PRESENTED BY AQUA SOCIAL FES!!

客足が減った地元の海に息を吹き返す。須磨海岸を愛する若き漁師の挑戦

神戸市にある須磨海岸。夏になると海水浴客で賑わうが、実は海苔の生産地でもある。海苔や地引網体験を通じて魅力を発信する取り組みが、若者を中心に行われているそうだ。

魚も海水浴客も減った須磨海岸 地引網体験で魅力伝える

神戸市須磨区に位置し、夏になると70万人が訪れる須磨海岸。海水浴場というイメージが定着しているが、実は全国有数のブランド海苔「須磨海苔」の生産地でもある。そんな漁場としての須磨海岸の魅力を発信しているのが、須磨浦水産研究会会長の若林良さんだ。

須磨浦水産研究会会長の若林良さん。

若林さんは、海とは離れている神戸市北区の出身。しかし、「仕事終わりや休みの日でも、プライベートで船を出して釣りに出ています」と言うほど、須磨海岸への愛着は深い。大学時代、須磨で建築関係の仕事をしているときに、会社の社長とのつながりで漁師である今の師匠と知り合った。

建築関係の仕事仲間3人で漁師の知識を何ひとつ持たずにこの世界に飛び込んたが、16年経った今では若林さんしか残っていない。「毎日勉強ですよ」と笑うが、"何でも任してくれる"師匠とホームグラウンドである須磨海岸が「漁師として人間として一人前にしてくれた」と感謝を忘れない。

実は、ここ数年気になっていることがある。地球温暖化が原因だろうか、潮流が変化し、海水温が高く、魚の栄養分が減少したことから、漁獲高が金額で7~8年前の半分以下となってしまった。

娯楽の多様化により海水浴の客足も一時期に比べて目に見えるように減ってきている。「来るのは大阪の子ばっかりですわ。地元の子はどこ行ってるんやろ?」自然と、そんな言葉が出る。「このままやったら、須磨がアカンようになる」。

若林さんは、学生のころからイベントの企画が好きだったこともあり、須磨浦水産研究会のメンバーたちと須磨海岸の魅力を体験してもらおうと、さまざまな催しを考え出した。

ひとつ目は地引網体験。単に獲れた魚を持って帰って終わりではなく、同じ須磨海岸にある神戸市立須磨海浜水族園に協力を依頼し、タッチプールで魚に直に触れ、魚介類の解説をしてもらう仕掛けを作った。毎回、初めての参加者は「須磨の海にこんなにたくさんの魚がいることを知らなかった」と口を揃える。

「AQUA SOCIAL FES‼」でも体験できる地引網。

須磨の"海の恵み"を通じて 愛着を育む

ふたつ目は2012年から始めた「ワカメのオーナー制度」。ワカメを株付けし、うまく育てば1口3500円の出資で家庭での半年分ほどの分量が収穫できるとあって、今では300口もの定員が埋まる人気のイベントとなっている。出資者もワカメの成長度合いを、須磨浦水産研究会のFacebookページなどで確認することで、"海の恵み"を身近に感じることができる。

ワカメオーナーの収穫。

また、昨年11月には、大型の海苔乾燥機2台を配備し、最新型の機械を導入した新しい海苔工場が完成した。今後、ここが須磨海苔の拠点となり、地引網、ワカメのオーナーとともに須磨の魅力を発信していく。

「須磨海苔」は1月〜4月まで、工場で買うこともできる。

みんなに須磨のことを知ってもらい、須磨で獲れたもの、作ったものを食べてもらいたい。そう話して若林さんは照れ臭そうに笑った。

若林さんが中心となって、須磨海岸で地引網体験や清掃活動を行う「AQUA SOCIAL FES‼ in兵庫」は10月17日(土)10時から開催されます。詳細は公式サイト内の兵庫県プログラムページをご覧ください。

(取材・執筆:神戸新聞社 加藤邦春)

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