フィンランドの女性も、「完璧」にとらわれている。彼女たちから自信を奪うものとは?

「嫌気がさすほど、完璧」。若い女性の問題を追うTVディレクターが題名に込めた思いは。

フィンランド外務省の主催で、世界16カ国の若手ジャーナリストがこの国をあらゆる視点から学ぶプログラムに参加している。

8月22日は、フィンランドのメディアについて学ぶ日。少人数のグループに割り振られ、それぞれが大手メディアの現場を見に行く。私は、フィンランドの国営放送局(YLE)を訪問した。

フィンランドに来た理由の一つに、女性特有の体の問題を知りたいという思いがあった。というのも、ハフポスト日本版で、2017年から「女性の心と体についてオープンに話そう」というメッセージを盛り込んだ Ladies Be Open(LBO)という企画を手がけてきたからだ。

そうしたことをYLEの担当者に伝えると、ディレクターのミカエル・ローゼンバックさん(27)を紹介してくれた。ローゼンバックさんは、LBOと同じ趣旨の企画を進行しているという。しかも、28歳のわたしとほぼ同い年だ。

世界経済フォーラムの男女格差指数(2017年)が、世界で3番目という高さのフィンランドだが、女性の心と体にまつわる問題が日本と同様に起きているのだろうか。ローゼンバックさんに聞いた。

arisa ido

ーーどんな企画を進めているんですか?

「18~27歳の女性が抱える問題」に重点をおいて、2週間ほど前からウェブ動画用の企画をすすめています。2019年春に放送予定です。

プロジェクトの名前は、「Sjukt perfekt(嫌気がさすほど、完璧)」。「完璧」に達していないと思い込み、自信を失ってしまう女性たちの姿を取り上げています。

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フィンランドの摂食障害の人たちを支援する団体の調査では、フィンランドに住む10代の女性のうち、10人に1人が摂食障害を経験しているという結果が出ています。

パニック障害、摂食障害、鬱などを経験している場合もありますし、障害を抱えなくても、辛い時間を過ごすことが多いんです。

そこで、若い女性が抱えがちなネガティブな感情と向き合ってきた人たちを集め、自分について語ってもらうことにしました。YLEのウェブサイトに記事を載せて、参加を呼びかけているところです。

ーー反応は?

すでに30人から返事がきています。その中から選んだ15人に、自分を紹介する2~3分の動画を自分で撮るよう頼みました。

びっくりすることに、この申し出に15人全員がOKしてくれました。(1人は途中で忙しくなって、離脱)。自分の内側の「闇」について話すのは、相当辛いと思いますが、彼女たちは積極的に話してくれました。

ーー日本でも、摂食障害の人は一定数いると言われています。特徴として、強い不安や強迫観念があり、完璧主義、自己評価が低いとも指摘されています。男女平等先進国のフィンランドでも、この問題が起きているのはなぜだと思いますか。

原因はいろいろ考えられます。痩せている人を美しいとする社会、完璧を求める親や教師...。その中でもソーシャルメディアは原因の一つでしょう。

「完璧」な休日、「完璧」な体、「完璧」なライフスタイル、それに食べやしないのに「完璧」な朝食まで...。私だって、インスタでそんな画像や動画を見続けていたら、悲しくなってきます。自分の人生に自信が持てなくなってしまうんです。

でも、ソーシャルメディアに映し出された世界は、現実のいいとこ取り。これがすべてではありません。しかし、彼女たちはキラキラした写真や動画を見て、「完璧な子ども」、「完璧な彼女」、「完璧な友達」になれないと、自分を追い詰めるのです。

ーーソーシャルメディアを見る時間を減らしたほうがいいのでしょうか。

そんな単純な話ではないかもしれません。ソーシャルメディアがあるからこそ、苦しんでいる彼女たちが声をあげ始めたとも思っています。

インスタグラムのストーリーでは、加工されない動画があげられます。ありのままの姿を見せる人が増えてきたことで、よりリアルな人間を見る機会が増えました。

また、画像の加工前、加工後の写真を載せるモデルも出てきています。

そこには、「完璧でなくていい」というメッセージが込められ、より多くの人の共感を呼んでいます。こうした現象は、ソーシャルメディアがなかった時代には、見られませんでした。

15人から返事が来たのも、彼女たちが自分のことをありのままに話してもいい社会だ、と感じたからなのかもしれません。

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ハフポストで、体型に悩む女性たちの企画を始めて1年以上が経とうとしている。しかし、問題はまだまだ解決に向かっていないと感じる。絶望を感じる時さえある。

一方で、フィンランドのようなジェンダーギャップの小さい国でも、日本と同じような問題が起きているとは、想像もしなかった。国境を超えてコンテンツを届けるソーシャルメディアは、世界中の若い女性たちの「自信」を奪っているのかもしれない。

それを取り返そうというムーブメントは、確かにある。

有名雑誌の表紙にぽっちゃりモデルが起用されたり、痩せ過ぎモデルを起用することを禁止する法律が施行される国があらわれたり、ミスコンが中止になったり、女性の体型を画像加工しない広告が使われたり...。

現状を変えようとする動き一つ一つをとらえ、きちんと読者に届けていく。国も言語も文化も違う同世代のジャーナリストの強い思いに、改めて突き動かされた。

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2018年8月、フィンランド外務省が主催する「若手ジャーナリストプログラム」に選ばれ、16カ国から集まった若い記者たちと約3週間、この国を知るプログラムに参加します。

2018年、世界一「幸せ」な国として選ばれたこの場所で、人々はどんな景色を見ているのか。出会った人々、思わず驚いてしまった習慣、ふっと笑えるようなエピソードなどをブログや記事で、紹介します。

#幸せの国のそのさき で皆様からの質問や意見も募ります。

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