体重を公開したローラと、痩せるまで無期限の休憩を言い渡されたなちょす

変わらなきゃいけないのは、モデルも私たちも一緒
Instagram @rolaofficial/@nachos_kimono

変わらない低い体重への憧れとプレッシャー

Getty Images/iStockphoto

「やっと自分なりにけじめがついたので、私がPopをここ最近お休みしていた理由をちゃんとみんなに話します」

いつもは明るい投稿が目立つ"なちょす"のTwitterアカウントに、そんな悲痛な「叫び」が投稿されてショックを受けた。

"なちょす"とは、10代向けファッション雑誌「Popteen」の専属モデル、徳本夏恵さんのことだ。

「私は東京に来てからすごく太りやすい体質になってしまっていつも太ったり痩せたりを繰り返してたのは、みんな知ってるかな?

そして少し前、すこし心が落ち込んでしまった時があってね、

ものすごく太ってしまいました。

そして言われたのは痩せるまでPopteen 無期限の休憩。正直あたまが真っ白になった。

大好きなPopteenを離れる事は本当につらくて、

頑張りたいのに気持ちとは真逆に体型は太ってくばっかりで、太ってしまう自分も応援してくれる皆の期待を裏切ってしまう自分も大っ嫌いで、もうダメなんじゃないかなって、自分なんていないほうがいいのかもって、

頑張りたいのに頑張れないそんな自分がほんまに嫌いで嫌いで消えたくなってた。

あーどん底ってここなんだなって思った」

そのあとも文章は続き、最後はファンのために痩せて頑張る、というメッセージが綴られた。

締めくくりの言葉は一見、ポジティブだった。だが、私の心は晴れなかった。むしろ、悲しい気持ちが増していった。彼女が「体重のプレッシャー」とたたかう犠牲者の一人に思えてならなかった。

こう書くと、「モデルなんだから、当たり前じゃん。自分の体型くらいコントロールしようよ」っていう声も聞こえてきそうだ。

しかし、女性に対して「スリム」「細さ」を求める空気が蔓延っていることに、どうしても疑問を感じてしまう。

「美しさ」ってなんだろう。それを決めるのは、体重だけなんだろうか。体重という「数値目標」を追い求めた結果、健康を崩し、摂食障害に陥ったモデルはたくさんいる。確かに彼女たちにとってモデルは仕事であり、読者である若い女の子たちにとってあこがれの対象だ。だからこそ、その影響を考えると、健康を害してまで「理想」の体型を手にしようとする風潮に危うさを感じた。

「モデル」ってなんだろう。私は改めて自分のなかで問い直した。

ローラの体重公開は、モデルの新しい姿を打ち出した

同じモデルでもローラは違った。7月5日、Instagramで今の自分の体重を告白したのだ。体重計に記された数字は「49.7Kg」。そこには、こんなコメントが添えられていた。

「わたしは体重は気にしないんだ♪ どんなお食事をしてどのくらいの運動をするのかで見た目にでるからね!」

ローラは、目標の体重は「165cm50kg代がいいかなぁ」(原文ママ)とつづっている。

ローラが明かした現在の「身長165cm、体重49.7kg」の場合、肥満度を示す体格指数(BMI)は18.26だ。世界保健機関(WHO)のガイドラインでは、BMIが18.5以上25.0未満を標準体重、18.5未満は低体重としているため、これは「低体重(痩せ)」の領域に入る。

ローラは、体重を増やす意欲を見せていることから、「標準体重」内で自分に合った身体づくりに励んでいるのかもしれない。

わたしはローラの考え方に納得した。読者もついていけないような細さで輝こうとするのではなく、むしろ、体重という呪縛から自らを「解放」しようとする自然体な生き方に、強さとしなやかさを感じ、親近感を覚えた。

もちろん、ローラは毎日のようにトレーニングをしていて、運動習慣のない今の私からしたら、真似できるような生活ではないけれど彼女の投稿は胸に響いた。表面でばかり評価されてきたモデルから一線を画し、生き方や考え方そのものを「モデル(みんなの見本)」として提示する。

それはまさしく、今の時代に必要な「モデル」像ではないかと思った。

私たちがモデルに求めるべきこと

Plan Shoot / Multi-bits via Getty Images

デジタルネイティブな世代にとって、本来の自分の姿を「加工」するなんて当たり前のことだ。セルフィーでどの角度が一番「痩せて」見えるか知っているし、使い勝手のいい加工アプリもダウンロードしている人が多い。

それでも、インスタに投稿されたモデルやセレブの写真はいつでもキラキラして見える。その裏には原型をとどめない加工が備わっているかもしれないことなんて忘れてしまう。現実の自分と比較して、悲しくなる夜もある。

ローラは、雑誌「ハニービューティー」のインタビューで「今の自分を受けいれて自分に似合うものを探しているところ。みんな個性があって違うからいいんだよね」と答えている。

世界は多様だ。いろんな体型、年齢の人にあふれている。性別だって様々だ。体型だって、同じだとわかる。ガリガリにやせた体を唯一の理想として崇め、あこがれる時代は終わりつつあるのだと思う。渡辺直美、ローラ...。雑誌で最高にかっこいいポーズを決めながら、自身の声をSNSを通じて発していく姿は、多くの人の共感を呼んでいる。

私はそんな彼女たちの姿に憧れる。そして、なちょすにだって、私は時代の変化を感じているのだ。一昔前は、「痩せられなくて、お休みしていた」という声なんて発信できなかっただろうから。もしかしたら、なちょすはまだ「やせ信仰」に囚われてるかもしれないけど、きっと多くのファンは、素直な気持ちを表した彼女の勇気に感動し、応援し続けたいと思ったに違いない。

モデルという職業が読者の「手本」だとすれば、それはもはや、体型や体重だけではないはず。一様なスタイルに押しとどめなければいけないというプレッシャー。そこから早く、モデルや読者を解き放って欲しいと願う。そのために、私は彼女たちにエールを送り続けるつもりだ。

もう「モデル」が顔の小さくて、やせ細ったお人形さんである時代は終わってもいい。自分の生き方、考え方を同時に発信して、今の時代のロールモデルになっていくことが求められていく。

そして、それはつまり私たち消費者も問われることになる。

「あなたのあこがれる『モデル』はどんな人ですか」

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