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2018年03月08日 09時44分 JST | 更新 2018年03月08日 09時44分 JST

"ゲリーマンダリング"とアルマーニの制服と

3月になり、児童の安全の話に話題が移って来た件のアルマーニの制服騒動。

3月になり、児童の安全の話に話題が移って来た件のアルマーニの制服騒動。

どんな家庭や学校に通う子どもたちも安全が保障されて欲しいなぁ、と思っていますが、今週に入って週間金曜日の「『アルマーニ騒動』泰明小の入学式出席を拒否された児童の父親が告白」という記事を目にし、再度元に戻って考える必要があるのではないかと思った次第です。

この話の真偽の程を確かめようがない立場ですが、ごくわずかであったとしても地元の公立学校に通えない子どもがいるのだとすると、やはりもう一度「公立学校のあり方」についてきちんと議論がなされる必要があるのではないでしょうか。

その小さな一助になればと、この件について先月私自身のブログに書いたものを、ハフポストでシェアしたいと思います。以下、2月14日付の私のブログ記事を少し改変してお伝えします。

泰明小学校の制服の件について、生徒の保護者の多くはアルマーニの制服に納得しているんじゃないか?という話がでていて、頭に'ゲリーマンダリング(Gerrymandaring)"という言葉が浮かびました。

年明けから自分の中で釈然としない2つの「独立」を定義する言葉として常にある言葉で、ずっと公や国家とはなんだろうか?と考えていることになんだかこの制服問題がつながっている気がしたのです。

ちょっと遠回りになりますが、ワシントンD.C.エリアに住んでいて聞いたこのゲリーマンダリングと、2つの「独立」について紹介したいと思います。

1つはある若いアメリカの白人女性と話していた時でした。正確な裏付けがちゃんとできていないので、仮にA市としておきますが、彼女は小さな市ながら、所得階層が高く、公教育に定評のあるそのA市で生まれ育ちました。

数十年前に隣接するB群から独立した市だというような話の中で、私は何気なく彼女に「どうして独立したの?」と訪ねました。彼女は、苦笑しながら「ゲリーマンダリングじゃない?」と答えました。

ゲリーマンダリングとは、特定の政党や政治家、人種・民族等に有利なように選挙の区割りをすることだそうです。このゲリーマンダリングの結果、A市にはアフリカ系(黒人)アメリカ人の居住地区がほとんど無くなったそうです。白人層に有利な区割りになったという訳です。現在のA市の豊かさを見るに、裕福な白人たちが自分達だけで独立した様にすら見えます。

教育という観点で言えば、アメリカの公教育は地域ごとに大きな格差があり、豊かな地域ほど水準が高くなり、より裕福な人が高い教育水準を求めて集まります(*)。

逆に、貧しい地域の公教育の水準は低くなります。A市の公教育の高さは、こうしたゲリーマンダリングにもよるのかもしれないと思うと。私には、釈然としない想いが残りました。

そのすぐ後のこと、2人のスペイン人の友人とカタルーニャ独立について話をしました。

一人は当のカタルーニャ地方の中心都市・バルセロナからきています。

もう一人はバスク地方の出身です。

バスク出身の彼女は独立運動とテロリズムはもうたくさんだと語ると同時にカタルーニャにはスペインに残ってほしいと言います。

バルセロナからきた彼女は、カタルーニャはスペインでも豊かな地域であり、独立派の人たちは、貧しいほかの地域のために税金を払いたくないのだと言います。

二人とも、本国で独立反対なんて言えない空気だし、選挙妨害もあるし、小さな町や村になれば命に関わるから議論ができないのよ、と付け加えながら。

スペイン各地の独立運動の歴史は長く、これだけが理由ではないにせよ、大きな要因の一つだとすると、「裕福なエリアだけで独立するって、究極のゲリーマンダリング?」と釈然としない想いが残りました。

今回のアルマーニの制服の一件について、この地域の特殊性や、特任校であるのだから、という説明や、多くの保護者はわざわざこの学校を選んできており、この程度の価格であれば出せる家庭がほとんどだ、というような話を聞くに、なんだかいったい公や公教育とはなんなのだろうか?と、A市やカタルーニャの独立の話を聴いた時の釈然としない想いが重なります。

はっきりと独立しているわけではないけれど、公教育が、あるいは公共政策が、暗黙に中下層を排除し、裕福な層だけを対象にしていくことの意味をもっと考えた方が良いように感じました。

裕福な人たちだけで「独立」すれば、その地域の人たちは納得でしょう。他地域の人の意見や、少数派の意見は切り捨てたり、排除したりして、自分たちに有利な形で「ゲリーマンダリング」していけばいいのです。

格差が進む世界の中で、うかうかしていると、合法的に排除が進んでいくような、そんな怖さを感じています。

*アメリカの州ごとの教育格差について興味深い記事も出ているので、気になる方は格差が生まれる仕組みも含めて下記の記事をご参照いただけると良いかと思います。

日本人が大好きな「ハーバード式・シリコンバレー式教育」の歪みと闇|NPO法人サルタック理事 畠山勝太|現代ビジネス(2018年2月17日)