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2018年04月06日 09時52分 JST | 更新 2018年04月06日 10時07分 JST

鳴り響く銃声に爆撃音、額から流れる血 シリアの惨状を伝える幼き姉妹の“命がけツイート”

ヌールちゃんとアラちゃん姉妹は、自分たちの現状を世界に伝えようと、英語教師のお母さんの協力のもとTwitterを始めた。

7年前から今も続くシリア内戦。日本ではあまり大きく報じられない現状の中、スマホを使って命がけでシリア国内の惨状を伝えようとする姉妹がいる。

「私の名前はアラ、8歳です。自己紹介します」

「私の名前はヌール、10歳です。シリアの東グータに住んでいます」

トランプ大統領が初来日し、日本のテレビがトランプ氏一色だった去年11月。シリア・東グータ地区に住むヌールちゃんとアラちゃん姉妹は、自分たちの現状を世界に伝えようと、英語教師のお母さんの協力のもとTwitterを始めた。

「こんにちは、アラとヌールの母です。この建物は3カ月前に爆撃を受けました。このフロア住んでいた隣人は2人の友達でした。共に遊び食事をし、一緒に学校に通いました」(2017年11月12日)

アサド父子2代にわたって、40年あまり独裁支配が続くシリア。2011年、この国でも「アラブの春」の流れを汲んで独裁に反発するデモが拡大、内戦が始まった。アサド政権側をロシアやイランが支援し、それに反対する勢力をアメリカやサウジアラビアが支援。そこに過激派組織イスラム国(IS)も登場したことで、内戦は泥沼化していった。シリア人権観測所によると、2011年3月からの死者は35万人で、うち1万9000人以上が子どもだという。

ヌールちゃんアラちゃん家族が住む東グータ地区は首都ダマスカス近郊に位置し、反政府勢力の拠点となっていた。アサド政権側との間で激しい戦闘が続き、「この世の地獄」とも呼ばれた。

「冬になり東グータは寒くなってきました。子供たちは食べるものも電気もありません」(2017年12月12日)

激しい戦闘のさなか、姉妹はまるでテレビ局のリポーターのように東グータ地区の惨状や人々の生活ぶりをスマホで撮影し、ほぼ毎日Twitterを通して世界中に伝えた。2月に入って投稿された動画では、彼女たちの頭上でも爆撃音が響く。

2月22日、世界が平昌オリンピックに盛り上がっていたころ、姉妹が「神様どうか助けてください」というメッセージと共にツイートした動画には、額に怪我をしてお母さんに泣きつくアラちゃんの姿や粉塵にまみれた部屋、散乱した窓ガラス、家具が映されていた。

「昨日は困難な日でした。戦闘機が私たちの住むビルを破壊しました」(2月23日)

この日から、姉妹は世界中の政治家に対してもメッセージを送るようになった。

「ヘイリー米国連大使さん、毎日爆撃が続きいつも死と向き合っています。どうか東グータの子どもたちを助けてください」(3月7日)

「こんにちは、スウェーデン、クウェートの国連大使、そしてヘイリー国連大使さん。昨日、数百人の一般市民が怪我をしたり亡くなりました」(3月14日)

姉妹は「あなたがスマホで見ている映像は、ここで実際に起こっていることなのです」と日々訴え続けた。

3月25日の動画では、突如聞こえた銃声に怯えるアラちゃんと、もはや銃撃の音に反応しなくなってしまった姉のヌーラちゃんの姿が。それでも姉妹はめげることなく、自分たちの現状を今も発信し続けている。

ほかにも、シリア市民の中にはスマホを武器に"圧政"と戦う人々がいる。

北部の街ラッカは、突然現れたシスラム国により占拠された。公開処刑など恐怖による支配が町を覆うなか、徹底した情報統制により外との連絡は遮断され、当初、その惨状を世界は知ることができなかった。

それに立ち上がったのが、元学生や元教師などで構成される市民ジャーナリスト団体「RBSS(Raqqa is Being Slaughtered Silently)~ラッカは静かに虐殺されている~」。彼らを追ったドキュメンタリーは、世界各国の映画賞にノミネートされている。

RBSSのTwitterに投稿されている動画や画像の多くは、ラッカで密かに行動している市民記者達が命がけで撮ったものだ。多くの記者や仲間がISに拘束され、殺害され、それでも"平穏な街を取り戻すため"に今日もSNSの更新を続けている。

専門家は「シリア内戦は情報戦」だとしたうえで、これらの市民からの悲痛な投稿に紛れて、プロパガンダが潜んでいることもあると指摘する。

「常にシリアの紛争は子どもがきっかけになっている。子どもをある種、アイコンというかシンボルというか利用する形で、自らの正当性を主張したり他者を貶めようとしてきた。ありとあらゆる情報が政治的な色を帯びていると言えるんだと思う。ただ、その背後には必ず現実がある。子どもたちがメッセージを発している現実として何があるのかというと、シリア政府によって数年に渡って事実上の包囲を受けていて、彼らの生活がひっ迫している。政治的な色を排して、困っている人にどういう風に向き合うことができるのかということを考えるかが必要なんだと思う」(東京外国語大学の青山弘之教授)

なお、今月2日にアサド政権が東グータ地区をほぼ奪還。その後、ヌールちゃんアラちゃん姉妹は反体制派の最後の砦であるイドリブ県に移ったが、今はバスでトルコに移動し安全な環境にいるという。

これまで、報道などメディアを通じてでしか得られなかった戦地などの情報。それが今や、スマホやネットで直接訴えられる・情報を得られる環境になったことに対し、ハフポスト日本版編集長の竹下隆一郎氏は「凄い時代。なかなかテレビカメラが入れない現場を生々しい映像という形で知れるのは、ポジティブに言えばテクノロジーの凄さ」とコメント。

一方で、このような映像をネットで見る機会は増えていると指摘し「段々ニュースを報じていくにつれて、いわゆる"悲しい動画"に慣れてしまった読者も増えて、"悲しい動画のインフレ"が起きている。ネットで情報が取りやすくなった分、拡散するスピードも早いので消費されてしまい、次の刺激的な映像が求められてしまう。SNSで"いいね"を押したり意見を書き込んだりしただけで何かをした気持ちになって、また次の問題に関心が移る...と悲劇が消費されていくネガティブな面もある」と懸念した。

またもう一つジレンマがあると竹下氏は指摘する。

「こういうニュースを扱うと意識高い系でしょ、いい子ぶったように見られてしまうというジレンマがある。あまりに国際ニュースが多いためもあるが、反発する気持ち、なにかの価値観を押し付けられているという複雑な心境が読者に生まれるのを感じる。日本でシリアのニュースが伝えられないのはそういう背景もあると思う。メディアが、遠く離れた地域の悲劇をどう伝えるべきかに気を配ることはとても大事だと思う」

(AbemaTV/『けやきヒルズ』より)

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