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2018年04月28日 15時18分 JST | 更新 2018年04月28日 15時20分 JST

半数以上「外国ルーツ」の子どもがいる学校も 教育現場のいま

十数カ国のルーツを持つ児童が通っている学校も

AbemaTIMES

 国内の深刻な人手不足を担うため、政府は外国人労働者の受け入れを来年にも拡大する方針だ。そんな中、親と一緒に来日する子どもたちが増加傾向にある。彼らの未来を担う教育現場を『けやきヒルズ』(AbemaTV)は取材した。

 訪れたのは、神奈川県横浜市にある南吉田小学校。全校児童744人のうち半数以上が"外国にルーツを持つ"児童だ。中華街からほど近いこのエリアは比較的家賃が安く、住環境も良いことから多くの外国人が暮らしている。

 外国にルーツを持つ子どもとは、両親またはそのどちらかが外国出身者である子どものこと。南吉田小学校には中国や韓国、フィリピンなどアジアを中心に十数カ国のルーツを持つ児童が通っている。多国籍なクラスメイトについて、ある日本人の児童は「結構楽しい。外国の人でも楽しく遊べるところとか、その国の言葉が喋れるようになることとか。日本語が喋れない子がいると僕が教えなきゃいけないな(と思う)」と話す。

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 今年も128人の新入生が南吉田小学校に入学したが、このうち半数以上が外国ルーツの子どもたち。文部科学省の調査によると、日本語指導が必要な児童・生徒は全国に4万4千人近くいるという。

 日本で働く両親の後を追って去年来日したのは、中国出身の林紹祺(りん・しょうき)くん、10歳。それまで中国で祖父母と暮らしていた。

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 去年8月、新学期スタートを翌週に控え行われた編入生向けの説明会。防災頭巾などの準備について説明を受ける中、林くんの母親は「中国だとこんなに用意する必要がないから大変ね」と話す。

 9月に入り、いよいよ迎えた初登校の日。みんなの前で自己紹介をする際、緊張のせいか大きな声で名前を言えない林くん。着席後、前の席に座る日本人の女の子は林くんを助けてあげようとするが、「私じゃ(言葉が)通じないんだ」と林くんの隣の席の智輝くんに言葉を訳してもらう。智輝くんは日本と中国のいわゆるハーフ。一昨年来日し、1年間であっという間に日本語を覚えたという。

 日本語がうまく話せない児童は国際教室で初歩指導を受ける。日本語のレベルにもよるが、なかには毎日通う児童もいる。林くんもここで勉強や食事マナーを教わることに。

 南吉田小学校の藤本哲夫校長は「ここは元々人情味のある下町ですから。人と人とのつながりが濃いところに、新しい外国の方々がたくさん入って来られた。そうすると、そこでいろんな軋轢も生まれるでしょうし、コミュニケーションもなかなかうまくいかない」と話す。

 懸念を示すには理由があった。地元の子育て世代から「学力の問題が心配なので引っ越ししようかなと。(子どもに)学力をやっぱり身に付けてもらいたいので」と心配する声が上がっていたのだ。

 7年前の赴任当初、藤本校長は学校の状況にショックを受けたという。「学校中に日本語が分からない子たちが溢れている状態で。日本人の保護者も来たんですよ。『校長先生、この学校は課題がいくつかあると思うけども、ぜひ逃げないで』って言われちゃったんです」

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 教育委員会に何度も足を運び、学校の環境を改善するため粘り強く交渉を続けた結果、当時2名しかいなかった国際教室の教員も今では8名に増えた。藤本校長の努力が実り、日本人の保護者からは支持する声も。

「保育園も半分くらい外国のお子さんなので。もういるものだと思って子どもたちは接している」

「(授業のスピードは)言葉が分かってからは結構順調にいくのでそんなに心配ないです」

 運動会も一味違い、児童自ら6カ国語でプログラムを放送。各国の民族衣装を着た聖火ランナーが火を繋ぎ聖火台に火を灯すと、「南吉田小学校にはたくさんの国に繋がる仲間がいます」というアナウンスが流れる。林くんも「がんばれー」と日本語で力強く応援。

 林くん、時には母国が恋しくなるようで「(一時帰国から)日本に戻ってくると寂しいよ。(中国で)一緒にサッカーしていた友達に会いたいんだ。足をけがしたみたいなんだよ」と寂しさを漏らすことも。それでも、「日本の友達ができた。クラスでは智輝と仲良いよ」と新しい環境に慣れようと努力していた。

 4月、新学期のスタートを迎えた林くん。そこには国語の授業にもだいぶついていけるようになった彼の姿があった。

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 藤本校長は南吉田小学校の魅力をこう語る。

 「自分の席の隣に言葉が通じない友達がぱっと座る。そういう時に、そういう子のことを考えながら自分が出来る方法で何とかコミュニケーションをとろうとする。グローバルな視点を持った子ども達にやがて育っていく。そういうチャンスが日常に転がっている」

 今回南吉田小学校を取材した徳永有美キャスターは、林くんの担任の先生にも話を聞いたと言い、「高学年になって例えば揉め事があった時に、日本語以外で揉めていると原因を把握することから大変だと仰っていた。先生が分からない分、逆に子ども達が対処していくわけで、この学校だからこそみんなで助け合いの気持ちが芽生えると思った」と話す。

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 一方、地元の子育て世代から意見が出たように、不安視する声もあるのが学力の問題。それについて徳永キャスターは「気持ちはよくわかるが、南吉田小学校はそれに対応してカリキュラムを組んでいる」と説明し、「それ以上に得られるものがあるんじゃないかと。子どもは国とか立場を越えて目の前にいる1人の人間と向き合おうとする。出身とか境遇を越えて"何者でもない"存在の中からコミュニケーションを築こうとする。大人になって、この経験は豊かな土壌になるんじゃないか」と考えを述べた。

 ハフポスト日本版編集長の竹下隆一郎氏もこれに賛同し「狭い意味で考えたら普通の日本の学校とは違うかもしれないが、それ以上のことを学んでいると思う。通じ合えないかもしれないが、なんとか理解しようとか相手の言葉を聞こうという姿勢がエネルギーとなっているのが感じられる」と学校全体から伝わってくる印象を語った。

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 また、小学校・中学校とアメリカの教育を受けてきた経験から「林くんの気持ちが痛いほどわかる。小学校の時に、他の子がピーナッツバターサンドやサンドイッチを持ってくる中、おにぎりを持って行ったら『何で米の周りに黒い紙を巻いているんだ』と集まってきて、おにぎり1つで全然文化が違うんだと思った」と振り返った。

 林くんの母親が「中国だとこんなに用意する必要がないから」と話すシーンがあったが、竹下氏は子どもの当時から日本の細かいルールには疑問があったといい「日本に戻ってくると『鉛筆はHB・2Bを使ってください』『これぐらいの大きさの雑巾を用意してください』とたくさんルールがあって、当時から疑問に思っていた。外国にルーツを持つ子ども達と過ごしていると、細かいところはなおさら伝わらない。だったらそれを一旦置いておいて、より大きな大切なルールに集中しようという声が現場から生まれてくると、日本の学校のルールとか広くいえば社会、慣習を見直す機会になるのではないか」と考えを述べるとともに疑問を呈した。

(AbemaTV/『けやきヒルズ』より)

▶︎放送済み『けやきヒルズ』の映像は期間限定で無料視聴が可能。

(2018年4月27日AbemaTIMES『増える「外国ルーツ」の子ども 教育現場のいま』より転載)