「バングラデシュに算数の教材を届けたい」。中学3年生がクラウドファンディングで国際支援に挑戦中。

クラウドファンディングに挑戦するのは、横浜市内の中学に通う15歳の女の子だ。
バングラデシュの子どもたちに贈る算数教材
バングラデシュの子どもたちに贈る算数教材

バングラデシュの子どもたちに算数の教材を届けたい――。アジアで最も貧しい一つといわれる国の状況を知った中学3年生が、クラウドファンディングを活用した支援活動に挑戦している。同級生らと一緒に手作りした算数教材キットを送るプロジェクトで、同世代の子どもたちも協力できるように、600円という少額から支援できるようにした。10月24日まで、朝日新聞社が運営するクラウドファンディングサイト「A-port(エーポート)」で支援を募っている。

「バングラデシュのある南アジアは、学校に通っていない子どもが世界に2番目に多い地域と言われています。親が十分な収入が得られず、学校に通っていても途中で退学して働かなくてはならない子どもも多いんです。バングラデシュの識字率は72.3%と上昇傾向にありますが、再貧層の子どもたちが教育を受けられるようにするには、まだまだ課題があるのが現実です」

クラウドファンディングに挑戦中の加藤舞さんはこう話す。横浜市内の中学に通う15歳の女の子だ。

中学3年でクラウドファンディングに挑戦中の加藤舞さん
中学3年でクラウドファンディングに挑戦中の加藤舞さん

舞さんは小学生のころ、学校でのユニセフの活動などを通して、ボランティア活動に興味を持つようになった。今年から「ESAアジア教育支援の会」のユースメンバーとして、本格的にボランディア活動に取り組むようになり、そこで出会ったのが、バングラデシュに教材を届ける「手作り算数教材プロジェクト」だったという。

貧しい地域には物が少なく、数についての感覚を自然に身につけることが難しい。数についての感覚が身についていないと、それを前提とした計算を学ぶこともできない。

「手作り算数教材プロジェクト」は、この問題を解消するため、少しでも子どもたちが楽しみながら数の概念を学べるようにするための取り組みだ。教材では、ベンガル語で表記された数字の下に、ボランディアが描いたチョウチョウやウサギなどの可愛らしいイラストが、数字と同じ数だけ並ぶ。

舞さんは、この教材を受け取った現地の子どもたちからのお礼のメッセージや笑顔の写真を見て、プロジェクトの必要性をリアルに感じたという。

「現地の教材は、国が支給したわら半紙に印刷されたようなものしかありません。この教材はカラフルでかわいらしくて、勉強が楽しくなる教材だと思います。私にとってボランディアとは、どんなに小さなことでも、誰かを笑顔にできるものです。私はこれまで平和を願ったり、考えたりするだけでした。でも、ESAユースのメンバーの人たちは、その思いを行動に移していました。そんな人たちに影響されて、私も願ったり考えたりするだけではダメなんだ、行動に移そうと思ったんです」

今回のクラウドファンディングのプロジェクトでは、この手作り算数教材を200人分制作することを目指している。教材には一つ一つイラストを手描きする必要があるが、舞さんが通っている中学校で同学年の生徒約160人が作業を手伝ってくれることになった。

「担任の先生に話したら賛同して、学校側に交渉してくれました。私と同世代の人たちに、こういうボランティアに関わってもらうことで、何かを感じてもらえたらなと思っています」

バングラデシュの子どもたちに贈る算数教材
バングラデシュの子どもたちに贈る算数教材

舞さん自身、ESAでボランディアに関わることで、途上国への支援に対する考え方が変わったという。

「ESAに入ったことで、私は『学ぶことの意義』という素晴らしい言葉に出会うことができました。『おなかを空かせている人に魚をあげても、食べてしまったら無くなってしまいます。魚をとるための網をあげても、破れてしまったら使えなくなってしまいます。でも網の作り方と魚のとり方を教えてあげれば、その人は一生魚をとることができるでしょう』。これまで支援と聞くと、食べ物などの物資を送ることを想像していたのですが、教育というすばらしい支援があると知りました」

舞さんは7月に開かれた「よこはま子ども国際平和スピーチコンテスト」で横浜市長賞に選ばれ、10月13~21日まで、「ピースメッセンジャー」として米ニューヨークに派遣されている。計画では、国連本部やユニセフなどを訪れることになっている。

今回のプロジェクトが実現したら、実際にバングラデシュを訪れて子どもたちに会いたいと考えているという。自分の目で現状を見うることによって、また何かほかに必要とされているものが見つかるかもしれない。

「今回はESAや学校の力を借りてのプロジェクトだったが、いつかは一から自分から考え、国際平和に貢献する何かを成し遂げてみたい」

自らが描く夢に向かって、舞さんは一歩ずつ歩みを進めている。

クラウドファンディングによる支援は10月24日まで受け付けている。支援者には金額に応じて、子供たちのお礼のメッセージが届く▽教材と共にメッセージを添える――などのリターンがある。詳細はhttps://a-port.asahi.com/projects/peace-math/

クラウドファンディングでバングラデシュへの教育支援を呼びかけている
クラウドファンディングでバングラデシュへの教育支援を呼びかけている

■「渋谷のラジオ」でA-portのプロジェクトを紹介中

この記事は「渋谷のラジオ」で8月2日に放送された内容を元に構成しました。渋谷のラジオでは毎月第1木曜午前10時から、A-portのプロジェクトを紹介するコーナーを放送中です。渋谷周辺ではFMラジオで、その他の地域でもスマートフォン等に公式アプリをインストールすることで聴くことができます。次回放送は11月1日の予定です。

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