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2019年01月09日 17時18分 JST | 更新 2019年01月09日 17時18分 JST

環境アートの第一人者・池田一さんが「アースアートのトリセツ」出版へ。クラウドファンディングで支援募る

アースアートとはどんなものか。まずは作品を見ていただきたい。

池田一さんが鹿児島・枕崎で手がけた花渡川アートプロジェクト「五輪の浮島が漂着する日」(2008年)

 約100万人が訪れたという東京・上野の「不忍池環境アートプロジェクト」など、アートを通じて環境問題と向き合ってきた「アースアーティスト」の池田一さん(75)が、これまでの自身の取り組みをベースにした著書の出版準備を進めている。

 3部作で、第1弾は「アースアートのトリセツ」。製作プロセスなどを細かく紹介し、読者がアースアートを追体験できる内容にする予定だ。朝日新聞社が運営するクラウドファンディングサイト「A-port」(https://a-port.asahi.com/projects/earth-art/)で出版への支援を募っている。

 アースアートとはどんなものか。まずは作品を見ていただきたい。

鹿児島・枕崎の「地球の家」。平均年齢70歳という木口屋集落から「集落を丸ごとアートに」という依頼を受けて制作された(2011年)

カナダ・バーリントンの植物園に作られたアート。園にある様々な種類の枝を集めて作ったという(2009年)

 いずれの作品も、まるで以前からあったもののように、その場所に馴染んでいる。そこには、自然を素材として造形するよりも、自然の中にあるものを「出現」させたいという池田さんの意志が垣間見える。

 池田さんの表現活動は京都大学在学時の1960年代、演劇から始まった。

 前衛的な舞台も数多く作り出したが、「人をイメージ通りに動かそうという『演出家』という立場がいやになった」と80年代になって演出家廃業を宣言。活動の軸をパフォーマンスやアートに移した。

 「水のアーティスト」とも呼ばれる池田さんが自身のアートの「原点」と位置づけるのが、1984年に福島の檜枝岐パフォーマンス・フェスティバルで披露した「水ピアノ」だ。水槽に入り、水面をピアノに見立てて約1時間演奏するというものだった。

「水面は音が思うように出ないで、なかなか大変なんですよ。ぴしゃぴしゃという音しかしなくて、起こることに全くの即興で対応していかなくちゃいけない」

「水は人間にとって、最も手に負えないものです。その水をあらかじめ使おうとしても思い通りにはならない。そこにあるのは自然と人間との共生で、自然との対話をしなくちゃいけない。倫理的に地球に向き合うことをしないとダメなんです。そこに今までにはない考え方や発想、『新しい言語』ともいうべきものが出てきます」

第21回サンパウロ・ビエンナーレのメイン・フロアでの展示(1991年)

 アーティストとしての池田さんの活動は華々しい。

 1991年のサンパウロ・ビエンナーレでは、日本人で初めて特別招待アーティストとしてメインフロアでの展示を担当。オープニングパフォーマンスには3000人を超える観客が集まったという。95年には国連50周年記念アートカレンダーの「世界の12人のアーティスト」に選ばれた。

 2012年には全国都市緑化フェアの一環で上野公園の不忍池で約600人のボランティアらとともにプロジェクトを展開。蓮を刈って4本の道をつくり、池全体を活用した巨大な作品を生みだした。東京都の報告では1カ月で100万人超が訪れたといい、「100年に一度のビッグプロジェクト」とも評された。

不忍池環境アートプロジェクト『不忍・緑・五景』(2012年)

 国連本部での環境セミナーに招待され、「地球環境をWater's-Eye 水の眼でとらえる」ことの重要性について講演したこともある(2008年)。そのときに池田さんは、自身が考案した「80リットルの水箱」について説明した。43cm×43cm×43cmの箱で、1人の人間が文化的な生活をするために必要とされる1日の水の量を表現した作品だ。

 すると、聴衆の一人だった高校生から、「一家に一台、水箱があるといい」という意見が出たという。

「水不足のデータがいっぱい出てきても、なかなか頭に入らないが、実際に目で見れば意識が変わる。アートでないとできない仕事が、すごくあると思う。『アートの未来』ではなく、『未来のためのアート』を考えていかなくてはならない」

「80リットルの水箱」を運ぶ人たち(2006年)

 そうした意識の中で出てきたのが、今回の出版プロジェクトだ。3部作となる予定の第1部は「Earth Art Manual アースアートのトリセツ」。図面や写真などを中心に、材料の調達や制作プロセスなどを細かく紹介し、読者がアースアートを追体験できるようにしている。

「国や地域は競争意識が強く、公共という概念がどんどんなくなっている。唯一残っている公共は『地球』しかない。『トリセツ』を通じてアースアートに触れることで、誰しもがそれぞれのやり方で『地球』を考えることができると思う」

 クラウドファンディングでは、1月11日まで支援を受け付けている。リターン(返礼品)には、「アースアートのトリセツ」の巻末への名前掲載や、池田さんのアースアートのカタログなどが用意されている。

 詳細は、https://a-port.asahi.com/projects/earth-art/

(伊勢剛)