません。

――Pantoviscoという名前の語源はあるのでしょうか。

Pantovisco:クリエイター名を決めるとき、世界に一人しかいない名前にしたいなと思ったんです。ネットで検索したときに自分しか出ない名前にしようって。どの語源にも属していない、ルーツのない言葉で、完全な造語です。だからPantoviscoって検索したら自分の情報しか出てこないんですよ。

――Pantoviscoさんといえば『カオス絵日記』が代表作ですが、"絵日記"というジャンルを決めた理由はありますか。

Pantovisco:実は最初、Facebookにアップしていた作品が『カオス絵日記』だったんです。小学校のとき、自分は絵が好きなのに、先生から課題として"絵日記"が出されなかった過去があって。絵が好きだったけど、小学校6年間ずっと"絵日記"を課題として出されたことがない。それがなんだか悲しくて。

大人になって、文房具屋さんを見ていたら、小学生向けの絵日記があって。「これって別に大人になって描いても面白いんじゃないかな」と思って、買ったのがきっかけですね。

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――すごい。生原画ですね。修正液の跡もある。

Pantovisco:絵日記を買ってから 1700日ぐらい続けています。

――道具へのこだわりはありますか。

Pantovisco:描いていく中で「どのような道具が使いやすいか」が自分の中で見えてきました。いつも使っているペンはあります。柔らかい表現をするときは「細いペンを使おう」って思ったり『LINEシリーズ』もフォロワーさんの中で人気があるシリーズなのですが、これはちょっと太めの筆ペンを使ったりしています。

『別れ話』 #言ってる #LINEシリーズ

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『深夜のLINE』 #途中で気が変わった #LINEシリーズ

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――筆ペンなんですね。6月8日から池袋で行う特別展「パントビスコの本当にくだらない個展」では原画などの展示もあるのでしょうか。

Pantovisco:原画も展示します。全部で1000点ほど展示する予定です。全てを原画で展示するわけではありませんが、見やすい形でお客さんに展示できたらと考えています。スマートフォンで撮影OKのスペースも多いです。小さいスマホの画面でInstagramを見るのと、壁に貼られた大きなサイズで見る展示では、感じ方が違うと思います。会場では、スマホ越しとはまた違った体感をしていただけたら。

『カオス絵日記』は「日常から生まれた」 気になる "先生"の正体は......?

――Pantoviscoさんの『カオス絵日記』といえば、"先生"のコメントも魅力的ですよね。

Pantovisco:先生は「僕ではない」んです。「僕」が鉛筆で描いて、「先生」が添削している。たまに「校長先生」が出てきたり「イブラヒム」っていうアラブ人が出てきたりして、4人で描いています。

――「先生」の添削も見どころの1つですよね。「先生」は何者なのでしょうか。

Pantovisco:「先生」は何者か。「先生」は皆さんそれぞれにあるものなのですが......今までは明かされていませんでしたが、実は6月の個展で先生の存在が明らかになります。

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――とうとう正体が明かされるんですね。気になります。

Pantovisco:個展に来た人しか、先生の正体は分かりませんよ。基本的に「写真は自由にお撮りください」というスタンスの個展ですが、映像ブースと「先生」の正体だけは撮影厳禁です。来場者に特別にお見せします。

――『カオス絵日記』のネタはどうやって思いつくのでしょうか。

Pantovisco:思いつくというよりも、主に日常の中で気がついたことですね。普通に歩いていて「面白い人がいた」「カフェにいて女子2人がこんな会話をしていた」という、その現象を記しているだけと言えばそうなります。

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――全ては日常にあったものから生まれているんですね。

Pantovisco:そうですね。だからきょろきょろして探しているというか、感じるというか......嘘はついていないんです。でも、みんなと共有をしたいから、面白く伝えようとはしています(笑)。

――先ほど、『カオス絵日記』に"登場人物が4人いる"というお話が出ました。描くときに気を付けているポイントや、絵日記の中で決めているルールはありますか?

