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2017年12月21日 10時29分 JST | 更新 2017年12月21日 10時29分 JST

国の“イメージ大使”から上野の“シンボル”へ、シャンシャン公開で振り返るパンダ来日45年史

赤ちゃんパンダ「シャンシャン」の展示公開で上野はパンダ一色になっている。

赤ちゃんパンダ「シャンシャン」の展示公開で上野はパンダ一色になっている。1972年にパンダを中国から初めて迎え入れた上野もこんな大騒ぎだったのだろうか。『けやきヒル'sNEWS』(AbemaTV)では、そんなパンダの"来日45年史"を振り返った。

上野で生まれ育ち、いま上野観光連盟の事務総長を務める茅野雅弘さんは、パンダのために1972年9月に開いたという上野動物園の旧正門前でこう振り返る。「動物園の中からはもちろんのこと、正門からずーっと流れてUターンして列ができていた」。当時、徹夜組みを含め初日に3000人の大行列ができた。

■パンダは"イメージ大使"、田中角栄の造語「人寄せパンダ」は流行語にも

1972年2月、アメリカのニクソン大統領が電撃的に中国を訪問。寝耳に水の日本政府に衝撃が走るなか、同月、パンダは親善大使としてすぐさま中国からアメリカへ贈呈された。7月、総理大臣に就任した田中角栄は中国との国交正常化を急ピッチで進め、ニクソン大統領訪中の半年後となる9月に北京の地を踏む。そして、日中国交正常化と同時にアメリカと同じようにパンダの贈呈が決まった。

『国宝の政治史』(東京大学出版会)を出版した東京医科歯科大学の家永真幸准教授は、パンダを"イメージ大使"と名付けこう分析する。「日中国交正常化のためには台湾とも断交しなければならなかった。日本がいろいろ失わなければならないこともあったので、そういったタイミングでパンダが来たということを大々的に報道してもらえれば、日中間の成果が上がったという表面的な印象を取り繕える」。

そのイメージ作りはすこぶる成功に見え、後に田中角栄の造語といわれる言葉「人寄せパンダ」は流行語にもなった。

パンダが来日してすぐ、パンダに象徴された日中友好ムードのなか、田中角栄は外交成果を謳い衆議院解散に踏み切る。「日中解散」と名付けられた1972年11月の解散は、巷では"パンダ解散"とも揶揄された。

■白熊のバルーンを白黒に塗り替え街は"パンダ一色"

霞ヶ関でイメージ作りに利用された中国のパンダだが、動物園お膝元の上野の街を大きく、長く沸かせることになる。

「(1972年当時)人はすごくいっぱい出てきたというのは非常に覚えている」と上野観光連盟の事務総長・茅野さんが振り返る。空に浮かぶパンダバルーンや中国語で「熱烈歓迎」が書かれた巨大なパンダオブジェ、子どもが着けるパンダの紙帽子と、上野はパンダ一色だった。

「パンダがやってくるのは突然だったから、とても(グッズを)作ることができなくて。急きょ白熊のバルーンを白黒に塗り替えて慌ててパンダ柄にして展示したり、だっこちゃん人形みたいなものも白黒に塗り替えてパンダの人形に変えてみたり」と茅野さん。急ごしらえだったにも関わらず、その効果は抜群だったようだ。

そのパンダは話題を無くすことなく、1986年12月に上野動物園で赤ちゃんパンダが初めて展示された時、松坂屋上野店では10万円の大きな人形が売れていた。

しかし、2008年のリンリンの死で上野はパンダ不在の街となる。時の東京都知事は、大の中国嫌いで知られる石原慎太郎氏。「別にそれほどみんな大泣きして悲しむことはないじゃない。何もパンダ様々でご神体ではないんだから、いてもいなくもいいじゃない。そんなものはどうでも」と記者会見でそう話したが、リンリンが死ぬ1年前とその後では、上野からお客さん15%ぐらい減ってしまった。

上野にとってパンダは本当に"神様"だったのかもしれない。

■「パンダといえば上野、上野といえばパンダ」

2011年4月、「リーリー」と「シンシン」が公開され、パンダが帰ってきた上野には、再び大行列と大賑わいが戻ってきた。

茅野さんはシャンシャンの誕生で活気付く街に、パンダ初来日と匹敵するブームを予感したという。「街のみんなもそれだけ大喜びしているということでもあるし、それからお客さんもそれだけ増えているし、街に与える影響はものすごく大きい」。

パンダはすっかり中国の色から脱皮し"上野のパンダ"となった。上野の老舗料理店・精養軒はパンダのめでたいニュースが出るたびに株価が急騰し、"パンダ銘柄"と呼ばれている。そして、11月のリニューアルオープンとシャンシャンの公開が近かった松坂屋上野店は、「上野案内所」を店内に設け、パンダを前面に押し出している。

上野商店街の象徴・アメ横で「ご当地ですから、ちゃんとわきまえてアピールしないと」と話すのは伊勢音の代表取締役・山崎好茂さん。店頭に並ぶシャンシャンの名前入りのオリジナル商品は、名前の発表当日にニュースの速報を聞くなりデザインを仕上げ、午後2時の公式発表よりも早かったという。180年あまりの歴史を持つ老舗の商品は、今はなんでもシャンシャンとパンダで、「(パンダは)人々の気持ちを和らげて明るくする動物。商売もそれにあやかるような形で、元気よく楽しくやっていきたい」と山崎さんは語った。公開前でまだ観覧ができない状況でも、シャンシャンの誕生後お客さんが1割ほど増えたという。

伊勢音だけでなく、アメ横全体もゴルフボールに洋服、海鮮までパンダで埋め尽くされている。「パンダといえば上野、上野といえばパンダ」と上野観光連盟の事務総長・茅野さんはそう断言した。

(AbemaTV/『けやきヒル'sNEWS』より)

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