政治
2018年09月27日 11時05分 JST | 更新 2018年09月27日 11時05分 JST

「休刊するのは逃げ」『新潮45』に寄稿した松浦大悟氏がLGBT当事者として感じるディスコミュニケーション

「私はまずLGBTなどの英語をやめて"性的少数者"にすればいいのではないかと主張している」と説明。

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 新潮社が25日、公式サイトで『新潮45』の"休刊"を発表した。同日放送のAbemaTV『AbemaPrime』では、同誌10月号の特集企画『そんなにおかしいか「杉田水脈」論文』に寄稿した7人のうちの1人、松浦大悟・元参議院議員に話を聞いた。

 自身もゲイであることをカミングアウトしている松浦氏は、事実上の"廃刊"とみられる今回の判断について「残念だ。LGBTから抗議を受けたからといって休刊するのは逃げだと思う。蓋をして終わりにして、差別の解消になると言えるのだろうか。やはり言論には言論で、正面から議論すべきだったと思う」と話す。

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 その上で、特集企画に寄稿したことついて「依頼を頂いた時に言われたのは、"杉田発言に対する意見を書いてください"ということ。編集権は編集部にあるので、タイトル(「特権ではなく『フェアな社会』を求む」)も編集部がつけたもの。こういう特集になることは知らなかった。後で編集長に聞いた話では、リベラル系の学者にも声をかけたが、断られたということだった。色々な人に声をかけたが書いてもらえず、蓋を開けてみたらああいうメンバーになっていたというのが実情だと思う。私はリベラル派の人こそ書いて、『新潮45』の読者に言葉を届けないといけなかったと思う。そこから逃げて、自分たちのテリトリーの中で"杉田議員ってひどいよね""そうだよね"と言い合って溜飲を下げているだけでどうするんだと。それではコミュニケーションが全然取れないではないか」とした。

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 寄稿の中で「杉田水脈議員への過度なバッシングに疑問を感じています」「私が(杉田論文を)読んで最初に感じたのは"ああ、この方はある層の気持ちを代弁しているのだな』ということでした。あまりにも変革のスピードが速すぎると、人間の感情はついていけません。地方に住む多くの高齢者はLGBTという新しい概念に戸惑っています」と書いている松浦氏。

 この点については「あまりにバッシングが激し過ぎると、人は心を閉ざしてしまい、対話のシャッターも閉じられてしまう。やっぱり分かってもらわないといけないわけだから、何とか対話の糸口を見つけていこうとすべきだ」とし、「特別なことを言っているわけではなくて、多くの人の気持ち、特に地方の高齢者の声を代弁しているんだろうな、と素直に思った。地方のおじいちゃん、おばあちゃんは世の中の動きが速すぎてついていけない。グローバル化で都会は街が変わり、外国人もどんどん増えていく。そうした中で、自分が今まで培ってきた価値観が壊されるような不安を感じていて、LGBTに関しても警戒感を持っている。当事者から十分な説明がされていないからディスコミュニケーションになってしまっているし、ゲイという言葉だって分からないくらいなんだから、私はまずLGBTなどの英語をやめて"性的少数者"にすればいいのではないかと主張している」と説明。「高齢者の皆様が生きてきた過程の中では限界がある。私は広島県出身だが、秋田放送のアナウンサーをしていたので、政治家としての地元は秋田県。支援してくれるおじいちゃんは、"松浦はよ、病気だから、障がい者だから仕方ねえべ"と言って、周りのおじいちゃんたちを説得してくれるが、私はこれを差別だとは感じていない。LGBTの人たちは"自分たちのことを理解して欲しい"と言うけれど、じゃああなた達はそういう高齢者のことを理解しているのか」と主張した。

「私たちの等身大の姿が伝わっていない」

 『新潮45』の杉田論文をめぐっては、自民党本部前では多くのLGBT支援団体が大規模なデモを行ったほか、10号発売後には新潮社の書籍の扱いを取りやめる書店が現れ、消費者の間では不買運動も起こった。23日には新潮社の看板への落書きも発見された。

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 松浦氏は寄稿の中で「多くのLGBT当事者から『なぜ、反天皇制や安倍総理退陣のプラカードを掲げるのか?』『差別発言に抗議したいが、保守の自分はこれでは参加できない』との声が上がっていたことは意外にも知られていません」と指摘している。

 「反天皇制や安倍政権打倒のプラカードを持っている人もいらっしゃって、LGBTの運動にもイデオロギーがかなり入り込んでいると感じている。ある時期からは野党も顔を出すようになって、国会前デモのような形が幅をきかせるようになってきている。私が先輩方に"昔からLGBTのパレードはこのような形だったのか"と尋ねると、"昔は違った"と言っていた。知人に"これだけは言ってくれ"と言われたのは、デモに参加している人たちがLGBTの全体を代表しているわけではないということ。メディアがバイアスのかかった報道をしているせいで、私たちの等身大の姿が伝わっていないと思っている。電通の調査では、日本の人口の7.6%、つまり961万人ががLGBTだ。その人たちのほとんどはカミングアウトせずに働いている社会人で、生活を第一に考えている保守だ」。

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 視聴者からは「LGBT当事者です。個人的には"生産性"の議論については怒っていない。ただ、"支援の度が過ぎる"という表現によって、支援されているかのように誤解が生じている。私も税金は子どもたちのために使ってほしいと思う。ただ、LGBTも納税していることを忘れていないでしょうか」「廃刊の次は離党を求める過激な人たち。多様性を認めろと言いながら、自分たち以外の意見に対しては暴力的なやり方で封じ込める」「議論をしない、悪役を見つけて叩くだけ叩く、自分と違う意見は受け入れない、想像で決めつける。いつから議論のできない社会になったのか」と言ったコメントが寄せられていた。

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 スタジオでの議論を受け、イラストエッセイストの犬山紙子氏は「杉田議員の書いたことが、"言論の自由"の中で考えられるものだったのか、人を傷つけてしまうヘイトだったのかで見方が大きく違ってくると思うが、そこがグレーになっている」と指摘。慶應義塾大学の若新雄純・特任准教授は「日本ではここ数年、"多様性"や"ダイバーシティ"という言葉が流行っていて、"お互いを認め合って一緒になろう"という認識が広がっているが、アメリカでのダイバーシティは民族や宗教が違う人たち同士が全く理解しあえなかったことから、"一緒だよね"ではなく"違うんだよね"という前提のもとに共存しようというのが出発点だった。それなのに日本では次第に"違わないよ。一緒だよ"といって問題が曖昧になっていった。そうではなく、"こんなに違う"ということから丁寧に話し、お互いの幸せがどういうものなのかを議論すべきだ。"おじいちゃん、おばあちゃんが受け入れられないのは差別"ではなくて、なぜそこに差があるのか、ということから丁寧に話すべきだ」とコメントしていた。

(AbemaTV/『AbemaPrime』より)

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