Pantovisco:『カオス絵日記』は、本当に起こったことを毎日描いていますから、1日1枚描く行為が3〜4年続いていますね。『カオス絵日記』以外だと「やさ村やさし」という日曜日の夜に出てくるキャラクターがいて。この「やさ村やさし」は「絶対に誰も傷付けないような内容にしよう」と心がけています。

――ルールがあるんですね。『やさ村やさし』を見ると、「とうとう日曜日が終わってしまう......」という気持ちになります(笑)。

Pantovisco:僕の見解にはなるのですが、やっぱりSNSをきっかけにして自分を知ってもらえた分、SNSがきっかけで消されてしまうということもあると思うんです。SNSで炎上が起こっているときって、あえて炎上を意図しているケースもあると思いますが、意図しない炎上もあると思っていて。でも、他者として見ていると、どっちも同じ「炎上」なんです。

やっぱり僕はイラストを投稿する場を「楽しい場所にしたい」という思いがあるので、人を嫌な気持ちにさせないような作品を作って、それを見てクスッとした笑いや癒しを共有したいなと思っています。

――「ヘチタケシリーズ」も癒しを感じます。

Pantovisco:『ヘチタケシリーズ』の"ぺろち"も、新著書「ぺろちの本」として個展限定で先行発売する予定で、個展が終わってから全国発売になります。

――Pantoviscoさんは『ナデナデぺろち!』など、アプリも出していますよね。アプリも何かきっかけがあったのでしょうか。

Pantovisco:キャラクターを知ってもらえてそれが人気になると、「グッズが欲しい」や「アニメを作ってほしい」、「こういうのが欲しい」というコメントがSNSに寄せられることもあって。アプリはその要望コメントの1つでした。全ての声にお応えするのは難しいので、イラスト以外のものは、一番いい形で、自分も見てくれる人も両方楽しめるようなものを第一優先としています。

――特別展「パントビスコの本当にくだらない個展」では、どんなところが見どころですか?

Pantovisco:オリジナルのショートフィルムを上映するので、ぜひ観ていってもらいたいです。詳細は会場に来た人だけのお楽しみです。あと、新進気鋭のオンナバンド・ CHAIさんとコラボしたミュージックビデオを制作しているのですが、それを初披露します。ミュージックステーションにも出て、海外ツアーもやられているアーティストさんたちとコラボできるのはうれしいですよね。自分もエイプリルフールにふざけて歌を作ったことがあって......。

――エイプリルフールの日の投稿、見ました。名刺を見て思ったのですが、Pantoviscoさんは職業的にイラストレーターではなく、クリエイターと名乗っているんですね。

Pantovisco:はい、クリエイターと名乗っています。やっぱり自分の中には、立体物も好きだし、映像も好きだし、イラストも好きだし、音楽も好きだしという思いがあって。全てにおいて「表現するものがあれば何でもいい」というスタンスなんです。フォロワーの皆さんからすると、毎日イラストをアップしているので、イラストレーターというイメージがあるのかもしれませんが。でも、今回の個展ではそういう、もう一つ違うところに行った自分を見てもらいたいです。

"インスタ発"のクリエイターとして「伝える使命も背負っているんです、勝手に」

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――個展の開催が近づいてきましたが、何か今考えていることはありますか。個展開催への思いがあればおうかがいしたいです。

Pantovisco:Instagramでイラストを投稿し続けた、そこで名前を知ってもらえたクリエイターが池袋PARCOでこの規模の個展をやる......これってありがたいことに、日本人で初めてのことだと思っているんです。

――写真家さんなど、小規模で展示会を行っている人はたまにいらっしゃいますが、イラストレーターさんでは珍しいかもしれませんね。

Pantovisco:自分はInstagramを通じて活動することで、個展の話までいただいて、"夢があるな"って思ったんですよ。Instagram発のクリエイターを代表してっていうと、すごくおこがましいのですが......。

