教室に生徒80名、本棚に施錠。バングラ全体にはびこる、根深い教育問題

私たちの学校環境はどう作ったのかについて書いていきます。
K.Furusawa

開校してから1年経ち、ようやく新校舎に移動します。

新校舎に移動するにあたり、学校環境を整えるのにバングラデシュの一般的な学校・教育問題を考慮し進めました。今回は、そのバングラデシュの一般的な教育環境について、少しご紹介します

えっ!こんなところで授業を!?

K.Furusawa

今までバングラデシュで多くの学校を見学してきましたが、私の視点からするとほとんどの学校で、学習環境が整えられているとは言えない状況でした。

そもそもこの国は、子どもの数に対して学校の数が足りておらず、環境を整えるというステップにまでまだ手が回っていない状況です。そして、そのような環境は当然だとして、改善を試みない教職員がいるのも事実です。

事前調査でどの学校にも生徒数がキャパを上回って多いのは知っていました。しかし実際、現場に行ってみると、自分の予想をはるか上回る生徒数の多さでした。小さな教室の中に、1クラス80名の生徒が授業を受けている学校もありました。長机に4~6人の生徒が座っているのですが、隣の生徒の肩と肩がぶつかるほど、ぎゅうぎゅう詰めです。

教室内にカバンなどの荷物を置く場所がないため、子どもたちは机の上に荷物を置き、その上でノートをとっていました。私がその状況を見かねて案内人である教師の方に、「廊下に荷物置き場を作ってみてはどうか」と伝えたら、「生徒は今の状態でもノートをとれるから大丈夫だ」と聞く耳をもちませんでした。現地の先生たちにとってもその状況が当たり前なので、そこに問題意識を全くもっていないのです。

荷物があったら書きづらいはずなのに一生懸命ノートをとる子どもたちの姿を見て、「私たちの学校では学習環境を最低限、整えてあげなければ」と思いました。

これが図書室と呼べるのか...?

K.Furusawa

国の規定で学校には図書室を設置する必要があるとされていますが、私たち日本人がイメージする「図書室」としてちゃんと機能している学校はごくわずかです。

学校見学した際必ず見て回る場所が、図書室をはじめとする特別教室です。理科室やコンピュータ室など見て回りますが、どこも備品が十分整っていないなど、ある程度私たちが想定している範囲の状態でした。

ただ、図書室は想定以上に惨憺たる状況でした。

田舎の学校を周っている時のことです。

図書室として通された教室に行くと......、大きな本棚がひとつあるのみ。その棚に本は並んでいますが、ホコリがかぶっていて、子どもたちが使用しているような印象は受けませんでした。

また、いくつかの学校ではその本棚に施錠までされていたのです。理由を聞くと、「鍵をしていれば本が盗まれないから安心だろ?」と自慢げに言ってきました。

読みたい時に読むことができず、調べたい時に調べることができない図書室。本来の図書室の趣旨から大きくずれていることに、違和感しかありませんでした。

バングラデシュの学校環境。それを打破するには

K.Furusawa

私たち日本人の常識からしたらあり得ない話ばかりでも、これらがこの国の一般的な学校の現状なのです。

他にも、私たちから見ると常識はずれなことは多々ありました。ただ、そういった場面に遭遇するたび、「私たちは私たちが考える、子どもにとって良い環境を作れば良い」と気持ちがどんどん強く固まっていきました。それを現地教員にも指導し、浸透させるしかないと。

新しい文化を作るのは時間もエネルギーもかかりますが、やるしかなかったですしね(笑)。

こういった事情を受けて、次回は、私たちの学校環境はどう作ったのかについて書いていきます。

Ambassadorのプロフィール

K.Furusawa

K.Furusawa

宮城県仙台市出身。大学在学中はプロキックボクサーとして活躍。卒業後は日本の私学教員をやりながらタイ、カンボジア、ネパール、ミャンマーなどアジアの教育支援に携わる。その後、とある公益財団法人の仕事としてバングラデシュでモデル校となる学校建設・運営を任される。現在は生徒数約800名の学校をバングラデシュで運営中。

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