左ききと同割合、日本人の7%がLGBT 渋谷から変える「普通」の基準

渋谷区などが、性的少数者が住みやすい町づくりを進めている。区ではLGBTカップルを「結婚に相当する関係」と認定する「パートナーシップ証明書」の発行を決めた。

アメリカで今年6月、画期的な判決が出た。連邦最高裁がすべての州でゲイやレズビアンなどの同姓婚を認めることを決め、性的少数者(LGBT)への理解を社会に促したのだ。

日本では、東京・渋谷を中心に、性的少数者が住みやすい町づくりを進めている。

リーダーシップを取っているのは、長谷部健・渋谷区長。渋谷区では2015年3月、LGBTのカップルを「結婚に相当する関係」と認定する公的書類「パートナーシップ証明書」の発行を決めた。婚姻届を出す区役所の「戸籍課」と同じフロアに証明書の受付場所も作る方針だ。長谷部区長は「普通の婚姻届と全く同じ感覚で来てもらいたい」と話す。

長谷部区長

長谷部区長がLGBTについて知ったのは、20歳 の頃、アメリカに行ってゲイからデートの誘いの声をかけられたのがきっかけだった。「驚きました」。西海岸では、男性が手をつないで横断歩道を渡っていたのを写真におさめた。「これが普通なんだ」と知った。

日本に戻ってから、意識して周りを見てみると、男性と女性の区別だけではない多様な性の形があることに気づいた。レズビアン(女性同性愛者)、ゲイ(男性同性愛者)、バイセクシュアル(両性愛者)、トランスジェンダー(心と体の性が一致しない人)――。「頭で理解していたが、それだけではだめだった。LGBTの人に実際会って身近な存在として感じることが理解につながった」。

長谷部区長が、区長になる前に設立したゴミ拾い活動団体の「グリーンバード」。メンバーの一人杉山文野さんは、性同一性障害で悩んだ末、女性から男性に変わった。ボーイッシュだった「女子大生」が「完璧なおじさん」に変わるまで、杉山さんの迷いながらの10年を見てきていた。アメリカで感じたLGBTへの「驚き」がいつの間にか、「隣にいる普通の人たち」という感覚に変わっていった。

実際、電通ダイバシシティー・ラボの調査によると、日本人全体の7・6% がLGBTという。血液型のAB型や左ききの人と同じくらいの割合なのだ。電通総研が国内の成人約7万人を対象にした別の調査では5・2%。20人に1人と考えるといかに「身近」であるかがよく分かる。

渋谷の中心部にキャンパスを構える青山学院大。ここの学生が中心に立ち上げた「青山BBラボ」は、LGBTについて私たちが理解を深め、多様性を認める社会を作る企画づくりに力を入れている。

いま、実現しようとしているのは、米国の高校を舞台にしたユニークなアニメ「McTucky Fried High(マックタッキー・フライドハイ)」の日本版映画の制作だ。このアニメは、米国の映像作家のロバート・カーニリアス(Robert Carnilius)さんの作品で、ファストフードが登場人物というユニークさが評判だ。たとえば、自らの男性としての体に違和感を持つのは「ホットドッグ」。「フライドポテト」はゲイを公表したアメフト選手という設定だ。青山学院大の学生たちは、制作費を集めるため、クラウドファンディングで、市民に協力を呼びかけている。

映画作りと並行して、原作者であるロバート・カーニリアスさんを日本に呼び、LGBT問題について意見交換をするイベントも準備中で、長谷部・渋谷区長も参加予定だ。

【意見交換会概要】

日時:9月26日(土) 『渋谷から考える未来のカタチ』

場所:青山学院大学青山キャンパス17号館6階本多記念国際会議場

青山BBラボの中村聡子さん(21)は「アニメは日常にありそうなLGBTについての会話にありふれている。言っている側はふざけてやっているのかもしれないけれど、それで傷つく人もいる。LGBTの人と接する際の意識について考えられるようになった」と話している。

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クラウドファンディングサイトA-portで掲載されている青山BBラボのプロジェクト

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