素人ゆえ!カンボジアでの大胆な起業 シャツが大好きだからこそ

今考えると、全くのど素人で、シャツが好きだったからこそ一歩を踏み出せたのだと思います。

カンボジアより、こんにちは!

オリジナルシャツブランド「Sui-Joh」を経営する浅野佑介です。

カンボジアに来た当時の僕は、家と大学の間を、自転車で行き来する生活を送っていました。

雨季には、道路が浸水してしまう中(場所によっては家の中も!)、自転車を必死にこいで通学したのを思い出します。

▶雨季のプノンペンⒸ Candle Night Live実行委員会

街角のテイラー、夢のようなオーダーメイドが手軽に

そんな僕を、クラスメイトは不思議な光景を見るように、見ていました。彼らの感覚からすると、自転車に乗る=バイクを買うお金が無い、というイメージだと後に言われました。

そして、あなたは外国人だから自転車でも良いけれど、カンボジア人だと違うイメージを与えるよ、と。

しかしながら、僕は日本でバイクに乗ったこともなく、毎日のように大小様々な事故現場を見ていたので、バイクを乗ることなんて想像できませんでした。

そんな日々の通学で不思議に思ったことがありました。どの通りにも、家族経営的なテイラーさんがあるということです。

それに気がついたきっかけは、僕が日本からもってきたお気に入りのシャツの襟部分が黄ばみ、汚れが目立ち始めたことを友人に話したことでした。すると友人は、「馴染みのテイラーがあるから一緒に行こう」と、連れて行ってくれました。

▶さまざまな布地が並ぶ街角のテイラー

好きな生地を選び、採寸し、自分の体の線に合ったシャツができる。シンプルな、しかし日本での買い物では味わったことのない楽しさでした。

出来上がってきたシャツは、とても素敵でした。

採寸したから当然ですが、僕が日本で1万円払って買ったシャツより、フィットしたシャツができてきたのです。

▶最初にオーダーしたお気に入りのシャツ

日本人にとっては敷居の高いオーダーメイドが、カンボジア人には馴染み深いことも実感しました。

オーダーが当たり前すぎて、逆にデパートで買う既製品のシャツのほうが高級品だと思っているカンボジア人もいるのです。価値観の違いに気付かされました。

問題が続出! 着られないシャツがたまっていく......

オーダーメイドの喜びに味をしめた僕は、家の近くでもシャツを作ることにしました。できたものを後日受け取りに行くと、袖の「剣ボロ」という箇所に穴が開き、左右の袖のサイズが若干違うことに気がつきました。

それを伝えると、「(剣ボロを指差し)ここは基本的に見えないから、これくらいの穴なら大丈夫!」と自信満々の笑顔が返ってきました。

「左右の袖の違いも、そんなに気にならないよ! 誰も計らないだろ。大丈夫!」と、オッパニャハー(カンボジア語で、「問題ない」の意)の連発です。

僕は当然腑に落ちませんでした。

それでも懲りもせず、他のテイラーでオーダーしましたが、いつも何かしら問題がついてくる。いつしか手元には、作ったはいいが着たくない......。そんなシャツがたまっていきました。

▶カンボジアでは、こうした小さなテイラーが軒を連ねる

ある日、カンボジアに進出を決めた縫製業の会社の皆さんと食事をする機会ができました。その時、日本人技術者の方に、これまでの僕のオーダーメイド体験を話しました。

すると、それは型紙の問題で、こちらのテイラーは型紙を作って裁断せずに、直接生地に型を書き、裁断していることが問題ではないのか、という指摘がありました。

「縫う技術」はあるのだから、型紙を作り、それを渡して作ってもらえば、大きな問題は回避できるはずだ、との助言でした。

しかしながら、服は好きでも、僕はいつも買う側で、アパレルでのアルバイトだってしたことがないのです。

すると、その方が型紙の作り方、シャツのイロハを教えてあげるから、一緒に型紙作ろう、と言ってくださいました。僕は迷うことなく、教えてもらうことにしました。

▶型紙

アパレル、知らなかったからこそ

今考えると、全くのど素人で、シャツが好きだったからこそ一歩を踏み出せたのだと思います。

一枚のシャツ作りにこんなにもたくさんの工程があり、緻密さや根気がいることは知りませんでした。

▶初めてのSui-Johブランドのオーダー品

もし僕が日本でアパレルの仕事をしていたとしたら、きっとその助言に躊躇し、何かと自分に言い訳をし、シャツ作りをしていなかっただろうと思います。

僕は、思い切ったスタートを切れて幸せでした。好きこそ物の上手なれ、です。

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ライター

浅野 佑介/Yusuke Asano

日常にHAPPYと彩りをお届けするカンボジア発のファッションブランド、Sui-Johの創設者。1981年愛知県生まれ。4人兄弟の長男。会社員を経て、2010年秋よりプノンペン市内のNorton大学 大学院へ入学。その中で、ファッションと文化の融合を目指しシャツ作りを始め、現在はトートバッグやポーチなど幅広く制作をしている。モットーは"Happiness is only real, when it's shared"。ブログに日々をつづっている。

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