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2018年06月03日 14時27分 JST | 更新 2018年06月03日 14時27分 JST

「喫煙者は採用致しておりません」喫煙者お断り企業は「差別」?

諸外国に比べ、日本の規制は緩い方だという見方もあるが...

AbemaTIMES

 「においが苦手で、正直言うと分煙になっていくのはうれしい」。

 世界禁煙デーだった5月31日、たばこの自動販売機が撤去された厚労省で、「受動喫煙対策推進キャラクター」の岡田結実さんが喫煙の危険性を訴えた。

 日本人では20歳より前に喫煙を始めると、男性は8年、女性は10年も寿命が短縮すると言われている。また、喫煙者が喉頭がんになる確率は非喫煙者の5.5倍、肺がんでは4.8倍。さらに脳卒中と心筋梗塞の原因にもなるといわれており、受動喫煙でも肺ガン・脳卒中が1.3倍、乳幼児突然死症候群4.7倍など、喫煙に対して否定的な理由の第一に健康リスクがに挙げられる。また、煙や匂い、歩きたばこの危険性、時間を浪費しているという推計データなど、ネガティブなイメージもつきまとう。

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 JTの調べによると、50年ほど前の男性の喫煙率が80%を超えていた日本。会社の中でも喫煙は自由で、会議中の喫煙は当たり前。いつも灰皿は吸殻でいっぱいだった。公共交通機関もおおらかで、旧国鉄時代はホーム上はもちろん、新幹線でも全席で喫煙が可能だったが、去年3月のダイヤ改正でついに新幹線から喫煙車両は姿を消した。日本航空も、喫煙席と禁煙席に分け、カーテンで区切っていたのを1998年9月までに廃止した。

  そんな規制ムードも関係してか、喫煙率は年々下がり続け、去年は男女合わせて18.2%まで減少。近年では、喫煙者の採用を取りやめる企業も現れるようになった。

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 「体にいいことは何でもやれ、悪いことはやるなという会長の意向がある。その結果、在職中に病気で亡くなった方はほとんどおられません」。岐阜県の化学薬品メーカー「セラツクグループ」では、創業者と親しい人が肺を患い死亡したことを機に、50年ほど前から禁煙を推奨、10年ほど前からは採用条件に"非喫煙者"であることを追加した。採用情報ページでは、いきなり喫煙の有無を問われ、「喫煙」を選択すると「喫煙者は採用致しておりません」と、同社の考え方を詳しく説明したページが表示される。

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 喫煙の有無が選考基準になることについて、田上嘉一弁護士は「企業が誰と労働契約をするか、誰とは労働契約を締結しないかは、基本的に企業の自由なので、法的には問題ない」と話すが、喫煙者"排除"が行き過ぎているのではないか、喫煙者への差別に当たるのでは、といった意見もある。

 31日放送のAbemaTV『AbemaPrime』に出演した"喫煙歴36年"の愛煙家、ジャーナリストの山路徹氏は「僕にはたばこを吸う権利があると思っているし、吸わないという選択をした人に"吸うな"という権利はないと思う。ある意味で価値観の多様性の否定だし、趣味嗜好に介入するのは待ってよと思う。喫煙者を採用しないということは、24時間吸っちゃいけないという事。家で吸って会社で吸わない人も採用されないということは、喫煙者というだけでその人が全否定されているようなものだ。僕は身体に悪くても、心に良いことをしたい。匂いのことを言われると何も言い返せないが、街を歩いてると、すれちがっただけで香水の匂いがすごい人もいる。たばことお酒を一緒にしていいかどうかはわからないが、酒には健康を害する可能性があるだけでなく、酔って暴れたり、人に迷惑を掛ける人もいる。たばこは犯罪にはつながらないが、酒はつながる」と訴える。

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 また、喫煙は悪いこと、という空気を払拭するため、倉本聰氏や北方謙三氏、養老孟司氏といった文化人らで作る「喫煙文化研究会」では、「禁煙ファシズムに物申す」としてたばこへの熱い思いを綴っている。

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 「昔はたばこが"かっこいい大人"の象徴で、テレビCMも流れていた。ドラマなどでも喫煙の描写がなくなり、そもそも若者が憧れるきっかけも少なくなってしまった。たばこを"かっこいいツールだと思っている人はあまりいないのではないか」と話すふかわりょうは、「喫煙者の敵は嫌煙家ではなく、ポイ捨てをするようなマナーの悪い喫煙者だと思う。その対策をしていかないと、"多数決"の差は開いていく一方だ」と指摘。山路氏が「ここが一番大事な点で、社会の中で共生できればいい。ある時、新幹線の喫煙席で隣に座った老夫婦の奥さんが、僕がたばこを取り出すと咳払いした。僕はご夫婦に気持ち良く旅してほしいなと思ったから、吸うのを我慢した。やっぱりマナーの問題だ。お互い人間同士、尊重しあえば解決すると思う」と応じると、石井てる美は「そうは言っても、飲み会で"吸っても平気?"と聞かれて断るのは気まずいという人が多いのではないか」と指摘していた。

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 ただ、諸外国に比べ、日本の規制は緩い方だという見方もある。186か国中、8つの公衆の場(医療施設、大学以外の学校、大学、行政機関、事業所、飲食店、バー、公共交通機関)の屋内における全面禁煙義務を課す法律があるのは55か国にのぼる。ヨーロッパでは国法や州法で受動喫煙防止法が定められ、公共施設などの屋内はすべて禁煙、バスなどの公共交通機関も禁煙の国が多い。また、ロシアでは自家用車が禁煙、オランダ・アイルランドでは、公共スペースでの喫煙の罰金は最大40万円に達する。

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 未だそうした法律はない日本でも、東京都千代田区での路上禁煙(2002年)を皮切りに自治体レベルでは対策が進み、路上喫煙禁止条例は現在全国243の市区町村で定められている。それだけでなく、38道府県が庁舎内を完全禁煙、15府県が議会の禁煙にしている。東京都では今年4月に「東京都子どもを受動喫煙から守る条例」が施行され、さらに従業員のいる飲食店を全面禁煙とする条例案も検討されている。

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 しかし、たばこの価格の6割は税金で、430円の商品の場合、実に276.73円が「国たばこ税」「地方たばこ税」「たばこ特別税」「消費税」として徴収されている。山路氏は「歳入の少ない行政にとって、たばこは安定財源。急激に値上げすると離れてしまう人もいるので、段階的に上げてきた歴史もある。"税金は払ってください、でも館内では吸わせません"というのは違和感もある」と話していた。(AbemaTV/『AbemaPrime』より)

(2018年6月3日AbemaTIMES『喫煙者を採用しない企業も登場、それでも日本は"たばこ規制"後進国?』より転載)