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「生産性」が低迷する日本。アメリカとの比較にみる、チーム力アップの4つのポイント

IT企業幹部「多くの日本の企業は、いまだにプロセス偏重の文化から抜け切れていません。」
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「日本の現場力、チーム力は世界最高レベル」──。日本の企業人には、いまだにそう考えおられる方が少なくない。これは、ある側面では正しく、ある側面では間違っている。とりわけ、ホワイトカラーの生産性に目を投じると、明らかに日本よりも生産性が高いと言える企業が他国にある。ならば、どうすれば、ホワイトカラーの生産性やチーム力を高めることができるのか──。その方策について、全世界でソフトウェア開発とコラボレーションソフトウェアを提供するアトラシアン日本法人社長スチュアート ハリントンさんが考察します。

数字ほどの差はないけれど...

ここ数年来、日本政府がしきりに「働き方改革」を唱えていますが、そのきっかけを作った一つは、日本の労働生産性がOECD加盟35カ国中下位に低迷し続けているという事実です。

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このデータで、2016年における日米の労働生産性を比較すると、アメリカの就業者一人当たりの労働生産性は約1,255万円で世界第3位。対する日本は834万円で世界21位。両者の間には1.5倍近い開きがあります。

「それほどの差はないだろう」というのが、私の見方ですが、一方で、日米のホワイトカラーの労働生産性を見比べると、「うーん、確かに大きな開きがあるかも」と思える部分が多々あります。

こう言うと、『その差って、どの部分?どうして生まれるの?』とお聞きになりたいはずです。ということで今回は、日米のチームパフォーマンスの差が、どうして生まれるかについて考察しましょう。

労働生産性に対する誤解

初めに断っておきますが、米国の企業にも格差があり、すべての企業のホワイトカラーの生産性が日本より上、というわけでは決してありません。また、米国企業の経営のやり方にも、いくつかの問題点があります。ですから、米国企業のほうが、日本企業よりも総じて優秀という考え方もナンセンスです。

とはいえ、米国の成長企業におけるホワイトカラーの生産性は、やはり日本よりも高く、学ぶべき点が多くあるのも事実です。ならば、そんな彼らと、日本との差はどうして生まれているのでしょうか──。

まず言える一つは、「労働生産性」に対する考え方の違いです。

改めて言いますが、労働生産性という指標が意味するのは、労働者が生産したモノの数ではなく、「価値(付加価値)」です。要するに、仕入れたモノから、従業員がどれだけ多くの価値を生産できたかを示す指標が、労働生産性であるわけです。

ところが、日本の企業人は、より多くのモノを生産することが、生産性の向上だと考えておられる方が少なくありません。また、セールパーソンについて言えば、一日における顧客先への訪問回数を単純に増やすだけで、生産性がアップしたと評価されたりします。

かつてのように、「モノを作れば売れる」「セールスすればモノが売れる」という時代であれば、この考え方でも労働生産性を向上させられたかもしれません。ですが、そんな時代はとうの昔に過ぎ去っています。今の時代では、労働の「結果」として、どんな「価値」が生産できたかが重要です。したがって、同じ時間で中途半端な100個のアウトプットを作るくらいなら、市場に求められるたった1つの良質なアウトプットを生み出すほうが「生産性は高い」と言えるのです。

プロセス偏重が生んできた無駄

実際、米国シリコンバレーなどで活躍している成長企業は、「結果」でチームのパフォーマンスを測り、結果を出すまでのプロセスについては、チームの裁量に委ねています。ですから、個々のチーム、あるいはチームに属す個々人は、自ずと結果を出すまでのプロセスを効率化しようとします。

かたや日本の企業は、多くが、いまだにプロセス偏重の文化から抜け切れていません。それゆえに、ホワイトカラーの働き方には「無駄」、あるいは「仕事のための仕事」と見なせる作業が多く散見されます。例えば、『無駄にぶ厚い稟議書・提案書を作る』『関係者全員を集めた無意味な会議を繰り返す』といった具合です。このようなことでは、ホワイトカラーの労働生産性を上げることはまず不可能です。

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ハイパフォーマンス・チームを生む要点

こうした働き方の無駄を排除することは生産性向上の一歩となります。ただし、ホワイトカラーの「価値の生産力」を高めるには、プラスアルファの変革も必要とされるはずです。そうした組織変革、あるいはチーム変革のシナリオを描くうえでは、高いパフォーマンスを発揮しているチームがなぜ生まれるのかを知っておくことが大切です。

以下では、米国と日本との違いの中から、ハイパフォーマンス・チームを形成するうえでのポイントをいくつか導き出してみます。

ポイント失敗への寛容さ

ビジネスシーンにおける日本と米国との大きな違いの一つは、失敗に対する寛容さです。要は、米国はビジネス上の失敗に寛容で、日本はその逆、ということです。

例えば、日本の場合、一度でも起業に失敗すると「敗者」の烙印を押され、銀行からの融資がすこぶる受けにくくなります。対する米国では、「失敗の経験から何を学んだのか」が問われるだけで、失敗自体は責められず、再起のチャンスが与えられます。

