「ブログは私を守ってくれる。でも脅迫を受けることにもなる」~厳しい言論統制と闘う女性ブロガーたちの情熱と信念~

「ブログは私を守ってくれる。でも脅迫を受けることにもなる」~厳しい言論統制と闘う女性ブロガーたちの情熱と信念~

ドキュメンタリー『禁じられた声』(2012年)は、自由な言論を許さず、国家を批判した者には容赦ない処罰を科す国で、ブログやソーシャルメディアを通じて人権侵害を告発している女性活動家の姿を追った作品だ。彼女たちの声は常に監視され、禁じられ、封殺される。それでも、自らの言葉、情熱、そしてパソコンを武器に、真実を発信し続ける。

作中に登場するのはキューバ、中国、イランの女性ブロガー。国内の環境問題や人権問題を告発したために、自宅軟禁を余儀なくされている中国の曾金燕。女性の権利向上を訴えデモをけん引して国外追放となったイランのファルナズ・セイフィ。そして、月間アクセス数が1,400万を超えるブログで、政治囚の釈放を求め続けているキューバのヨアニ・サンチェスだ。

当局から日常的に監視や脅迫を受ける3人は、家族を大切に思う母であり、妻であり、娘でもある。それゆえ、家族にも危害が及ぶことを何よりも心配し、思い悩む。それでも「あらゆる脅迫が私を強くする」と語る彼女たちのまなざしは強く、真実は隠せないという事実を国家に突きつけている。

このドキュメンタリーは、1月24、25日に開催される「アムネスティ・フィルム・フェスティバル」で上映される。日本では初めての公開となる。

キューバにおける政治囚

2014年12月17日、オバマ米大統領は、1961年以来断絶していたキューバとの国交を正常化させると発表し、世界を驚かせた。同日、その取り組みの一環として、米国とキューバはスパイ容疑で拘束を続けていた双方の囚人を交換した。また米国は、これまでキューバの人びとに悪影響を及ぼしてきた禁輸措置など経済制裁も今後緩和するという。一方キューバ政府は、年が明けた1月7日と8日にわたり、少なくとも9人の政治囚を釈放した。

国交正常化が発表された日、キューバのヨアニ・サンチェスは、自身のブログ「ジェネレーションY」に、キューバは米国との国交正常化に伴い全面的な人権状況の改善を図るべきだと書き込んだ。すべての政治囚の釈放、国家による抑圧の停止、国際人権諸条約への批准とそれに沿った国内法の整備、そしてこれらを後押しする市民社会の声が、キューバの全体主義的な政治を変革するきっかけになるという。

キューバにおける政治囚について、日本ではあまり報道されていない。

2003年3月、キューバ政府は米国側の支援を受けて国家転覆をはかったとして、75人の反体制派活動家やジャーナリストを一斉検挙した。不公正な裁判で多くが禁錮刑を言い渡された。彼らはただ、平和的に政府の政策を批判していただけだった。

そのうちの1人で禁錮36年を宣告されたオルランド・サパタは、2009年12月からハンガーストライキを始める。被収容者の待遇改善や、反体制派を象徴する白い服を獄中で着用できるよう求めたが、その3カ月後に死亡した。人権団体や欧州議会は、サパタの死は計画的に引き起こされたとしてキューバ政府を非難した。当局は彼を日常的に拷問し、ハンスト中は水を飲むことを許さなかったからだ。

サパタの死に抗議するため、反体制派ジャーナリストのギジェルモ・ファリニャスは同じくハンストを始める。134日間のハンストの結果、政府は政治囚52人の釈放を約束した。映画『禁じられた声』の中で、ヨアニ・サンチェスは何とかファリニァスのハンストを止めようとする。日に日に衰えるファリニャスを心配し、「この国の未来には彼のような人が必要なんです」と、数少ない仲間とともにインターネットを駆使して真実を発信し政府を動かそうと奮闘する。

のちにファリニャスは「思想の自由のためのサハロフ賞」を受賞するが、政府は授賞式に出席するために彼が出国することを認めなかった。

2008年にラウル・カストロが国家評議会議長に選出され、政治囚の釈放など一部前進が見られた。しかし、言論弾圧や反体制派への厳しい抑圧は維持し続けている。実際、2014年は、政権を批判する人々を短期拘禁するケースが前年よりもかなり増えている。「世界報道自由度ランキング」(国境なき記者団)でも、180カ国中170位と、相変わらず下位の常連だ。

米国とキューバの国交正常化は、こうした状況を変えることができるだろうか。ヨアニ・サンチェスをはじめとする人権活動家は、今後しばらく、冷静にキューバの変化を見守っていくことになるだろう。

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◆◇◆ アムネスティ・フィルム・フェスティバル2015開催!チケット発売中 ◆◇◆

「人間の尊厳とは、表現の自由とは?」を問う、8本のドキュメンタリーを一挙上映!

隔年開催のアムネスティ・フィルム・フェスティバルは、「今日、映画を観る自由があった」をコンセプトに、フィクション、ドキュメンタリーなどジャンルを問わず、さまざまな視点から人間の尊厳や自由の大切さを問う作品を上映してきました。

今回は、『禁じられた声』をはじめ、パレスチナ難民キャンプで生活する人びとの希望と絶望を描いた『我々のものではない世界』(2012年)、反戦を訴え英国議会前でのテント生活を続けた男を追った『ブライアンと仲間たち パーラメント・スクエアSW1』(2009年)など、劇場未公開作を中心に珠玉のドキュメンタリー8本をお届けします。

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■日 時:2015年1月24日(土) 11:00上映開始、1月25日(日)10:30上映開始

■会 場:ヤクルトホール(港区東新橋1-1-19 ヤクルト本社ビル)

■チケットのご案内

【前売券】2日券:3,700円(学生3,200円) / 1日券:2,500円(学生2,000円)

【当日券】当日:2,700円 (学生2,200円)

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詳細・チケットのご購入(アムネスティ・フィルム・フェスティバル 公式サイト)

アムネスティ・インターナショナル日本 公式サイト

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