前立腺がん、実は乳がんより多い! 男性特有のがん、「ひげ」で訴え

「男性のがんで一番多いのが前立腺がん。その数は女性の乳がん患者よりも多いのにあまり知られていない」

ひげをつけて、歩く、走る。

そんなイベントが11月に大阪、12月に東京で開かれる。英語で口ひげを意味するmo(=moustache)を冠して、名前は「Mo-FESTA」(モーフェスタ)。

前立腺がんや精巣腫瘍など男性特有のがんや健康について啓発するためのイベントで、いわば男性版のピンクリボン運動のような活動だ。患者団体などでつくる実行委員会は「男性のがんで一番多いのが前立腺がん。

その数は女性の乳がん患者よりも多いのにあまり知られていない」。広く社会に呼びかけるとともに、開催費用の一部を集めるため、A-portでクラウドファンディングに挑戦している。

昨年の「Mo-FESTA2016東京」より(実行委提供)

実行委によると、Mo-FESTA はオーストラリアで十数年前に始まったMovember(モベンバー)が源流。Movemberは「mo」と「November(11月)」を組み合わせた造語だ。

賛同者は10月末にいったんひげをそった後、11月の1カ月間はひげを伸ばし、男性特有のがんや健康について周囲にアピールする。日本では1カ月もひげを伸ばし続けるのは馴染まないだろうと考え、つけひげなどを使うことに。

また、大人の男性だけでなく、女性や子どもたちにも関心を持ってもらおうと、誰もが参加できるラン&ウォークのチャリティーイベントにしたという。

実行委事務局の須藤英彦さん(63)=東京都在住=自身も前立腺がんの患者だ。2015年1月、会社の定期検診にオプションで追加したPSA(前立腺特異抗原)検査がきっかけで、前立腺がんが見つかった。

告知を受けた病院では全摘出手術を勧められたが、別の医師のセカンドオピニオンなども聞いた上で、放射線治療を選んだ。7~9月に39回の放射線照射を受けたが、1回1回の時間は短いため、治療日も半日休むだけで仕事を続けられた。

Mo-FESTA2017のキックオフイベントで、「ひげ」を見せながら写真を撮る須藤英彦さん(左)と沼波定比古さん=7月、東京・原宿

現在は3カ月ごとに検査をしているが、大きな異常は見つからず、PSAの値も正常範囲内で落ち着いている。

「早く発見できれば早く治療することができる。まずは前立腺がんとは何か、PSA検査とは何かといったことを知ってもらいたい」。

予防や進行の防止には食事や運動などライフスタイルも大きく影響する。須藤さん自身はウォーキングやヨガに取り組み、効果を感じているという。

国立がん研究センターによると、2016年に国内でがんに罹患した男性は576,100人(推計、以下同じ)。うち前立腺がんの患者は92,600人で、男性が罹患したがんの中では最も多い。この数字は女性で最も多い乳がんの90,000人をやや上回る。

乳がんについては2003年から続く「ピンクリボン」など定着した取り組みがあるが、「これまで男性のがんやメンズヘルスについて啓発する運動はほとんど行われていませんでした」と実行委。

「がんの世界では、患者会の数でも、圧倒的に女性優位が続いており、男性患者は孤立無縁の状態に置かれている例も少なくありません。男性のがんや健康に対し、もっと関心を持っていただきたいのです!」と訴えている。

昨年の「Mo-FESTA2016大阪」より(実行委提供)

「Mo-FESTA2017大阪」は11月12日に大阪城公園で、「Mo-FESTA2017東京」は12月17日、国営昭和記念公園で開催する。いずれもランは5キロと10キロ、ウォークは4キロと7キロのコースを予定。ひげの仮装大賞として表彰する「Monderful賞」も予定している。

参加費は1人3千円。A-portではオリジナルトートバッグなどの特典がついた参加権利などを購入できる。

初開催となった昨年は大阪、東京あわせて約500人が参加したが、イベント自体は赤字で、実行委を構成する患者団体の持ち出しがあった。今年は参加者1000人が目標。支援の輪を広げるとともにイベントで黒字を出し、がん関係の研究機関に寄付ができるようにしたいという。

須藤さんは「患者本人はまず治療が先で、啓発にまで取り組むのは難しい人も多い。患者団体が自分たちだけでする活動には限界があり、多くの人たちに応援してもらいたい」と話している。

A-portのプロジェクトページはhttps://a-port.asahi.com/projects/mo-festa/

注目記事