絶滅したと考えられていた南米秘境のカエル、日本で繁殖に挑戦。「あわしまマリンパーク」、クラウドファンディングで支援募る。

「ラブライブ!サンシャイン!!」の"聖地"としても知られる無人島の水族館。約70種を飼育している「カエル館」がある。
リオペスカドフキヤガマ=あわしまマリンパーク
リオペスカドフキヤガマ=あわしまマリンパーク

絶滅したとされていながら奇跡的に南米で再発見されたカエル「リオペスカドフキヤガマ」。その飼育・繁殖に、静岡県沼津市の水族館「あわしまマリンパーク」が挑戦している。人気アニメ「ラブライブ!サンシャイン!!」の"聖地"としても知られる無人島の水族館には、約70種を飼育している「カエル館」があり、今年の夏から4匹のリオペスカドフキヤガマが飼育・展示中だ。生息地と同じ環境を整える設備などのために、クラウドファンディングで支援を募っている。

リオペスカドフキヤガマ(学名Atelopus balios.)は体長3、4cm程度の小さなカエル。あわしまマリンパークによると、身を守ろうと体の色を変える「擬態」のため、木の枝などが多いところでは茶色っぽく、緑の植物が多いところでは緑っぽくなる。水玉のような斑点模様があり、細長い足や足先の裏がオレンジ色なのも特徴的だ。

細長い足も特徴的
細長い足も特徴的

見た目だけでなく、繁殖活動も少し変わっている。カエルの多くは、オスが鳴き声でアピールすることが多いが、リオペスカドフキヤガマは繁殖のためには鳴かない。その代わりに「バイバイ」をするかのようにオレンジ色の前足を振るしぐさをして、メスにアピールする。うまくいけばメスがオスに抱きついて生殖活動が始まるが、関係が成立しないと、オスはうなだれたような格好でその場を去っていくのだという。

生息地は南米エクアドルの標高350~650m、熱帯湿潤林の川沿い。1995年から目撃情報が途絶え、いったんは絶滅したと考えられていた。だが、2010年に21カ国の研究者が参加して行われた「失われた両生類の捜索キャンペーン」の活動を通じて再び発見された。

「カエル館の飼育スタッフは各国のカエルの専門家と交流があり、エクアドルの保護研究施設とのつながりから、リオペスカドフキヤガマに関する取り組みを知りました。エクアドル以外での飼育・繁殖は世界で初めての挑戦です。単に珍しいカエルを飼育するということではなくて、絶滅の危機にさらされた生物を守ろうというものでもあり、ひいては環境保全、動物保護活動の一端を担うものだという想いで、スタッフ一同責任をもって取り組み、必ず成功させたい」と、あわしまマリンパークの広報担当者は意気込みを語る。

カエル館は2008年、38種類のカエルを集めて開いた特別展をきっかけに作られた。特別なこだわりがあった訳ではなく、何か他の水族館にはない特徴を出そうと考える中で出てきた企画だったが、好評だったため常設となった。今では、約70種類を飼育・展示する国内有数の施設となり、ミツヅノコノハカエルなど日本初の繁殖事例もあるという。

今回、リオペスカドフキヤガマを受け入れるにあたり、スタッフをエクアドルに派遣。現地で収集した情報を元に、生息地と同じ標高の熱帯湿潤林の環境をカエル館に再現した。エクアドルからの輸入費や環境を整えるための空調・冷水設備などの費用が必要なため、クラウドファンディングを利用して資金調達に取り組んでいる。

11月22日現在、約170人が支援している。支援者欄に寄せられたコメントを見ると、あわしまマリンパークのファンやカエルの愛好家たちはもちろんだが、この場所が人気アニメ『ラブライブ!サンシャイン!!』の舞台になっているため、ラブライバーからも注目を集めているようだ。特に人気なのは、「カエル館入り口横にお名前プレートを提示させていただきます」というリターン(返礼品)。カエル館は登場人物の一人、松浦果南の自宅のモデルとなっており、Twitter上には「果南ちゃんの家に名前を載せてもらえるというのは光栄」などというツイートもある。

カエル館の外観(写真左)と館内の展示スペース=あわしまマリンパーク
カエル館の外観(写真左)と館内の展示スペース=あわしまマリンパーク
Asahi Shimbun

さて、気になるのは、この「幻のカエル」の繁殖が成功するかどうかだが――。

カエル館の活動報告によれば、11月中旬ごろからメスのお腹の膨らみや包接など、繁殖の兆候と思われる活動が見られるようになり、期待が高まっているという。

「繁殖に成功した暁には、他の動物園や施設に寄贈するつもりです。『リオペスカドフキヤガマ』をより多くの日本の皆様に知っていただき、自然保護への意識につながればいいと考えています。今回のプロジェクトで、『失われた両生類の捜索キャンペーン』という世界規模の啓蒙活動のフロントラインに立つことができました。カエル館は世界のカエルの生態・繁殖について多くの知見を得ています。これらをデータ化して、将来的に日本全国、世界に発信していきたい」

クラウドファンディングによる支援受け付けは11/30まで。詳細は、https://a-port.asahi.com/projects/marinepark/

(伊勢剛)

カエル館で撮影された包接の様子。上で抱きついてるのがオスで、どっしり構えているのがメス
カエル館で撮影された包接の様子。上で抱きついてるのがオスで、どっしり構えているのがメス

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