ただ毎日コソコソとイラストを5枚から6枚ほど描いていた人間が、その2年か3年後にはPARCOで個展ができるようになった。夢があるし「真似したい!」と思ったクリエイターが、勇気づけられると思うんです。

——ITの進歩によって、Instagramというアプリが出て......世界に作品が広がりやすくなりましたよね。ネットがなかった頃には考えられなかったような。

Pantovisco:自分は『Instagramってすごいんだよ!』と伝える使命も背負っているんですよ。勝手に(笑)。"Instagram発"という表現は、薄っぺらくも見えるかもしれないけれど、逆にカルチャーとも取れると思っています。Instagramからは恩恵を受けていますし、こういう見え方はやっぱりされるだろうなって。

SNSの台頭という話も出ましたが、これはSNSが市民権を得てきている証拠だと僕は思っていて。以前のSNS、mixiやブログしかなかった時代ですよね。おそらくその当時、SNSを一大勢力だと世間で認識している人は少なかった。今は本当にSNSが底上げされているように感じています。スマホから見られるメディアの影響力が強くなって、文化が日々変わってきている。

――TwitterやInstagramなど、短くて絵で見せられるものは"いいね!"を集めやすいですよね。

Pantovisco:自分はたまたま運が良く、そこにハマったのかもしれません。さらに、ありがたいことにサポートしてくれる人や、ファンの人が一緒になって盛り上げてくれる。すごく面白いなと思います。"ワールド・ワイド・ウェブ"なので、会ったことがなくてもネット越しに実際に応援してくれるじゃないですか。アメリカの人が「いつも見てます」って言ってくれたり、海外のフォロワーさんが「ぬいぐるみ買いました」って言ってくれたり。

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――イラストとインターネットの力で言葉の壁を越えていける。活動の中で、ファンに作品をどのように受け取ってもらいたいか、考えていることはありますか。

Pantovisco:普段、仕事や勉強に力を入れたり、家事をやったり、人って「ああ疲れた」と思う瞬間があると思います。癒やしを求めてInstagramをする人も多いと思うんです。

自分がファンの方に伝えたいことは、最初から一貫していて。"癒し"という表現だと、少しおこがましいかもしれませんが、日常の中でリラックスできたり、イラストを見てクスッと笑ってくれたり。ホッと一息してもらえるようなものをスマホを通じて伝えられたらうれしいです。

「疲れたからこういう海に行きたいな」って思っても、すぐに海に行ける人ってあまりいないじゃないですか。「リフレッシュしたいから明日ハワイ行こう」って思っても、普通の人は簡単にすぐには行けない。でも、最も身近に感じられる"非日常"ってスマホにあると思うんです。

――スマホという身近な"非日常"にこそ価値がある。

Pantovisco:本当、気持ちの振れ幅でいうと、もう0.1ミリでいいんです。0.1ミリだけでも「この絵を見たらちょっと楽しい気分になった」「こういう考え方があるんだ、楽しいな」って。そう思ってもらいたい。だから、大爆笑してくれることを望んだり、グッズを買って欲しいって思ったりという気持ちは一切ないんです。ふと、自分の絵を見た人が、ほっこりしていただければ。

――貴重なお話ありがとうございました。これからの活動も応援しています。

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【プロフィール】

Pantovisco(パントビスコ):マルチクリエーター。Instagramでの作品投稿が話題となり、現在のフォロワーは約32万人超。代表的なシリーズに「カオス絵日記」「乙女に捧げるレクイエム」「ヘチタケシリーズ」などがあり、作品総数は6000点を超える。現在は「smart」「VOCE」「ViVi」「Numero TOKYO」など約10媒体で連載を持ち、表現方法にはとらわれず活動の幅を広げている。

(2018年6月2日AbemaTIMES「"インスタ発"のクリエイターPantovisco 話題の『カオス絵日記』はこうして生まれた」より転載)