ハッカソンとは?のらなきゃソン?企業が続々参入のワケ

「佐渡へ佐渡へ...」よろしく、今、日本の企業や団体がどんどんなびいているものがある。それは「ハッカソン」。「ハック(Hack)」と「マラソン(marathon)」を混ぜてつくられた言葉だ。

「佐渡へ佐渡へ...」よろしく、今、日本の企業や団体がどんどんなびいているものがある。それは「ハッカソン」。「ハック(Hack)」と「マラソン(marathon)」を混ぜてつくられた言葉だ。

「ハック」は犯罪的意味を持つこともあるが、この場合は「うまくやる」といった前向きな意味。エンジニアやデザイナーでできたチームが、与えられたテーマに対し、たとえば丸一日つぶしてソフトウエア開発に没頭し、成果を競うイベントなのでこんな名前がついた。

1999年ごろに米国で生まれたといい、これまで旧サン・マイクロシステムズやグーグルといったIT(情報技術)の「ど真ん中」企業が開いてきた。日本でも楽天、ヤフーなどが開催している。

ところが最近、風向きが少し変わってきている。「ここってIT企業だったっけ?」と思いたくなるようなところの参入が相次いでいるのだ。

たとえばコンビニエンスストアのローソン。昨年8月にいち早く開催した。テーマは「ローソンとできるソーシャルチェンジ」で、成果物としては、ローソンにある食材だけで作れる料理のレシピを表示するスマートフォンアプリが生まれている。

「お~いお茶」の伊藤園も今年3月、米シリコンバレーで開いた。題して「茶ッカソン」。テーマは「サンフランシスコで甘い飲み物を飲む人の半分を甘みのない飲み物を飲む人にする方法」で、普通の意味のソフトウエア開発ではないが、「飲み物の飲み方」も一種のソフトといえなくもない。

メディア企業も積極的だ。TBSは3月、「テレビ局が主催する初めてのハッカソン」と称するイベントを開き、NHKも5月に続いた。朝日新聞社も2~3月、「データジャーナリズム・ハッカソン」を開いている。

こんな風に「のらなきゃ損」とばかりに誰も彼もが殺到しているように見えるが、なぜ今、ハッカソンなのか。

他のハッカソンを見に行って、若いクリエイターたちの熱気に圧倒されたというTBSホールディングス次世代ビジネス企画室の仲尾雅至室長はいう。

「彼らの発想力や実行力の高さに興味を持った。テレビ業界の発想からは生まれないような新たなテレビの可能性を感じさせるサービスを見つけることができれば、テレビ業界全体を盛り上げていくことができるのではないかと考えた」

いずれの企業も、様々な手法で外部のアイデアを取り込み、新しい発想を得ようとしているのだ。オープンイノベーションと呼ばれる考え方だ。裏返せば、社内の力に限界を感じていることになるのだろう。

教育的色彩の濃いハッカソンもある。今年4月から6月末まで、東京で断続的に開かれている「HTML5 Japan Cup」はその一つだ。

4月の「HTML5」ハッカソンの様子

HTML5は、ウェブサイトの構造を記述するため広く使われているコンピューター言語の最新版。表現力の高いサイトを作りやすい高機能言語だが、知名度も低く、使っている人もそれほど多くない。

そこでこの言語の将来に可能性を感じる企業が集まってエンジニア、デザイナーにHTML5を使って慣れてもらい、普及させていこうというのが今回のハッカソンの狙いなのだ。

実は朝日新聞社も参加している。会場は東京・渋谷にあるエンジニアやクリエイターが無料で利用できるイベントスペース「21cafe」で、「朝日新聞の記事を使ったゲームを作ってください」というテーマを出し、チームが成果を競うものだ。次回は7日に開かれる。詳細はこちら

私たち朝日新聞メディアラボは、このハッカソンの運営に加わっている。最初は遠慮がちだった参加者が、アイデアを出して議論する過程で、チームの仲間としてまとまとまっていくのを見てきた。チーム、スポンサーの垣根を越えた交流で人脈づくりにもなっていると感じる。

とはいえ、課題もある。ローソンで「ローソンの食材レシピ」、伊藤園で「甘みのない飲み物」だと、やや我田引水的な印象もあるし、短期間でどこまでできるのかという見方ももちろんある。

TBSホールディングスの仲尾さんも指摘する。

「2日間のハッカソンでプロダクトを完成させなければならないため、今後実際のサービスまで発展させるにはどうするか、考えていく必要がある」

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