市民に開放、注目のものづくり空間 /フィリピン・ボホール島の「ファブラボ」が熱い! (前編)

FabLab(ファブラボ)とは、「ほぼあらゆるものをつくるを目標として、アナログからデジタルまでのものづくり機器を備えたコミュニティ」のことを指します。

今回は、いま私が一番はまっている分野を紹介します。

フィリピンにおける「ものづくりコミュニティ」、FabLab(ファブラボ)についてです。

FabLab(ファブラボ)とは

FabLabとは、Fabrication Laboratoryの略ですが、「ほぼあらゆるものをつくる(Make Almost Any-thing)を目標として、アナログからデジタルまでのものづくり機器を備えたコミュニティ」のことを指します。

「市民に開放された工房と世界中が繋がること」も特徴のひとつです。

▶FabLab Boholの中。大学の中に設置されています

FabLabの考え方自体は、2002年に米国マサチューセッツ工科大学(MIT)のニール・ガーシェンフェルド教授が著書『ものづくり革命 パーソナル・ファブリケーションの夜明け』で紹介して以来、急速に広がってきています。

「ものづくり」というと、「Made in Japan」で有名になった車や家電などのマスプロダクションのイメージがまだ強いかもしれませんが、現在は、プロでない個人によるものづくりが可能になり、さらに、そこで作られるものがプロの手を介さなくても別の人とつながっていくことが可能になりつつあります。

つまり、工場のものづくりから、パーソナル・ファブリケーションと呼ばれる個人によるものづくりへ、と広がる動きです。

その中でこのFabLabのように、3Dプリンターやレーザーカッターなどが置いてある身近なものづくりスペースが注目されています。

▶市民に開放された際に集まった人々がレーザーカッターの説明を聞いている様子

現在、FabLabには、大学内に設置されているもの、地域が支援するもの、個人や団体が運営しているものなどがありますが、2016年時点で世界に600ヶ所以上アジアに50ヶ所以上日本に16ヶ所があり、今も増え続けています。

フィリピン初のものづくり工房:FabLab Bohol

フィリピンにあるボホール島は、セブ島から船で2時間の距離にあり、フィリピン国内ではチョコレートヒルズ(ぽこぽこした山)や、ターシャ(メガネザル)などの観光で有名な、ほのぼのとした地域です。

FabLab Boholは、2014年にフィリピンの貿易産業省(DTI)、科学技術省(DOST)、ボホール・アイランド州立大学(BISU)、日本からは国際協力機構(JICA)が共同出資して、大学内に設置されています。

▶BISU(大学)の一角にある、FabLab Boholの外観

ここのFabLabは、アジア全体で見てもかなり興味深いFabLabです。その理由は、活動内容にあります。

先進国では、個人の趣味やビジネス、または、高齢者を巻き込んだ地域活性化、教育の一環としてFabLabが活用されることがほとんどですが、途上国では少し異なります。

途上国では、実用的なものを途上国の人々が自分たちで作ることによって、貧困削減を目指し、地元住民の生活の質を向上させ、地域の問題を解決しようとする動きが広がってきています。

その動きのアジアでの先駆者ともいえるのがFabLab Boholなのです。

日本でも、2010年に「世界を変えるデザイン展」が開かれてから、途上国向けものづくりが注目されてきています。

FabLab Boholは、地元の中小零細企業の支援、大学の授業でも利用されています。

FabLab Boholでは休みの日でも、BISUの大学生たちがたくさん訪れ、パソコンとレーザーカッターを往復しながら、試行錯誤して作品づくりに取り組んでいました。

いつでもものづくりできる環境が整っているなんて、学生さんたちがうらましい! と思いました。

さらに、このFabLabのすごいところは、ここを運営している人々の心意気です。

JICAの青年海外協力隊員としてDTIに派遣され、立ち上げに携わったプロダクトデザイナーの徳島泰さん(現・慶応義塾大学研究員)はもちろんのこと、日本の経済産業省にあたるDTIのFabLabでのイノベーションに対する深い理解と積極的な姿勢は脱帽ものです。

FabLab Boholに訪問の度に、DTIが雇用している若くて優秀なデザイナーの熱い想いを聞くのも非常に刺激的です。

▶Arduinoを使ったハードウェアワークショップの様子

以前から私も途上国のFabLabに興味がありましたが、ボホールを訪問してそのビジョンに深く共感しました。

そこで私も、FabLab Boholに積極的にかかわっていきたいと考えています。

(後編に続く)

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ライター

高寺 優子/Yuko Takadera

東大機械工学科卒、東大院を半年で中退。南米・アジアを半年かけてバックパックし、「ガンジス川でバタフライ」を文字通り実行。強靭な体とタフさが武器。休学中にインターンとしてNexSeedの立ち上げ最初期から参画し、中退後は社員としてジョイン。現在は、経理、法務、労務、人事などバックオフィス全般を幅広く担当している。今後は、ものづくりとBOPを絡めた事業で地域の人々にも笑顔を広げたい。

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