時速50キロを超える高速で海面から浮き上がり、空飛ぶヨットとも呼ばれるナクラ17級。オリンピックのセーリング競技で最も速いといわれるこの種目で、2020年の東京の舞台を狙う選手がいる。470級女子で元世界ランキング1位の梶本和歌子選手(34)と、医師と二足のわらじをはく川田貴章選手(34)。まずは国際大会で勝つために海外で練習するなど準備を進めており、その資金をクラウドファンディングで募っている。
ナクラ17級は、オランダのナクラ社が製造する全長17フィートのヨットを使う種目。オリンピック種目の中でも最新・最速のヨットだ。2人乗りで、オリンピックでは男女のペアで乗るルールになっている。
梶本選手と川田選手は同じ横浜市内のジュニアヨットクラブでセーリング競技(ヨット)を始めた仲間で、それぞれがオリンピックを目指してきた。
梶本選手は470級女子で2012年のロンドンオリンピックに出場。当時の世界ランキングは1位だったが、オリンピック本番では14位に終わり、次のリオは出場そのものがかなわなかった。
川田選手は2008年、当時通っていた東京大学医学部を休学し、北京オリンピックを目指したが、選考レースで敗退した。その後、大学に戻って医師として働いてきたが、小さいころから抱いていたオリンピックの夢をあきらめることができず、2016年に休職して再びオリンピックを目指し始めたという。
2人は現在、東京オリンピックでセーリング競技の会場となる予定の江ノ島を拠点に練習している。2017年11月、北京オリンピックで金メダルを取ったスペインのAnton Paz氏をコーチに招き、国内合宿を実施。18年1月にも20日間のスペイン合宿を行い、同コーチの指導を受けた。
合宿中の活動報告で「毎日よい強風が吹き、波が立たない平水面で、密度の濃い練習をおこなうことができています。日本の冬ではこうはいかなかったと思います」と記すなど、手応えを感じている。
セーリング競技は、競技の歴史が長いヨーロッパでほとんどの国際大会が開催され、選手層も厚い。国際大会で好成績を残し、世界ランキングを上げていくには、ヨーロッパで練習することが最も近道だという。
今回のクラウドファンディングでは海外への渡航費などについて、支援を呼びかけている。活動を通じ、日本ではまだまだ馴染みのない人が多いセーリング競技についても、多くの人に知ってもらいたいと考えている。
「30歳を過ぎ、2人とも家族を持った今からでも、情熱とたゆまぬ努力、綿密な計画と評価・修正のプロセス、そして応援くださる方がいれば、オリンピック出場・メダル獲得を実現できると信じている。私たちが世界のトップとも戦える選手になり、オリンピックに出場し、ひいてはメダルを獲得することで、セーリング界の活性化や次世代の選手育成にもつなげていきたい」
クラウドファンディングの支援受付は2/28まで。詳細は、https://a-port.asahi.com/projects/nacra17_japan/ 。