こうした傾向は、企業にもあり、米国の成長企業は失敗に寛容で、チームや従業員が新しい何かにチャレンジすることを評価します。一方の日本企業は、多くが失敗に不寛容で、誰もが失敗を恐れます。そのため、チャレンジ精神が育まれず、新しい何かにチャレンジしようとするチームや個人に対して必ず成功を求めようとします。ときには、「その新しい試みには、過去に成功例はあるのか」と実にナンセンスな問いかけをしたりします。

今日のように変化の激しい時代では、これまでの成功体験はほとんど通用せず、逆に、失敗体験から学ぶことのほうが多いはずです。ところが、失敗に寛容ではない企業では、従業員の間に「失敗」を隠ぺいしようとする意識が強まり、組織内での失敗体験の共有や失敗から学ぶ機会が失われます。結果として、チームの地力がなかなか高まらないのです。

ポイントオープン性

ハイパフォーマンス・チームを擁している企業は、大多数が「オープン」です。個々のチームは、部門・部署・職位の隔たりを越えて、皆がオープンに議論できています。チームのゴール設定の段階から、組織の縦横で意見をフランクに交わし、全員が納得したうえで目標を定め、ゴールへと突き進む──。そんな文化が根づいています。

かたや日本の企業では、経営トップや役員が目標を定めて、すべてのチームがそれに従うというトップダウン型の組織運営が多く見受けられます。こうしたやり方で、目標達成に向けたチームの士気やパフォーマンスを高めるのは簡単なことではありません。士気が高まるどころか、チームの大半が、自分たちに課されたゴールに納得がいかず、「言われたからやる」というスタンスで目標達成にいやいや取り組もうとするおそれが強まるのです。

ポイントダイバーシティ

シリコンバレーの成長企業の間では、人材のダイバーシティが文化・風土として根づき、それを自社の競争力へと転換させている傾向が強くあります。自社に適している人材ならば、人種・性別・年齢、あるいは同性愛者かどうかなどは無関係に誰でも受け入れ、対等に扱い、多様なアイデア、意見・見解を積極的に取り入れようとします。

実際、異なるバックグラウンドを持つ人の意見や考え方は、新たな着想につながることが多くあります。米国における成長企業の経営者たちは、そんなダイバーシティの効果を深く理解しており、チームと企業のパフォーマンス向上に役立てているのです。

キーワードハイスピード

今日の企業にとって、スピードが勝ち残りのカギです。ですから、シリコンバレーの成長企業は、失敗を恐れず、「まずはやってみよう」というマインドで、物事に当たります。具体的には、チームが一体となって、アイデアを猛スピードでカタチにし、その改革・改善のサイクルを高回転で回していくわけです。これは、ソフトウェア開発の世界で「アジャイル」と呼ばれるプロジェクトの進め方です。

変化の激しい時代では、どのようなプロジェクトであれ、成功するか否かの確証は得られないはずです。今の時点で「絶対にいける」と考えて始めたプロジェクトでも、その立ち上げに長いときをかけていては、周囲の状況がガラリと変容し、立ち上げ前にプロジェクトの大幅な軌道修正を余儀なくされる可能性も大いにあります。ですから、とにかく何かをすばやく立ち上げ、改革・改善を繰り返し、あるべきゴールへと向かうことが成功の唯一の手段と言えるのです。

本稿で触れた生産性向上を実現し、成功するチームを構築するための秘訣を学ぶカンファレンスが5月23日に品川で開催されます。詳しくはこちらをご覧ください。

スチュアート・ハリントンさん。「アトラシアン」日本法人社長。スタンフォード大学工学部電気工学科卒業。 ソーテック社創業当初より、営業部門を率いて国内だけでなく世界での売上向上に貢献し、インテリジェント・システムズ・ジャパン(後にOrcad社により買収)やマグマ・デザイン・オートメーション社にて日本法人社長を務めました。その後KURA社代表を務める傍ら、慶應義塾大学にて客員研究員として起業家向け教育プログラムに参加するなどの活動を行った後に現職。
スチュアート・ハリントンさん。「アトラシアン」日本法人社長。スタンフォード大学工学部電気工学科卒業。 ソーテック社創業当初より、営業部門を率いて国内だけでなく世界での売上向上に貢献し、インテリジェント・システムズ・ジャパン(後にOrcad社により買収)やマグマ・デザイン・オートメーション社にて日本法人社長を務めました。その後KURA社代表を務める傍ら、慶應義塾大学にて客員研究員として起業家向け教育プログラムに参加するなどの活動を行った後に現職。
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