2019年オスロ中心地の車禁止計画で議論が過熱化

オスロ市議会は19日の記者会見で、オスロ中心地から2019年までに一般自動車の走行を禁止する方針を発表した。

オスロ市議会は19日の記者会見で、オスロ中心地から2019年までに一般自動車の走行を禁止する方針を発表した。

このエリアには、中央駅、国会議事堂、市庁舎、大聖堂、アーケシュフース城、アーケル・ブリッゲ、オペラハウスと、多くの日本人観光客が立ち寄る観光スポットが集まる。

9月に行われた統一地方選挙の結果を受けて、新たに構成された市議会は、市民と環境に優しい新たなオスロ市再編を目指す。

女性のトップばかりで構成されている新市議会 Photo:Asaki Abumi

カーフリーを推し進めているのは、市議会の中心人物の一人である緑の環境党 ラン・マリエ・ヌィエン・ベルグ氏だ。市議会での環境・交通局長局の局長として、カーフリー政策を推し進めていく。

ノルウェー国内では、賛成派と反対派の意見が真っ二つに割れ、大きな議論になっている。自動車の増加による市内の大気汚染の悪化は、一般的にも認識されていたが、いざ「4年以内に車禁止!」となると、市内でビジネスなどを営み、車を利用する人々を一気に不安にさせた。

ハフィントンポスト

不安を仰いでいる大きな原因の一つは、市議会やベルグ氏がまだ具体的な詳細を明確にしていないからだ。公式文書として発表された内容は以下の通り。

市議会の存続期間の間に中心地のリング1をカーフリーに。身体的に移動に不自由のある人、物品の運搬者、交通機関、社会的に重要な機能をなす人々や交通手段においては別途対応策を講じる。産業関係者、市民、その他の関係者との対話の機会を設けることに、市議会は積極的である。他の都市のモデルを参考にして、試験運用を通して実用していく。

オスロ市議会

民間の一般自動車が禁止されることはわかるが、公共交通機関以外にどの程度の条件で車両の利用が許可されるのかがわからない。特に、自家用車を仕事と家庭で使い、小規模経営を営む人にとっては、これだけの情報では心配の種となることは不思議ではない。

緑のリーダーは、市民の不安を解消できるか

また、市民の不安を煽らせている要素のひとつにベルグ氏の存在がある。今回の市議会で、最も議論が大きいプロジェクトを抱えているのが、市内中心地のカーフリーや高速道路E18号線の一部工事中止を唱える、環境・交通局と都市開発局だ。環境・交通局のリーダーであるベルグ氏は、28歳で政治経験がないことから、まだ報道記者からの批判的な質問に上手に対応できないことがある。

環境・交通局の前局長から、オフィスの鍵を受け渡されるベルグ氏(左) Photo:Asaki Abumi

記者会見当日、「車の運転手は、喫煙者と同じくらいに、今後は肩身の狭い思いをすることとなるでしょう」と驚きの発言をした。その日の夜、ベルグ氏は国営放送局でのラジオ収録後に、タクシーに乗車。敵対する進歩党の政治家に目撃され、そのことがツイートされてしまったことから、さらに大きな議論に。「タクシーはいいの?」と、メディアや国民を驚かせた。

カーフリーの実現を4年以内に定めているのは、市議会の存続が確実に保証されているのがその期間だからだ。2019年9月の次の地方選挙前までに、なんらかの結果をだしていなければ、市民からの信頼度は落ち、次の市議会を維持できないだろう。場合によっては、2017年の国政選挙にも影響を与えかねない。

勢いが止まらない緑の環境党は、ポジティブな若者が集まる

オスロを一気にグリーン政策へと推し進めている緑の環境党とベルグ氏の勢いは、すさまじいといえる。政治経験が浅い政党にも関らず、ここ数か月で政治や選挙の場で圧倒的な注目を浴び続けてきた。その魅力は、伝統的なこれまでの巨大政党にはなかった、驚くほどの未来への元気でポジティブな姿勢ともいえる。

記者からの質問に時に上手に答えられないベルグ氏は、報道陣や保守派から茶化されることもあるが、そのような批判には今後も向き合っていかなければいけないだろう。

若い政党、若い女性、政治経験の浅い市民が大舞台にあがるチャンスがあるのは、民主主義を重んじるノルウェーらしい。その分、選出されたからには、国民と報道記者たちは厳しい目でその動きをこれから審査することとなる。

ハフィントンポスト

オスロ中心地がカーフリーになることが可能か、と問われれば、可能だろうと筆者は思う。

オスロではすでに、一部で歩行者天国となっている場所もあり、一部はカーフリーが実現できている。オスロ中心地まで、車で通勤しているのは今やたった7%だ。車がなくても、公共交通機関で移動できることは、市民がよく知っている。

飲酒や喫煙に関しても、日本とは比較にならないほど厳しく規制することができている国なので、意外と実践してしまえば、不便だと思うことはほとんどないのではないか。実現後、「中心地に車が走っていない光景は寂しい」と思う人ははたしているだろうか?

今後の4年間での実績は、失敗例も含め、カーフリーを検討している他の都市にとっても参考例となることだろう。

ただ、緑の環境党は大丈夫だとしているが、本当にこれが大気汚染問題の改善につながるのか、経済には影響しないのかは、未知数だ。市議会の課題は、反対勢力である保守党や進歩党で成る現政権、保守党の環境大臣を説得し、市民の不安を解消していくことだろう。

4年後のオスロ中心地に車がどれほど走っているのか、楽しみだ。空気は、綺麗になっているだろうか?

日本人観光客は、環境に優しいバスに揺れながら、観光地を移動しているかもしれない。その光景が、欧州を代表する緑の都市モデルとなることは間違いないだろう

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Photo&Text:Asaki Abumi

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