火鍋を食べながら、「幸せ」を考えたら苦しくなった。
蒸し暑い夏の夜。
私は大学時代の親友と銀座で火鍋をつついていた。
「私さ、思ったんだけど、仕事も生活も全部順調だし、親も健康だから、あとは彼氏だけなんだよね」
火鍋の具をかき分けながら、彼女がぽつりとつぶやく。
「え?」
わたしが聞き返すと彼女はこう答えた。
「幸せになるために」
聞くと、早く彼氏をつくって、安定した結婚を目指したいのだという。
こんな言葉、久しぶりに聞いた。まるで、お姫様が登場するおとぎ話の世界にしか存在しないような言葉だ。
しかも、仕事をばりばりして、おしゃれで、遊びも充実している彼女から、こんな言葉が出るとは。
でも、珍しい話ではないのかもしれない。
仕事にも生活にも慣れてきた20代後半は、次へのさらなる欲が出てくる。
そういうとき、一昔前なら、次の「幸せ」は「結婚」と言われていた。しかし、その「方程式」は崩れつつある。
なにより、「結婚」が誰にも幸せをもたらす訳ではないと、わたし自身よく知っている。
「幸せ」の定義は、人それぞれが決めるものだし、それを他人がとやかく言う必要はないはずだ。
しかし、友人の言葉からは、「幸せ」が多様化しているなんて感じられなかった。
考えると、いまはむしろ、仕事もばりばりして、オフも充実させて、さらに、いいパートナーと結婚、出産ーーーといったようなものが「幸せ」であるかのように、「幸せ」の「ハードル」があがっているとしか思えなかった。
そんな完璧な女性などいないはずなのに、どうしてもそこを目指してしまう。
彼女との会話から、わたしも改めて「幸せ」ってなんだろうと考えてみたら、世の中で言われている「仕事、結婚、プライベートの充実=幸せ」というイメージしか出てこなくて苦しくなった。
人々の生き方や価値観は、多様になった。誰もが目指す「幸せ」なんて、今もあるのだろうか。
むしろ、「ない」と言い切れたら、どんなにいいだろう。
世界一「幸せ」な国に、飛び込んでみる
8月4日、わたしはフィンランドのヘルシンキ・ヴァンター国際空港に、降り立った。
この国は、国連による「世界幸福度ランキング2018」で1位に輝いた。「所得」「健康と寿命」「社会支援」「自由」「信頼」「寛容さ」などを合計した指標で、一番点数が高かった。
もちろん、「幸せ」だけでくくれない面もある。
失業率は8%(2018年時点)で、日本(2.5%)の2倍以上。この国から誕生し、世界的な携帯電話企業に成長した「ノキア」も、すでに衰退してしまった。
そんな国の若者たちはいま、どんなことを考えながら日々を過ごし、「幸せ」についてどんなことを考えているんだろう。
世界一の「幸福」を手に入れたさきに、何があるのか。
#幸せの国のさき はどんな景色が見えるんだろう。
火鍋をつつきながら、「幸せ」について考えたあの夜。
自分が定義する「幸せ」をすぐに口にすることができなかった。
世界一「幸せ」なフィンランド人はそんな私を見て、どう思うのだろうか。
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2018年8月、フィンランド外務省が主催する「若手ジャーナリストプログラム」に選ばれ、16カ国から集まった若い記者たちと約3週間、この国を知るプログラムに参加します。
2018年、世界一「幸せ」な国として選ばれたこの場所で、人々はどんな景色を見ているのか。出会った人々、思わず驚いてしまった習慣、ふっと笑えるようなエピソードなどをブログや記事で、紹介します。
#幸せの国のそのさき で皆様からの質問や意見も募ります。